第63話
リュウジンバーガーが休みの日のことだった。
クマタンは、用事をするときのいつものエプロンを付けた。文字で“闘魂”と記されていたエプロンだった。
この日、クマタンは、コウガのひげそりの準備をしていた。
クマタンは、コウガに、クロスを首に付けた。そして、コウガの顔に泡立てたシェービングフォームをブラシに付けて、顔に広げると、カミソリで、素早く、ひげをそると、適温の湯で、温めておいたタオルで、顔を拭き、アフターシェーブローションを付けた。至れり尽くせりだった!
クマタンは「コウガ!終わったよ!」
コウガは「本当にありがとう!」
こうして、ひげそりは終わった。
この日の昼食後、バージルアパートの管理人であるエレノアは、アパートで、掃除をしていた。ほうきで、階段や踊り場や玄関を掃除していた。
ヘルムートが「こんにちは、エレノアさん!お掃除お疲れ様ですね!」
エレノアは「どこかにお出かけなんですか?」
ヘルムートは「店は、休みなんだけど、宅配のお客さんが今日を指定しているんだよ!これから、配達なんだ!」
エレノアは「休みなのに、大変ですね!気を付けて行ってくださいね!」
コウガとクマタンは、食材を購入しようと、部屋から出てきた。
コウガは「エレノア、掃除、大変だね!綺麗にしてもらってるから、気持ちがいいよ!」
エレノアは「ありがとうございます!今日は、ゴミ出しの日だったので、片付けついでに、掃除してるんです!コウガさんたちは、お出かけですか?」
コウガは「クマタンと食品の買い物に行こうと思ってね!」
エレノアは「気を付けていってらっしゃい!」
コウガは「ありがとう!」
そこに、部屋から出てきた、アルフレッドが、コウガに声を掛けた。
アルフレッドは「あ~ら。こんにちは。お出かけなの?」
コウガは「ええ。買い物に行くんですよ!アルフレッドさんも、お買い物ですか?」
アルフレッドは「いいえ。私は、美容院用のハサミを研いでもらいに、刀鍛冶の店に行くのよ!」
コウガは「ちゃんと、ハサミのお手入れをしているんですね!すごいですね!」
クマタンは「美容師の鑑ですなあ!」
アルフレッドは「ありがとう!オネエさん、うれしいわ!」
クマタンは「ケケケケケ・・・。」
クマタンは、アルフレッドが、自分のことをオネエさんと名乗ったので、愉快だった。
コウガは「その場所は、遠いんですか?」
クマタンは「包丁を研ぐのに、そういうところを知っていた方が、なにかと便利だよね!」
アルフレッドは「ここから近いのよ!私と一緒に行く?私なら、そうするわ!」
コウガは「じゃあ、連れてってください!」
アルフレッドは「はーい!じゃあ、私と一緒に行きましょうね!」
コウガたちは、3人で、歩いて、目的の刀鍛冶を目指した。
この前、買いに来たケーキ店・マーサの近くを通った。
コウガは、アルフレッドに「この前、この店のケーキ、美味しかったですよ!」
アルフレッドは「そうなんだ!じゃあ、私も、いつか、買ってみるわね!」
その店を通り過ぎてから、目指している店があった。“刀鍛冶・コウネリヤス”
アルフレッドは「着いたわよ!ここが、話していた店よ!」
コウガたちは、店内に入った。店内には、日本刀、ソード、槍、ノコギリ、牛刀包丁、肉切り包丁、出刃包丁、斧、鎌、が、所狭しと、置いてあった。
クマタンは「こんなに武器があるんだ!ヒルデグランドが攻め込んで来た時、これらがあったら、助かったのにな。」
2人の先客がいた。マサムネとスーツの男性だった。
コウガは「あっ!マサムネさん!」
マサムネは「こんちわー!あなたも刀研ぎですか?」
コウガは「いやあ、僕とクマタンは、付き添いなんです。」
マサムネは「もうすぐ、拙者の刀と連れのソードが、出来上がるので、もうしばし、お待ちくだされ!」
店主のコウネリヤスは「はい!お待たせ!仕上がりましたよ!」
コウネリヤスは、70歳で、白髪の髪の毛で、頑固者で、職人気質だった。
日本刀を受け取った、マサムネは、右腕で、空にかざして、「なかなか、よい出来栄えですな!これで、ケーキが、一刀両断のもとに切れるということですな!かたじけない!」
連れのスーツの男性は、以前、リュウジンバーガーにマサムネと共に訪れた客の男性だった。
スーツの男性も、ソードを受け取った。金色に輝くソードに自分の顔を写していた。ソードが磨かれているか、チェックしていた。細かいところまで、チェックは、怠ってはいなかった。
マサムネは「連れのこの人は、“食べたら天国ベーカーリー・ムゲン”のムゲンだよ!」
コウガは「お連れの方は、パン屋さんだったんですか!」
クマタンは、“食べたら、コロッと死ぬみたいな店名だなあ。”と思った。
ムゲンは「俺は、両刃ソードで、食パンをセンチ単位で、切るのが得意なんだ!」
コウネリヤスは「お2人共、お待たせしました!しっかり、日本刀もソードも、点検しておきました!」
マサムネとムゲンは、それぞれ、日本刀とソードを鞘に収めた。
マサムネは「では、これにて、御免!」と言って、ムゲンと2人で、去って行った。




