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四十五話 進路はどうする?

「失礼しまーす」


「お、来たか。こっちに座ってくれ」


呼び出しに応じて職員室に顔を出すと、阿部先生は窓際にある客人対応のスペースに座っていた。


「若井はそのままでいいから。それで、もう大丈夫なのか?」


大丈夫か、というのはおそらくまなの状態についてだろう。

先生はまなの保護者であるえりこさんから事情を聞いているそうだし、心配になって当然だ。


「体調はもう大丈夫です。ですけど見ての通り私は今車椅子がないと移動できない状態なので、明日からはおそらく、また学校を休んで三日ほどリハビリに専念することになるとは思います」


先生がこちらを向いて俺に確認の視線を送ってくる。


「まあ、概ねその通りですよ。先生はもう事情を知っていると思うので言いますが、まなはもう自分自身で立ち直りましたから。過度な心配は無用です」


先生は緊張が解けたように背もたれに体重を預けた。


「ふ~、そうか。それならいいんだ。私としてはお前ら二人は大事な教え子だからな、若井が倒れたと連絡が来たときは焦ったよ。だけどまあ、この様子なら本当にもう大丈夫なんだろう。それじゃあこの話は終わりとして、若井。学校祭を楽しみたいときにすまんが、お前だけまだ進路希望の用紙が提出されていないんだが、まあ提出期限のときにいなかったから仕方がないが、何か考えてはいるのか?」


進路か。


まなはおそらく今一番迷っているだろう。これからは俺のために頑張ると決めたはいいものの、だからといって突然決定できるものでもないしな。


ていうか、俺のために頑張るって自分で言うのなんだか恥ずかしいな。


「そうですね・・・・・・。まだ決めきってはいないんですけど、とりあえずは大学に行こうとは思っています。自分で言うのもなんですが、私は学力も十分ですし、内申も問題ないはずですからある程度ならどこでも行けるはずですし。ただ、将来どういう仕事に就きたいとかはまだ何も考えていないです」


「そうか。まだ決めていないのなら急いだほうがいい。推薦で受けるのなら目安は十月に入るまで、一般で受けるにしても準備は早いに越したことはないからな。若井の言う通りお前は成績も十分だからな、推薦は簡単にもらえるはずだ」


「ちょっと、それ教師が言っちゃっていいんですか?」


「あ? いいんだよ。周りに誰かいるわけでもないしな。それより天心、お前も早く面接の練習をするぞ。指定校推薦なんだから、お前は周りよりも受験のタイミングが早いんだぞ?」


「わかってますよ。近いうちに相手をお願いしようと思ってます」


「そうか。それならいいんだ。ということで話は終わりだ。二人とももう戻っていいぞ」


「そうですか、それじゃあ失礼します。いこう、まな」


「はい。あ、先生。空くんと同じ大学に行こうとしたら、私は勉強が必要になりますか?」


「どこに行くにしたって勉強は必要だ。だが、そうだな。天心と同じとなるとそんじょそこらの大学とはわけが違う。いくら若井が優秀でも、生半可な状態で受験をしようものなら一発不合格になるだろうな。ただこれは一般での話だ。指定校は時期的にもう無理だが、公募なら多分受かるんじゃないか? もちろんしっかりと準備をしたらの話だけどな」


「そうですか。わかりました。それじゃあ次に登校するまでに考えておきます」


「わかった。それじゃあ今日は楽しんできなさい」


「はい、失礼しました」


俺とまなは職員室をでて教室へと向かった。


さっきの話、まなは俺と同じ大学に興味があるのか?

まななら余裕で合格できるだろうけど、本当にそれでいいのかな。


「私は空くんと同じところに行きたいです」


「え?」


「顔に出ていますよ、私がどうしてあんなことを言ったのか聞きたいって」


どうやらまなにはすべてお見通しのようだ。


まあそれは仕方のないことなんだけど。


「なんで俺と同じところがいいの? まなの成績なら同じところ以外にもいいところはあると思うけど」


「何を言っているんですか。空くんが受ける大学より良いところとなれば、北海道を出ないといけなくなってしまいますよ。それに、私は大学に行くなら一緒がいいと前々から考えていました」


「そっか。まあまながそれでいいなら俺は何も口出しはしないけど」


「ふふっ。はい、それでいいんですよ。私は自分の意思でそこがいいと思っているんですから」


「そっか、自分の意思か。それなら仕方がないな」


「はい、仕方がないです」


「それじゃあ進路の話はこれぐらいにして、早く教室に戻ろうか。亮太たちがしびれを切らして待っているはずだから」


気がつけば先生と三十分近く話していた。


流石に二人とも待ちくたびれているだろう。

早く戻ってまた準備に参加しないと。


「そうですね。早く戻りましょう」


そう言って俺たちは教室へと戻った。

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