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第7話


「そういえば、セシリアがロイストンに会いたがっていたの。」

「セシリアは元気にしてる?」

「えぇ、まだ手紙は書けていないのだけど、2人ともまた我が家に来ていただけるとセシリアも喜ぶわ。」


ロイストンはにっこり、うんうんと話を聞いてくれている横で、クロヴィスは落ち着いたよう無表情に戻っていた。


「返事は待っているけど、今度は僕やクロヴィスの家にも是非遊びに来てくれると嬉しいな。」


私はロイストンの言葉に少し驚いた。

ロイストンは子供の頃は一度だけ家に誘ってくれたのだけれど、私が男児の格好をしていたこともあり、その時は丁重にお断りしたのだ。

何年も会っていない間も、きっと家に招待したい気持ちを持っていてくれたのだろう。


しかも社交界デビューをしている女性を招くのだ。それは少なからず友好的な意味も含め、親密な関係を意味する。つまり、もろちんロワイエ公爵家との良好な関係とも取れるが、セシリアへの良好な関係とも取れるのだ。

2人の家柄を確認せねばと冷静な気持ちの反面、私は今すぐにでも家に帰ってこのことをセシリアに伝えたい気持ちでいっぱいだった。


「お誘いいただき有難う。セシリアもきっと喜ぶわ。」


私は気持ちを押し込めてにっこりと微笑んだ。


「話したいことは山ほどあるけれど、ダンスはもう踊った?」

「いえ、今から戻ってもう帰ろうかと...」

「そうか、なら一曲、クロヴィスと踊ってから帰ったらどうかな。」

「なっ!?」


クロヴィスは困惑した様子で眉間に皺を寄せていた。

ロイストンは温厚な性格だが、昔から突拍子もないことをいうことがよくあり、クロヴィスをよく振り回していた。

私は、2人が昔とあまり変わらず安堵すると共に少し笑いが込み上げてしまった。


「クロヴィスもまだ踊ってないし、付き合ってあげる気持ちでいいからさ。」


あくまでパーティーなのでダンスをしなければならないわけではないが、社交会として踊るに越したことはない。

クロヴィスもまだなのであれば、と私はお願いすることにした。


「クロヴィスが良ければ...。」


クロヴィスは一瞬驚いた様子だったが、すぐに手を差し伸べてくれた。


クロヴィスは昔から剣術や馬術を競ったり少年らしい一面が多くめられたが、セシリアには紳士で、普段から礼儀作法もしっかりしていた。


「では一曲踊っていただけますか。」


「是非。」私は微笑んで手を取った。





私はすぐに後悔した。



ホールに戻ると凄まじい注目を集めた。

初めは成績優秀者の令嬢が少ないせいかと思ったが、それだけではない様子だった。


関係者として呼ばれたご令嬢たちからの黄色い声が聞こえるので、私よりクロヴィスに向けられた視線だなと理解した。


イルミナート学園での飛び級は珍しく、容姿端麗なクロヴィスとロイストンが有名なのは少し考えればわかることだったが、古い友人に会って私も浮き足立っていたのかもしれない。


「さっきは悪かった。」


思考を張り巡らせていると、クロヴィスが声をかけてきた。


「さっき?」

「ああ、久しぶりに会って気づけなかった。綺麗になっていて驚いた。」


クロヴィスから「綺麗」なんて言われるとは思っておらず、少し驚いた。


ダンスのエスコートも上手だし、さりげない気遣いが見て取れる。女性からの注目も多い様だし、女性の扱いも慣れているのかしら。


「いえ、私も気づかなかったわ。2人とも想像より背が高くなっていて...ご令嬢からの注目もすごいのね。」


クロヴィスは周りを見て「あぁ、」と返事した。


「ダンスもお願いして申し訳ないわ。」


ロイストンが提案して眉間に皺を寄せたクロヴィスを思い返した。ご令嬢からのお誘いも多いでしょうし、悪いことをしたかしら。


しかし、クロヴィスは「いや、」と答えた。


「ロイストンが突然提案して驚いただけだ。あまり気にしないでくれ。

普段からあまり踊ることがないんだが、踊りにくくはないか。」


クロヴィスは真剣な顔で私の眼を見た。

リードも上手く、"普段からあまり踊ることがない"とは思えないが、嘘ついている様子もない。


「いえ、とても踊りやすいわ。女性からのお誘いはいつもお断りを?」

「きりがないからな。」


きりがないほどにいつもご令嬢からお誘いがあるのね。

ご令嬢から注目を浴びても、黄色い声を上げられても気にしてない様子だから、きっといつものことなのだろう。

クロヴィスは悪気のない様子だったけど、ご令嬢泣かせね。


小さな頃を思い出した。我が家に来てもセシリアの相手をせず、私に競争をせがむクロヴィスを。

彼は昔からあまり変わらないのだろうか、と心が緩んだ。その反面で、私は...


「ルシアはあまり踊らないのか?」


顔を上げると、クロヴィスはとても穏やかに微笑んでいた。



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