第35話
フローラは「あんた、犬じゃないの?飼い主さんは?」
フローラは、カウンターの下を覗きながら尋ねた。
その犬は、本屋のアレキサンダーだった。
アレキサンダーは「近頃、流行物のハンバーガーとやらを食べに来てやったんだ!ありがたく思え!」
フローラは「ええっ!?あんた、しゃべれるの!?」
フローラが大きな声を出していたので、厨房にいたコウガとクマタンもフローラの傍に近寄った。
何事かと、走り寄ったコウガだったが、客がアレキサンダーなので、2度驚いた!アレキサンダーは身長が低いので、コウガはカウンター越しではなく、アレキサンダーのいる場所に行って、応対することにした。
コウガは「いらっしゃいませ!確か今日、本屋にいたワンちゃんじゃないですか?」
アレキサンダーは「ああそうだ!一応、覚えていたんだな!記憶力低下はしていないな!」
コウガは、その言葉に、ムカついたが、客なので、聞き流すことにした。
コウガは「お持ち帰りですか?店内でお召し上がりですか?ご注文は何にしますか?」
アレキサンダーは「ここで、食べるよ!何がうまいのかな?」
コウガは「犬だから、玉ねぎが入っていない方がいいですよね?食べられませんもんね!」
アレキサンダーは「普通は食べられないんだよ!他にも色々食べられないけどね!だけど、ワシは、何でも食べられるんだよ!」
コウガは「ええっ!?驚きました!おまけに、可愛いのに、“ワシ”と言うのも驚きに値しますね!」
アレキサンダーは「そうだろう!みんな、そう言うよ!」
コウガは、“こいつ、言いたいことを言うやつだなあ!クマタンと同じように人間の言葉を理解できる種族のようだが、控えめなクマタンとは、えらい違いだな!”
コウガは、アレキサンダーに、ハンバーガーのメニューを見せた。
コウガは「では、僕のオススメは、手軽なチーズバーガーセットとかは、いかがですか?セットには、お飲み物も付くので、選んでください!」
アレキサンダーは「チーズバーガーにフライドポテトか?じゃあ、コーラを所望する!」
コウガは「は?変わった言い方ですね!ありがとうございます!では、お仰せの通りにいたします!」
コウガは、アレキサンダーの言い回しに合わせた。
厨房に戻ったコウガは、チーズバーガーセットを調理しだした。
クマタンは「あいつは、虫が好かないよ!」
コウガは「まあね!お客さんだから、ここは、目をつむろうよ!」
クマタンは「うん!そういうことだね!」
コウガは、アレキサンダーに、これから先、迷惑をかけられそうな嫌な予感がした!しかし、そんなことは、気のせいだと自分に言い聞かせるように、調理することによって、不安なことを払拭しようとした。
しかし、この不吉な予感は、見事、的中してしまった!




