第94話
厨房にいたコウガは、フローラに呼ばれたので、カウンターの方を見た。
クラインだった。
コウガは、カウンターに嫌々、行った。そして護衛するようにクマタンも同行した。フローラは、厨房に行った。
クラインは、笑いながら「コ・ウ・ガさん、こんにちは・・・。あら、いやーだ・・・。あの娘ったら、また気を利かせて、行っちゃったわ・・・。おかしいわね・・・。」
コウガは「はあ?いや・・・フローラは、用事があったんです。」
クラインは「ふーん・・・。そうかなぁ・・・。」
コウガは「はい。そうなんです・・・。」
クラインは「まあ、そういうことにしておきましょう。親しみを込めて、ねえ、コーちゃん。」
そして、クラインは「そうね。今日は、気分がいいから、チーズバーガーセットにしようかしら・・・。」
コウガは「ありがとうございます。クラインさんは、いつも、チーズバーガーセットですね。今日もですか?」
クラインは「コーちゃん、ここに来ると、私、気分がよくなるの。フッフッフ・・・。」
コウガは「それはいいんですが、“コーちゃん”は恥ずかしいですから!どっちにしろ、いつも通り、チーズバーガーセットですか?」
クマタンは「お客さん、イートインでしょ?さっきまで、お客さんで、いっぱいだったので、早くオーダーした方がいいですよ。」
クマタンは、クラインがコウガにモーションかけているので、早く、コウガを厨房に行かせようとする偽りのアドバイスだった。もちろん、さっきまでイートイン席は、空席だったので、アレキサンダーが1人で、陣取っていた。
クマタンは、“アレキサンダーがやっと帰ったら、クラインか・・・。次から次へと迷惑な客ばかりだな。”
クラインは「早く、注文しないと込みそうなのね。」
そして、クラインは「それにしても、コーちゃんったら、照れて、変だわね。嫌だわ。私のせいかしら・・・。私って、好かれる罪深い女ね。じゃあ、これからは、コッソリ言おうかしら?ねえ、コーちゃん。」
クラインもアレキサンダー同様、うぬぼれ強かった。
コウガは「・・・・・・。やっぱり、言ってるじゃないですか!」
コウガは、言うと余計に言うので、言うのを諦めた。
クラインは「いつも、ここのイートイン席で会う白いチワワ犬の・・・なんていう名前だったかな?目が線で、とぼけたわんちゃん。アレキサインダー?だったかしら?」
クマタンは「それって、目が線の面白いとぼけた顔のやつでしょ?そんなのこの世界広しといえども、あいつしかいない!アレキサンダーでしょ?」
クラインは「そうそう!そのアレキサンダー君。いつだったかしら?イートイン席の隣に座っていた時、あのわんちゃん、こう言ってたわ。私がね、イケメンの歌手の芸能人のミーハーして、サイン欲しいから、追っかけしていたの。それをわんちゃんに言ったら、“それなら、ワシが今に、有名人になるから、今のうちにワシのサインもらっておくことだな!早くしないと、もらえなくなる!早くするべきだ!色紙とサインペンを用意するのが急務だ!”って、言ってたわ。ほんとかしら?」
クマタンは「わーはっはっはっはっは!!!ガセもいいとこだ!」
クラインは「やっぱり冗談ね。」
クマタンは「あいつ、冗談は顔だけにすべきだね。」
クラインは「クマタン、あなたもきついわね。」
クマタンは「あんなやつ、ほどほどに遊ばせておいてください。」
クラインは「わかったわ。ところで、私はね、朝から晩まで、いつも1人で食べてるのよ!寂しいから、なるべく、外食なの!ああ~寂しい・・・。だから、ここでも、イートインして、みんなの事見てるの。うふふ・・・。今日もチーズバーガーセットをイートインしちゃおっかな?」
コウガは、代金を受け取ると急いで、厨房に戻り、調理にかかった。代わりにクマタンがカウンターに行った。
クラインは「いいわね。コウガさんには、クマちゃんがいて。ついでに、女の子も2人いるから・・・。」
クマタンは「なんだか、ついでに、女の子というのも、付け足しみたいだね。」
コウガは調理したセットをトレーに乗せた。
クマタンは、トレーを受け取りに走ってカウンターに戻ると、クラインに渡した。「ありがとう・・・。クマタン。」と言って、トレーを受け取った。
クマタンは「・・・・・・。ありがとうございます。」
クラインは、イートインすると、帰って行った。
この日、コウガは、クラインが始終見ているのを感じると、余計緊張した。




