第4話
そこから私とセシリアは2人へ招待状を書いた。
ヘンリエタ伯母様は王都のマドレーヌとスコーンを買ってきてくださり、お茶会の当日は茶葉やジャムやティーカップを準備した。
「ルシアお姉様、ティーカップはいつものものより、季節に合わせてこちらのティーカップにしようと思うのですが如何でしょうか。」
「うん、いいんじゃないかな。素敵だと思うよ。」
「では、ノアック、こちらを4脚用意していただけますか。」
ノアックは昔から我が家にいる召使いの1人だ。
「承知いたしました。本日もお庭へのご用意で宜しいですか。」
「はい、お願い致します。」
「承知いたしました。間もなくクロヴィス様とロイストン様がいらっしゃいますので、お二人もご準備をされてはいかがですか。」
「私はいいから、セシリアは用意しておいで。」
「はい、ルシアお姉様。では失礼致します。」
友人2人に会う時、セシリアは必ず身なりを整えた。
家用のワンピースから外行きのドレスに着替え、長髪をブラシでとかし、髪飾りをつける。
私は変わらずシャツにタイを結んでズボンのまま友人を出迎える。厳密には、外行きの服はあまり用意がなかった。友人2人もカジュアルな服で訪問してくれることも多く、ノアックにも注意されることはなかったのであまり気にしなかったのが正直なところだ。
「ノアック、何か手伝えることある?」
「ではこちらをお庭へ運んでいただけますでしょうか。」
ノアックはバスケットにスコーンやジャムを詰めてくれた。
「うん、任せて。」
「有難うございます。私は軽食の準備をしてまいります。」
「うん、分かったよ。ありがとう。」
バスケットを持って庭に出ると、メイドに案内される友人の姿が見えた。2人ともジャケットを着ている。
「あれ、早い到着だね。」
「お茶会の招待をもらったんだ、遅れるわけにはいかない。」
クロヴィスは恥ずかしそうに答える。
男の子はお茶会に呼ばれることは少ないし、少し悪いことをしただろうか。
「それは悪かったね。でもまだ用意ができていないんだ。」
「いや、早く来たこちらが悪い。詫びるよ。」
ロイストンが申し訳なさそうに詫びた。
お茶会は通常、準備中に訪問しては失礼にあたることから、時間ぴったりか、少し遅れてくるのがマナーなのだ。
「気にしないで。そんな堅苦しいお茶会ではないし。セシリアが今準備しているから少し待たせてしまうけれど。」
「問題ないよ。ありがとう。」
庭のテーブルに案内すると2人は大人しく座った。
家柄のことはお互いに詳しく話さないが、いつも作法はきちんとしている。きっとテーブルマナーを学んでいるのだろう。
「そういえば、」と、クロヴィスが口を開いた。
「ルシアは中等部はどうするんだ?」
「え?あぁ、学校に行くよ、さすがにね。」
初等学校に通わないと決めた日に父と約束したのだ。
アンリの格好は初等部まで、中等学校からは髪を伸ばし学校に通うと。恐らく、セシリアも私と同じ学校に通うことになるだろう。
「どこの学校か決まってるのか?」
「いや、全く。2人はもう決めてるの?」
「俺たちはイルミナート学園の寮に入るからなぁー。」
クロヴィスは自分のことを興味なさそうに話す。
「それは凄いな。」
「え?寮はよくあるだろ?」
「いや、」
私が途中で口を閉ざすと、クロヴィスがなんだよ、と言いたそうな顔をした。
イルミナート学園。
中等部、高等部、大学が備わった王都に配置された唯一の学校で、王族貴族の紹介がなければ入れない。つまり、クロヴィスとロイストンは王族貴族に繋がりのある貴族なのだ。
当たり前だが将来は明るいもので、多くは王族直属の事に仕える。
友人だしあまり気にしないが、失礼があってはいけないな。
「私はルファトレ学園だと思うよ。」
「え、ルファトレ〜?イルミナートじゃないのかよ!」
クロヴィスは露骨に残念そうな顔をする。ロイストンはその横で少し呆れていた。
わかるよ、ロイストン。イルミナートはそんな簡単にはいれる学校じゃないんだ。
「寮に入るとあまり帰ってこれなんだろ?残念だな。」
クロヴィスが不貞腐れて返事をしないので笑いそうになってしまう。
同じ学校に入っても、男女では習得科目が違うからあまり一緒には過ごせないと思うんだけどな。
まあ、それでも気が知れた人間がいる方がいいか。
ロワイエ公爵家は2人の出入りを許しているが、親同士が別段仲良いと言う雰囲気はない。その中でこの2人が仲良くしてくれたのは、本当に偶然に過ぎず、セシリアの存在もあり、私は2人に深く感謝している。
中等部まで一緒にいたいと言ってくれるとは思わなかったけど、本当に有難いことだな...。
「そうだね。長期休暇は帰ってくるけど、領地や旅行に出るだろうから、会えることは減るかもしれないね。」
クロヴィスが返事をしないので、見かねたロイストンが代わりに答えた。
「そうか、それは残念だ。卒業したら流石に会えるだろ、その時はまた会いに来てくれよ。セシリアも喜ぶ。」
「もちろん。」
ロイストンはにっこり笑い、クロヴィスからは「当たり前だろ」と小さい声が聞こえた。




