10話 マッマ
石倉先生に相談を持ちかけた所・・・トントン拍子に話が進み、家に帰ってから通話で話を詰める流れになった。
「ただいまー」
「おかえりー。テーブルにおやつあるよー」
これからママと通話するからか実母に会うのがなんとなく気不味い。
「なに?」
「ケーキ」
「お?何があるの?」
「ショートケーキとチーズケーキ」
「お!」
「あ、でも、さっきめるとが持ってったからどっちかしか無いよ」
「くそっ・・・」
やっぱり・・・僕の大好物チーズケーキを先に取られた・・・。
「冷蔵庫にジュースもあるから」
「うん」
「食べるんだったらカバン置いて着替えてきたら?」
「あー、部屋で食べる」
「ホントにウチの子は・・・」
めるとも部屋に持って行ったみたいだ。
PCの電源を入れてアプリを立ち上げていく。
先に連絡だけ入れておくか。
「帰宅しました。PC起動中なのでもうしばらくしたら通話出来ます」
「おかえりーーーーーー」
「ただいまです」
アプリが立ち上がるや否や石倉先生から通話が着た。
ピロリロリン───。
「あ、もしもし」
「もしもーし、ママですよーーー」
実は石倉先生と通話するのはこれが初めてだったりするが・・・リアルでもこのテンションなのか・・・。
「春夏冬中です」
「石倉ママでーす・・・あれ?」
「どうしました?」
「あたるくん声高くない?」
「え?あー、言ってませんでしたっけ?」
「なにを?」
「僕、ボイチェン掛けて配信してるんですよ」
「えーーーーー?そうなんだ???」
「男としてはちょっと高くて嫌なんですよね。この声」
「そうかな?素の声も良い声だと思うけどなー。ちょっとウチの無愛想な息子の声に似てる気もするし」
「あ、石倉先生って息子さん居るんですね」
「石倉先生じゃなくてママでしょ!?」
「あ・・・って・・・ウチのお母・・・母に声が似てる気が・・・」
「「え・・・?」」
いやいやいや、そんな訳が・・・。
「ちょ、ちょっと離席しても良いですか・・・?」
「わ、私も・・・」
階段を下りるとそこには母親が居た。
「もしかして・・・」
「もしかする・・・?」
お母さん=ママってコトォ!!?
「望があたるくんって事?」
「お母さんが石倉先生?」
「石倉先生じゃなくてママでしょ!?」
膝から崩れ落ちた・・・。
「まさか望までVやってたとわねー」
ケラケラと楽しそうに笑っている。
「ほら、いくらでも相談に乗るわよ?ほら、ママの胸に飛び込んできていいわよ」
「か、勘弁してくれ・・・」
「あたるくんだったら飛び込んで来てくれるのにー」
「え・・・あ・・・いやいや、しないだろっ」
一瞬、納得しかけた・・・危ないっ。
「へぇ~~なるほどねぇ~~~ふ~~~~~~~ん」
「な、なんだよ・・・」
「いやぁ、楽しくなってきたなーーーーーーって思って」
「ってか、お母さんイラストレーターだったのっ?」
「言ってなかった?」
「うん、聞いてない」
「まぁ」
「うん」
「隠してたからね」
「おいっ」
「ほらやっぱ世代的な問題かもだけど、オタク文化って隠れてコソコソやってこそみたいなトコあるでしょ?」
「そんな理由かよっ」
くそう・・・実母に対してママ呼びさせられたのかと思うと・・・別におかしくはないのか・・・。
「デザイン料とか著作権料とかあんな大金を実の母親に払ったのか・・・」
「望」
「なに?」
「お仕事あざまぁす」
「くそっ」
石倉先生は正直売れっ子イラストレーターだ。
でも、僕以外にVのデザイン依頼を受けたって話は聞かない。
「お母さん」
「なぁに?ママ呼びに変えたい?」
「違うわっ!なんで僕の依頼受けたの?」
「あー、それにはねマリアナ海溝よりも深い訳があって」
「その言い回しは浅いな。干上がりそうな勢いで浅い」
「えーーーーーー」
「いや、そういうのいいから」
「今も結構依頼は来るのよ?」
「うん、だと思うよ」
そう。売れっ子なのに僕の依頼しか受けていない。
もしかして知ってた?と一瞬、思ったけどさっきの反応からして違うか。
「丁度ね?」
「うん」
「仕事が飛んでスケジュールがポッカリ空いたタイミングで依頼来たから受けたの」
たまたまだった。
「で、コラボはいつやるっ???」
「いや、やらないよっ」
「なんでっ」
「なんで、実の母親とVでコラボしないといけないんだよっ」
「反抗期かー」
「違うわっ」
いや、年齢的には反抗期かもしれないけども・・・。
じゃなくても実の母親とコラボは絶対したくないっ!




