第65話
コウガとクマタンは、少し離れた商店街に行った。
クマタンは「夕食は、醬油ラーメンと野菜炒めにしようと思うんだ!軽食として、食後に、さっきの食パンで、オープンサンドにしたいんだよ!」
コウガは「いいねえ!じゃあ、買うとするか!」続けて「じゃあ、まず、肉屋に行こう!」
小さな商店で、コウガとクマタンは、豚肉とハムを買った。店主が福引券の補助券をくれた。福引券は、補助券をためて、くじ引きを引けるものだった。
次に、八百屋に行った。八百屋では、キャベツ、もやし、ネギを買った。ここでも、福引券の補助券をもらった。
調味料店で、醬油、味噌等を買い、やはり、補助券をもらった。
夕食の材料は、アパートにある手持ちの食材を使う算段をクマタンはしていた。
コウガは「福引券の補助券、だいぶたまったよ!1回分引けるから引いて帰ろうか?」
クマタンは「コウガが引くの?」
コウガは「クマタンが引いてよね!」
クマタンは「ええっ!?僕が!?責任重大だね!でも、やってみるよ!」
クマタンは、本気を出して、福引を引こうとした。
福引所という文字が書かれた横に長い布の横断幕があった。その前に、おじいさんが小さな机に座って、福引の世話係をしていた。おじいさんは、見るからに、固まっていて、枯れているようだった。
おじいさんは「福引を引くのかね?」
おじいさんは、一応、しゃべった。
おじいさんは、おとなしそうで、口数が少なかった。おまけに、愛想も全くなかった。クマタンは、“ちょっとぐらい客に対して、お愛想をするもんだ!”と内心思った。
気を取り直して、クマタンは「1回分、引けると思うよ!」と、おじいさんに補助券を差し出した。
おじいさんは、補助券を数えて「ああ!確かに1回引けるよ!この箱の上に穴が開いているから、手を突っ込んで、1回だけ、1枚くじを引いてよね!」
クマタンは「わかりました!」
クマタンは、直立不動で、箱に一礼して、「たのんます!!!」と気合を入れた!
クマタンは、手が伸びて、箱の中から、1枚のくじを引いた。
クマタンは、その閉じられたくじの端を切って、開いた!
“1等大当り”と記されていた!
クマタンは「えええええええ!!!!!本当なのぉぉぉぉぉ!?」と言って、おじいさんに、くじを見せた。
椅子に座っていたおじいさんは「おめでとうございます!!!!!」と、さっきまでとは打って変わって、大きな声を上げた!
そして、立ち上がると、おじいさんは、いきなり、ハンドベルを景気良く鳴らして、「レストラン・ベラコスタのコース料理4名様ご招待券ゲットです!!!」と言いながら、その抽選場付近を走り回った!さっきまでとは、違って、別人のように、まるで、水を得た魚のように、元気ハツラツで、繰り返し、叫びながら、しばらく、商店街を走っていた!今まで、静止していたのを取り戻そうと言わんばかりに、動き回っていた!恐ろしいパワーだった!
あまりの勢いで、やめることをしない、おじいさんを商店街の2、3人が止めた。
おじいさんは「まだまだワシは、現役じゃぞ!若い者には、負けないぞぉ!ワシは、この商店街のために一役買ってるんじゃ!」と、まだ叫んでいた!
しかし、止めた人のおかげで、やっと静止したおじいさんは、クマタンに「レストラン・ベラコスタのバイキングの目録です!」と付け加えた。
ようやく、目録をもらえる時がやってきた。
クマタンは、頭を下げて「ありがとうございます!」と、うやうやしく目録を受け取った!
コウガとクマタンは、抱きしめ合って、喜び合った!
それを見て、おじいさんは、もらい泣きをした。
おじいさんは「最近、涙腺が弱ってのう・・・。」と、むせび泣いていた。
おじいさんは、コウガとクマタンをハンカチで、涙を拭きながら、見送った。
こうして、コウガとクマタンは、アパートに戻った。




