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三十一話~通学路~

部屋中にアラーム音が鳴り響く。


昨日、寝坊しないようにと自分でセットしたアラームに俺は憤りを感じていた。


あーもう、うるさいな!もう少しぐらい寝かせてくれよ。


それでもアラームはなり続ける。


俺は諦めて無理やり脳を叩き起こした。


「はー、眠い」


時刻は朝の六時半。いつもならまだ寝ている時間だが、昨日の寝坊を思い出して早い時間にアラームをセットしたのだ。


「あれ、まなは?」


隣のベッドにはきれいにたたまれた掛け布団だけが置かれていて、そこで寝ているはずのまなの姿はなかった。


ガチャ。リビングにつながっているドアが開く。


「やっと起きたんですか。三十分もアラームがなっていましたよ?」


「おはようまな。どうやら俺は七時前に起きるのは難しいみたい。これからはまた七時に起きることにするよ」


「もうっ、馬鹿なこと言ってないで顔を洗ってきてください。今日は早起きするって言うから朝ご飯も早めに作っていたのに。急がないと冷めてしまいますよ」


それは一大事だ。


そういえば昨日寝る前にまながそんなことを言っていたような?


いや、今はそんなことなんてどうでもいい。

目の前のご飯に早くたどり着くんだ!


俺は急いで洗面所へ行き顔を洗って、更に急いでリビングへと向かった。


「はあはあ、おまたせしました」


「それじゃあ今運んで来ますね」


まなはキッチンへと向かい、ご飯をよそい始めた。


まなは今、制服の上にエプロン姿で、長い髪を後ろで縛っている。


ん~、今日もかわいいなー。


「空くん?どうして私を見てニヤニヤしているんですか?」


「あ、いや。なんでもないよ」


いかんいかん。まながあまりにも美しいから自分でも気づかないうちに口角が緩んでしまっていた。


「いただきます!」


「はいどうぞ」


今日もまなの料理は美味しいな~。


「あ、そういえば昨日亮太から連絡が来てたんだけど、今日の午後の授業は全部学祭で何をやるかの会議になってるらしいよ。つまり実行委員の俺らの出番だ」


「私もクラスの方から連絡が来ていました。どうやって進行をしますか?」


「まあ、どっちかが司会、もう一人が書記でいいんじゃない?」


「それじゃあ空くんが司会をやってください」


「・・・・・・え?」


「私は書記をやりますね」


「いやいや、どうしてさ。まなは周りからの人望も厚いんだから司会が適任じゃないの?」


「それは確かにそうなんですけど」


「いやちょっとは否定しないのかい」


「空くんは私に釣り合う男になりたいと言っていましたよね?私は決して不釣り合いなどとは思っていませんけど、やはり空くんが言う釣り合うというのはこういう場で活躍したりできる、いわゆる陽キャになりたいということだと思うんです。そう考えたらこれはチャンスだと思いませんか?」


「確かに・・・。わかった、やってみるよ!」


「あ、ちなみに今私は陽キャという言葉を使いましたが、私はこの言葉が好きじゃありません。だって結局この言葉はいわゆる陰キャと呼ばれる人たちを差別するための言葉ですよね。だから勘違いしないでくださいね。私は普段からこういう見方をしているわけではありませんから」


「うん、そんなのわかってるよ」


「さて、それでは私は先に学校に行きますから。空くんも遅刻しないように来てくださいね」


「わかった、いってらっしゃい。また学校でね。あ、指輪外してね!」


「あ、忘れてました。かばんの中に入れておきます。それじゃあいってきます」


俺もそろそろ準備しないと。それにしても俺が司会かー。


まさかそんなことをする日が来るなんて。


あ、やばい。はやく準備しないと遅刻する!


俺は大急ぎで身支度をすませてなんとか予定通りの時間に自宅を出発することができた。


そこからしばらく歩き、学校が近くなって周りに生徒が多くなってきたときに、何かの違和感に気がついた。


あれ?なんか周りからすごい視線を感じるんだけど気のせい?


それは決して気のせいなどではなかった。


その後すぐにまなから連絡が来る。


『今日は休んだほうがいいかもしれません』


と。


しかし俺はその連絡に気づくことができなかった。


周りの視線に気を取られていたから。

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