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二十三話~甘えん坊~

「お粥を食べさせてください!」


・・・・・・ん?


「今食べてるじゃん?ん?どうゆうことだ?」


お粥を食べさせてください?もう食べているのに、意味がわからない。


「ち、ちがいます。お粥を食べたいという意味ではなくてですね、その~、あーんをしてほしいんです!」


「ああ、そういうことね。俺が食べさせてあげればいいのか。・・・・・・って、え?!」


ようやく意味を理解できた俺は、普段出さないような声を出してしまった。


それにしてもまながそんなことを頼むなんてどういうことだ?

普段はそんなこと微塵もしな、いや、そんなことはないか。


「そ、そっか~、俺にあーんしてほしいのか」


「だめ、ですか?でもさっきは私のお願いを聞いてくれるって言っていたのに・・・・・・」


ゔ~、上目遣いでそんな声を出すのは反則じゃないですかまなさんや。


「いや、わかったよ。それじゃあスプーンちょうだい?」


まなから差し出されたスプーンを受け取り、お粥を少しすくう。


「そ、それじゃあ、あーん」


まなの口元にスプーンを近づける。ゆっくりとまなの口の中へと運び、食べさせてあげる。


恥ずかしいなこれ!いや、でも他でもないまなからの頼みなんだから、羞恥心は捨てるんだ空。


「どう、美味しい?」


「・・・・・・お、美味しいです」


そう言ってまなは顔を真っ赤にして枕にうずくまってしまった。


どうやらまなも恥ずかしかったらしい。


「そんなに恥ずかしいなら、もうやめておく?俺も実は結構恥ずかしいし」


「いえ、まだ食べ終わっていませんから!」


どうしてまなはこんなにもかわいいんだろう。


一言発しただけなのに、それだけで俺はさらに虜にされてしまった。


「そっか。それじゃあ食べちゃおうか、はい、あーん」


「は、はい///」


まなは普段こんなことしない性格だけど、今は熱も出ていて、きっと頭が回ってないんだろうな。

その分自分の欲に素直になってくれて嬉しいな。


その後少し雑談を交えつつ、お粥をすべて食べきったまなは、少し頭が働いてきたようで、また顔を真っ赤にして布団の中に潜ってしまった。


「それじゃあそろそろ寝ないとね。まなはちゃんと寝て早く体調を治して元気になってくれ」


するとまたまた、まなは布団から顔だけをひょっこり出してきた。


「空くんはどこで寝るんですか?さっきは椅子に座って寝ていたみたいですけど」


まなさん、椅子で寝ていたのはあなたが俺を離さなかったからなんですよ?

そんな意味を込めた目線をまなに送ってみるが、当然伝わるはずもなく、まなはキョトンとした顔でこちらを見続けていた。


ははっ、つたわるわけないか。


「いつもどおり自分のベットで寝ようと思ってるよ」


風邪を引いている人と同じ部屋にいるのは好ましいことではないが、もうすでに結構な間一緒にいるし、そんなことは関係なくなっていた。


「そ、それじゃあもう一つお願いを聞いてくれませんか?」


「もちろん、次はなにをお願いされるのかな?」


少しにやけてそう言うと、まなはあーんのことを思い出したようで、顔だけではなく耳まで真っ赤になってしまった。


「もうっ、そんな意地悪しないでください!そんなことをするんだったらもう空くんに甘えるのはやめることにします!」


「え!あ、ちょっとごめんね。そんなつもりじゃなかったんだよ」


「意地悪ばかりする空くんは、ほんのちょっぴりだけ嫌いです」


「ちょ、ごめんって~。お願いだから機嫌なおしてよ~・・・・・・」


その後数分ほどまなへの謝罪まつりがあり、やっと機嫌を直してくれた。


さて、もう時間も遅いししそろそろ本当に寝ないと。


「それでお願いって?」


「あ、そうでした。空くんが私のことをいじめるせいで忘れていました」


「だからそれはごめんね?」


「ふふっ、もう大丈夫です。それでお願いなんですけど」


おもむろにもじもじしだすまな。


「うん、なんでも言って?」


「その、寝ている間、私の手を握っていてほしいんです!というかもう一緒に寝た・・・・・・いえ!今のは忘れてください!とにかく手を握っていてもらってもいいですか!」


いまなにか爆弾発言をしそうになっていた気がするけど、まあいいか。


「そんなのお安い御用だよ、というかむしろこっちからお願いしたいぐらいだ」


そう言うとまなはまたゆでタコになってしまった。


「それじゃあもう夜も遅いし早く寝ようか。手をにぎるってことは俺たちのベッドをくっつけないとね」


「そ、そうですね。あ、でもこんな時間にベッドを移動させたら、すごい音が出て下の階の方から苦情が来るのでは?」


「確かに。うーんこれは困ったな」


「じゃあ、い・・・・・・い、一緒に、その、寝ません、か?」


「・・・・・・え?」


「だ、だって今からベットを動かすことはできないですし、でも私のお願いを空くんは意地でも実行しようとするでしょ?」


それはそのとおりだ。


まながそう望んでいるなら俺はどんなときでも自分よりそっちを優先させる。


「でも、まなはいいの?俺だって年頃の男だよ?」


「いえ、それは心配していませんよ。だって空くんは私が嫌がることを無理やりしては来ないでしょ?」


それもそのとおりだ。


どうやらまなも俺のことをわかってきてくれているらしい。


「わかった、それじゃあ一緒に寝ようか。その代わりしっかりやすむこと!わかった?」


「はい、わかっています」


・・・・・・さて、成り行きでこうなってしまったものの本当にいいのかな。


今日はいいとして、明日まなは絶対に目を合わせてくれないだろうな。


まなはいっつも自爆するしね。


そんなことを考えていると勝手に笑みがこぼれてしまった。


「もうっ、何を笑っているんですか。早く入ってきてくださいよ寒いんですから」


「ああ、ごめんごめん。まなが可愛すぎてつい笑っちゃったよ」


そう言って俺はまなのベットに入り、そして手を握った。


「今日は色々ありがとうございました」


「何言ってるのさ、お礼なんていらないんだよ、俺達は夫婦なんだからさ。ねえまな?これは言わないほうがいいと思うんだけどさ、同じベッドで寝るのって恥ずかしいね」


「ふふっ、そうですね。私も結構そう思っていましたけど、それよりも嬉しい気持ちが勝っています。私の中の夫婦は一緒に寝ると思っていたのに、私達はこれまで別々で寝ていましたからね」


「そっか。それじゃあこれからも一緒に寝る?」


「いえ、それはまだ遠慮しておきます。毎日この状態だと私の心が持ちませんから」


「同感だ、それじゃあ、そろそろ寝るよ。おやすみ」


「はい、おやすみなさい」


そのまま二人はそれぞれの夢の中へと潜っていった。


お互いの夢にお互いが出てきていたことは、ふたりとも知るよしもなかった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] バレンタインにぴったりの 甘〜いお話、ご馳走様でした。 [一言] お帰りー。頑張って完結させてね!
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