第4話
リュウジンバーガーが夕方17時に閉店して、コウガたちは、バージルモールに隣接するバージルアパートに戻った。
アパートは、ショッピングモールと同じく、レンガ造りの2階だった。1階と2階、5部屋ずつあった。コウガは、クマタンと1階で同居していた。その隣の部屋に、フローラとエレノアが同居していた。部屋は1LDKで、家賃は、アパート代とショッピングモール代の込みで、5000ジオだった。
食事は、いつもコウガの部屋で、3人と1匹で、食べていた。この日も、クマタンが食事の調理担当を買って出ていた。
今日のメニューは、ハヤシライスのプレーンオムレツ添えだった。副菜は、ポテトサラダで、野菜スープだった。
クマタンは、リュウジンバーガーとは違うエプロンを付けた。エプロンはオフホワイト色で、“料理命”という大きな文字が書かれている。入魂で気合が入っている。クマタンは、形から入っていた。
クマタンは、ライスを炊きながら、ハヤシライスの煮込みをして、その合間に、ポテトサラダや野菜スープをテキパキと料理して、スタンバイさせていた。
さあ最後の仕上げとして、クマタンは、プレーンオムレツにとりかかった。
クマタンは、小さなガラスボウルに向かって「よし!!!」と自分に言い聞かせるようだった。次に、玉子を1個右手に持つと、それを自分の頭に、コンコンと打ち付け、小さなガラスボウルに玉子を割り入れた。そして、大きなガラスボウルに入れて、もう1度、それを繰り返した。
クマタンによると、2個同じガラスボウルに、1度に入れてしまうと、後からの1個が腐っていると、2個共に捨てることになるからというこだわりだった。某三ツ星ホテルのシェフのポリシーでもあった。
フライパンに、バターを入れて、少し、溶けてきたら卵を入れた。フライパンを前後に揺すって、箸で、かき混ぜた。そして、卵をフライパンの端に寄せて、フライパンを火から外して、柄をトントンと叩きながら返した。プレーンオムレツが出来上がった!
クマタンは、大皿にハヤシライスを乗せて、焼きたてのプレーンオムレツを乗せた。そして、らっきょうと千切りの甘酢生姜をトッピングした。
クマタンは「みんな!料理できたわよ~ん!パパ(コウガ)の大好物のハヤシライスよ~!」
それを聞くなり、フローラが「は~い!私、お腹ペコペコなの!ママ(クマタン)のお料理最高ー!」
クマタンは「ありがとう!ママうれしいわ!」続けて「じゃあ、お料理運んでね!」
フローラは「はーい!」
つられて、エレノアも「私も、お腹ペコペコよ!お手伝いしま~す!」
コウガは「じゃあ、手伝うよ!」
すかさず、クマタンは「あっ!いいのよ!パパ(コウガ)はお疲れなんだから!」
コウガは「じゃあ、お願いするよ!」
クマタンたちは、この日、バカバカしい即興をしていた。コウガもクマタンたちが和気あいあいとやっているので、合わすことにした。
この日のクマタンの料理は、なかなかイケてた。
コウガは「野菜スープ、玉ねぎやニンジン、キャベツが入って、コンソメ味がいいねえ!メイン料理のプレーンオムレツは、すごくふんわりとして、ふわふわトロトロの食感だね!ハヤシライスと混ぜても、うまいし、らっきょうと甘酢生姜もよく合ってるね!ベストマッチ!ポテトサラダもザワークラウトが入って、いい感じだよ!ねえ、フローラ、エレノア。」
コウガはフローラとエレノアに同じ感想だと思った。コウガに対面して、座っている2人は料理を食べるのが夢中で、何が何でも食べ続けていた。それで、2人はコウガの言葉など聞く耳を持たなかった。
コウガとクマタンは、隣同士で座っていた。時々、クマタンは、食べやすいように、食事を一口大にして、コウガの口に、放り込んでいた。コウガは大満足だった。