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四十一話 再会

話の展開をどうするか悩みすぎて一日開いてしまいました。

空視点


亮太たちがお見舞いに来てくれてから一週間。


以来、まなは一度も目が覚めなかった。


その間、まなはずっとうなされていて、医者いわくまだ脳が生きている証拠だと言うけど、空はどうしても心配で、親に状況を説明してしばらく学校を休ませてもらっていた。


今日も目は覚めないままか。


学校祭は今日から始まっているし、そろそろ学校に行かないと怒られそうだな。


「空、くん」


「え?」


声がした。


とても聞き覚えがある、最近は聞くことのなかった声が。


「まな?」


まなが目を覚ました。


「おはよう、ございます」


枯れたようなガサついた声で、とても疲れたような目でまなが言葉を発する。


予想外のこと過ぎて、状況を理解しきれていなかったが、空は反射的にまなの手を握った。


「おはよう、まな」


気づけば涙がこぼれ、握っている手は震えが止まらない。


「夢を、見ました。昔の夢です。両親がいなくなって私は捨てられたと思っていましたがそれは違ったんですね」


まなは少しだけ微笑む。


「二人は私を捨てたんじゃなく、もう会えなくなっただけでした」


そして、目頭に涙をためた。


「全部、思い出しました。二人がどうなってしまったのか。とてもつらかった、とても苦しかった。

二人がもう帰ってこないのなら私は一体何のために頑張っていたのでしょう」


「それは!!」


「でも、夢に空くんが出てきて言ったんです。『俺がそばにいるよ』って。だから、もう大丈夫です。二人に帰ってきてほしくて私は、二人のために頑張ってきました。だけどこれからは、空くんのために頑張るって、決めました。だから、空、くん。あ、あな、たは、わた、私の隣に、ずっと、いてく、くれますか?」


俺はまなを抱きしめた。強く、だけど優しく、自分の気持ちがすべて伝わるように。


「ああ、当たり前だよ。俺はずっとまなのそばにいる。絶対にいなくならない。だからさ、まなも、俺からは、離れな、いで、くれ」


まなはゆっくりと抱き返してくれた。


「はい、私もずっと、空くんのそばにい続けます」


俺は泣き続けた。不安が解消されて、待ち人が帰ってきてくれて、止まることはできなかった。


今までの人生で一番だと言えるほどに涙を流した。


それからしばらくして、俺たちはナースコールを押した。


「まな、目が真っ赤だけど、その状態で人と会って大丈夫か?」


「ふふっ、空くんこそ」


「天心さん、大丈夫ですか?!」


看護師が部屋に駆けつけてきた。


「あ、まなが目を覚ましたんです。先生を呼んでくれませんか?」


「そうですか、良かったです。それじゃあこのままそこで待っていてください」


「あ、自販機だけ行ってもいいですか?」


「ええ、そのぐらいなら大丈夫ですよ。すぐに戻ってこられるでしょうし。それでは」


そう行って看護師は先生を呼びに部屋を出ていった。


「喉かわいてるだろ、ちょっと飲み物買ってくるからまなはゆっくりしてて」


「わかりました」


まなは病み上がりだから水のほうがいいよな。


俺は自販機で水を二本買って、部屋に戻った。


部屋のドアを開けると、すでに先生は到着してまなと何かを話していた。


「あ、空くん。わざわざありがとうございます」


「いいんだ。それより先生とは何を話していたの?」


「まなさんはすぐにでも退院したいようですが、せめて今日と明日はこのまま病院にいるべきだとお伝えしていました」


「だって、日付を確認したらもう学校祭が始まっているじゃないですか。あんなに頑張っていたのに不参加は嫌だと思って・・・」


「そうは言われましても」


「それじゃあ先生、明日の日中だけ外出という形だったらどうですか? 先生の言ってることが正しいのはわかりますが、俺も、まなと学校祭に参加したいです」


「そうですね、まあ外出ならいいですが」


「ありがとうございます!」


まなは普段見せないほどの勢いで喜びを見せた。


「それじゃあ私はここで。まなさん、まだ起きたばかりなんですから、無茶はしないように」


先生はそそくさと部屋を出ていった。


「なんだか、ちょっと雰囲気変わった?」


「そうでしょうか」


「うん。まなって結構大人って感じだったけど、今はなんだか、ちゃんと高校生って感じだ」


「そうですね・・・。これまでは優等生でい続けなければという考えでしたが、今はもう、吹っ切れましたから」


「そうか。今のまなもすごく可愛くていい感じだよ」


「へへっ、空くんもすごくかっこいいですよ」


どうやら、まなは本当に吹っ切れたようだ。


そうじゃなければ、俺に対して平気でかっこいいなどと言うわけがない。


「それじゃあ明日の朝、制服を持って来るよ。今日はもう遅いからそろそろ帰らないと」


「そうですか。早く来てくださいね?」


「わかってる。まなは、夜ふかししないで早く寝てね」


「それはどうでしょう。楽しみすぎて眠れなさそうです」


「ははっ、それじゃあおやすみ」


「はい、おやすみなさい」


今日は久しぶりにぐっすり寝られそうだ。


最近はまなのことが心配すぎて寝られなかったからね。


久しぶりの学校。少しだけ楽しみだな。

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