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第8話


「ルシアはあまり踊らないのか?」

「あら、ごめんなさい。ダンスは習っていたけれど、あまり上手くなかったかしら。」

「いや、上手いよ。その、社交会では見かけなかったし、今日も帰ろうとしていただろう。」

「ええ、社交会への出席を控えていたの。」


ゆっくりと音楽が止まり、お互いに一礼をした。


「クロヴィス様にダンスをお褒めいただけるなんて光栄ですわ。」

「こちらこそ、ルシア嬢と踊れたなんて大変光栄ですよ。」


クロヴィスの笑顔に心がときめいた。

容姿端麗って本当に罪ね。造形美だわ。


「今日はもう帰るのか?」


ええ、と答えると、クロヴィスは私の手を取った。


「出口まで送ろう。」

「え、一人で行けるわよ。」


クロヴィスは気にせず足を進めた。

相変わらずご令嬢たちの黄色い声は止まない。


足を進めると一人の令嬢が私とクロヴィスの前に立ち一礼した。


「クロヴィス様、お久しぶりでございます。良ければ私とも踊っては頂けませんか?」


とても可愛らしいご令嬢がにっこりと微笑んだ。

刺繍を施したドレスに大きな宝石を身に纏っている。


「申し訳ないが通していただけるか。」


クロヴィスの声は冷たかった。

空気が悪くなったことは明らかだった。


私はご令嬢にご挨拶をすべきか、クロヴィスに声をかけるべきか悩んだ。

だが、クロヴィスはこのご令嬢と仲の良い雰囲気ではない。

クロヴィスの友人として、私がこの場でご令嬢に挨拶するのは悪手だと踏んでクロヴィスに声をかけた。


「こちらのご令嬢は」


言い終わる前にクロヴィスは私の手を引いて歩き始めた。



え〜...。



すれ違いざまにご令嬢が拳を握り締める様子が見えた。


小さい頃のクロヴィスは私に競争をせがむことはあれど、セシリアにもこんな態度は取ることはなかった。

優しい男の子だとばかり思っていたけれど、女性は苦手なのかしら。



出口に着くと、クロヴィスは「悪かった。」と謝罪した。


「見苦しいところを見せた。」

「え?いえ、謝られるようなことは何も...」


むしろ、あのご令嬢に謝るべきではなかろうか。

クロヴィスは「そうか。」と少し安堵した様子だった。


ご令嬢のことは心配だけれど、二人の仲に口を出さないほうが良いわよね。少なからず良好ではなさそうでしたし。


「お見送りまで有難う。ロイストンに挨拶できなかったので宜しく伝えていただけると有難いわ。」

「ああ、伝えておくよ。久しぶりに会えて嬉しかった。」


クロヴィスは優しく微笑んだ。


「また。」

「ええ、良い夢を。」



馬車に乗り込むとどっと疲れが押し寄せた。







「え、お二人と?」


私は昨日帰宅後にひどく疲て早々に眠ってしまい、翌日の朝食後、ようやくセシリアと話す時間を設けれたのだ。


「そう、私も驚いたよ。」

「そうでしたか。」


セシリアは驚いていた。

当然だ。私も古い友人に卒業パーティーで会うとは思っていなかったし、驚いた。


「お二人はお変わりなかったですか。」

「うん、まあ、そうね。変わらないかな。」


もちろん背は伸びたし年を重ね青年になってはいたが、二人とも面影はあったし変わらないと言えば変わりない。


「そういえばクロヴィスとダンスを踊ったんだけど、彼、女性嫌いなのかな。」


昨日のクロヴィスの様子を思い出して呟くと、セシリアは「え、」と眼を丸くした。


「クロヴィス様と踊られたのですか?」

「え?ええ、ロイストンに薦められて。」


セシリアは言葉を失ったように口を開けた。


「そんなに女性嫌いなの?彼。」


セシリアはゆっくりと首を縦に振った。


「クロヴィス様は社交会にもよく出られるようで、ご令嬢からの人気も高くお茶会でも度々お噂を伺いました。

ただ、ルシアお姉様の仰る通り女性嫌いが多少あるようで、ご婚約の話がないだけでなく社交会でダンスを踊ることはほとんどお聞きしたことがございません。」


幼少期の頃は私にもセシリアにも優しかったが、何か起因すべき事があったのだろうか。


「その、なので...」


セシリアは言いにくそうに続けた。


「クロヴィス様と踊るご令嬢がいたとしたら、ご婚約者か恋人かと...大変噂になるかと存じます...。」


なるほど。セシリアが驚いた理由を理解した。

それは迂闊だったな。


根も葉もない噂をお茶会の肥やしにされるのは快いものではないし、大学入学前に波を立てたくはない。


言い出したのはロイストン...。

何か意図があったと捉えるのが正しいだろうか。

本人に確認するしかないな。


「ロイストンに返事を書くよ。彼を家に呼ぼう。」





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