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三十三話

それから、授業の合間の休み時間がくるたびに知らない男子たちが教室に押し寄せてきて、昼休みになると俺は、逃げるように屋上に移動した。


「はあ~、まともに教室でご飯も食べられないのか」


「まあこれに関してはどうしようもないだろ。恨むならまなさんを好きになった自分を恨むんだな」


「いや、それはないな。まなを好きになったことは何も後悔はしてない」


「ま、そう言うと思ったよ。それより早く飯食っちまおうぜ。いつここに男どもが押し寄せてくるかわかんないし」


それから俺は昼休みが終わるまでの時間を屋上で過ごした。


「それじゃあ、実行委員の二人は前に出てきて進行頼んだ」


そう言って来たのは担任の阿部先生。


今年赴任してきたばかりの先生で、周りからは阿部ちゃん先生と呼ばれている。


男子生徒からの人気がすごく、彼女の授業はとても人気だ。


「それじゃあまなは書記を頼むよ」


「はい」


「それじゃあ、クラスの出し物を決めようと思うんだけどなにか案があれば挙手をしてください」


さて、こいつら決める気はあるのか?


俺が進行しようとしても、クラスの大半は今朝の俺と石井の問答について話していた。


更に男子は、俺のことをものすごく睨んできている。


確かにまなは人気だとわかっていたけど、まさかここまで男子共を敵に回してしまうとは。


なんてことを考えていると、一人の生徒が手を上げた。


「はい!俺たこ焼き屋やりたい!」


そういったのは西田蓮にしだ れん


身長が高く、サッカー部でもエースとして活躍していた(今はもう引退した)いわゆる一軍男子だ。


それに反応したのは亮太。


「おお、それいいな!俺もやりたい!」


「じゃあ私も!」


亮太に続いて新村さんまで賛成した。


そしてその意見を皮切りにクラスメイトたちは、出し物について真剣に考えるようになった。


そこから、ある程度意見が出揃ったので多数決を取ることになった。


「それじゃあ、一番意見賛成が多かったたこ焼き屋で決定します。クラスごとの予算はもう決まっているので、それに合わせてメニューなどを決めていきましょう」


「よし、天心、若井、進行ありがとう。今日はもういい時間だしこれで終わろうか。全員帰る準備を始めていいぞ」


その号令にクラスメイトたちはすぐに準備を始めた。


おれも帰り支度をするか。


「あ、天心はちょっとこっちきて」


自分の席に戻ろうとしたときに、俺は先生に止められた。


「どうしました?」


「お前、朝から騒いでただろ。若井と結婚したんだって?」


どうやら朝の騒動は先生の耳に届いていたらしい。


「あ~、そうですね。何か問題でも?」


「そりゃ、法律では何も問題はないが高校生としてはいくつか懸念点が出てくるだろ。ていうか本当に結婚しているのか?私としては未だに信じられないんだが」


「そうですね。まなはもう戸籍上は天心家の一員ですし、この指輪を見れば少しは信じられませんか?」


そう言って俺は先生に左手を見せた。


「ふむ、まあ確かに信じるしかなさそうだ。しかしそうか。結婚か。ま、とりあえずわかった。もう行っていいぞ」


「はあ、そうですか」


先生は何がしたかったのだろう。


まあいいか。


俺も早く帰る準備をしないと。


先生に止められたせいで、終わってないのは俺だけっぽいし。


そうして、今日の学校が終わった。


なんとも長い一日だった。


朝から石井に詰め寄られるし、教室にいれば知らない男どもに詰められるし。


こんなに大変な一日は人生で初めてじゃないか?


でもまあだからといって後悔しているわけではない。


それにこれからは学校でまなと距離を置く必要がなくなったんだ。喜ばしいじゃないか。


「それじゃあご飯にいこー!」


帰りのホームルームをおえて、俺が考え事をしている間にどうやら亮太たちが集まってきていたようだ。


「行くったって、俺らはどこに行くのか知らないんだけど?」


「それはね~、天心家!」


「・・・・・・は?」


「今日はまなみんの手料理を食べるんだよ!」


「いやいやちょっとまってくれ。急に言われてもまなが困るだろ。今日は外食のつもりだったのに」


「まなみんにはお昼に許可をとっておいたから大丈夫! それじゃあ行こ!」


「え、まな、本当か?」


「え、ええ。勢いに押されてしまって・・・。ですが別に嫌というわけでもないので」


「そ、そうか。は~今日だけだぞ?」


「やった!それじゃまずはスーパーから?」


そう言いながら新村さんはまなを連れて先に行ってしまった。


「すまんな空。ああなった沙奈は誰にも止められない」

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