第88話
声を掛けたのは、美容師のアルフレッドだった。
アルフレッドは「一体全体、みんな、どうなってるの?」
コウガは「それが、どういうわけか、僕に、婚約者がいるらしいんです!」
アルフレッドは「ええっ!?なにそれ?」
ララは「私は、ここのオーナーと結婚することになってるのよ!」
コウガは「そんなの全くもって、身に覚えのない話です!」
ララは「バージルモールのバーバーのオーナーが相手なのよ!」
コウガは「はあ?ここは、バーガー店ですよ!」
アルフレッドは「もしかしたら、母から聞いた話の相手は、あなたね!」
ララは「うちの父が付き合っている彼女がいるんだけど、その息子と私を結婚させたいらしいの!」
アルフレッドは「冗談じゃないわ!私は、エロいのもグロいのもロリフェイスも興味ないわ!」
ララは「じゃあ、勝手に、話だけ進んでたのね!」
アルフレッドは「間違ってるのはあなたよ!バーバーは、理髪店。うちは、美容院よ!話だけが勝手に独り歩きしているのよ!そうに決まってるわ!だいたいね!うちの母親は、いろんな男性と付き合っているのよ!大体、その母親は、自分勝手で、私に“いい子にしてお父さんの言うことを聞くのよ!”と私や父親の前にも関わらず、知らない男性と車で出かけて行ってたものよ!ひと月後やふた月後に、ひょっこり帰宅するなんてことは、当たり前だったわ!浮気なんて、日常茶飯事なことなのよ!ある時は、父親に“玉子を買いに行く”と言って3か月後に帰って来たわ!父親は“もう玉子を買いに行かないで。”と言っても治るわけないわ!父親が甘すぎたんだわ!」
コウガは「アルフレッドさん・・・、ひどい話ですね・・・。」
アルフレッドは「私は、バージルアパートで、独身を謳歌しているんだから、結婚なんて、考えられないわ!まして、母親のニコルが貞操観念がないんだから、女性には、幻滅させられたわ!それで、女性は結婚対象ではないわ!」
クマタンは「ええっ!?じゃあ、男性が趣味なの?コウガや僕をターゲットにしてるの?」
アルフレッドは「優しい男の人が大好きよ!ねえ、クマタン!コウガさん!」
コウガは「ああ・・・。はい・・・。とりあえず、光栄です・・・。」
クマタンは「はい・・・。一応・・・、僕もです・・・。」
コウガは、アルフレッドは、バージルモールの仲間でもあり、否定するのは、ヤバいと思い、無難に返答した。
アルフレッドは「とにかく、ララさん、帰ってください!お疲れ様でした。お父さんによろしくね。」
ララは「ここまで来て、あの父親に腹が立つわ!私も、お小遣い欲しさが目当てだったので、仕方がないわね!あきらめるしかないわ!ヘン!」
ララは、捨て台詞を言うと、帰って行った。
コウガは「全く、人騒がせだったなあ・・・。」というコウガに、エレノアは「すいませんでした!!!」と謝った。
アルフレッドは「コウガさん、ごめんなさい!これに懲りずに、私のことを嫌いにならないでよ!アルフレッドからのお願いよ!あっ!そうそう、私は、ケチャップを借りに来たんだった!」
そう言うと、アルフレッドは、ケチャップをクマタンから受け取り、美容室に戻って行った。
いつの間にか、イートインにダラダラしていたアレキサンダーは、コウガたちに近づいて「あんたら、ずいぶんと揉めてたね!いやぁ~どうなるのかと心配したよ~!それにしても、コウガ君!モテるね!色男!特にクラインさんなんか、好かれてね!エレノアなんかと一緒になったら、夫婦げんかのたびに、命ないね!ご愁傷様です!」
コウガは「お前!控えめに登場したら、嫌味多いな!あっ!もしかしたら、妬けてるの?」
アレキサンダーは「いけませんか~?こんなワシに誰がした?コウガちゃん!あんたのせいよ!これは、陰気なクラインのパクリだよ!」続けて「なんか今日は、歯切れが悪いな!じゃあ、出直すぜ!コウガのダンナ!」
クマタンは「早く帰れ!」
アレキサンダーは「フンだ!!!もう頼まれたって来てやらないぞ!泣いて後悔すんなよ!勇気を出して謝ったらどうだ?謝るなら今だ!」
クマタンは「そんな大口たたいて、また明日にでも来るんだろ?」
「さあ!それは、風が決める事さ!」と頭の毛をかき上げるようにして、アレキサンダーは、カッコよく決めた。そして、帰って行った。もちろん、イートイン席は、いつも通り、食べ散らかしてあった。
アレキサンダーが、去って、次に「御免!!!」と言う声が聞こえた。




