第31話
元のバージルモールに戻った。フローラが、モールの前で、ボーっと突っ立っていた。
コウガは、フローラに近寄り「フローラ!無事だったんだね!」
コウガは、仲間のフローラが無事だったので、喜んだ。
フローラは「みんな、どこに行ったのか、心配したよ!置いてけぼりになって、もう帰ろうかと思っていたところだよ!」
エレノアは「心配したよ!よかった無事で!今度は手をつないで行こうね!」
フローラは「ありがとう!」
クマタンは「心配したぞ!」
フローラは“置いてけぼりにされてよかった!みんなには悪いけど、得体の知れない魔王城に行けなくて、自分はラッキー”だと思っていた。
ヒルデグランドは「ようし、仕切り直しだ!」
コウガは「今度こそ、行くんだろうな?変なところ行かさないでくれよ!頼むぞ!今からでもやめてもいいと思ってる!」
ヒルデグランドは「そんな!今更、やめるなんて、言わないでくれよ!レティシアちゃんが、ガッカリするじゃないか!さっきのは、ちょっとした失敗だ!今度こそ、ワシ、頑張るから!」
コウガは「じゃあ、ちゃんとやってくれよ!」
コウガは“オッサン、調子こきやがって!MBだ!”
クマタンは、コウガと手をつないでいた。
2度目のチャレンジで、やっとこ魔王城の玄関前に到着した。
さっきの門前は、暗かった。玄関は、打って変わったように、昼間のように明るかった。これは意外だった。
ヒルデグランドは「やったー!今度こそ、玄関前に、成功したぞー!」
コウガは“こいつ、これだけ喜んでいる。いつも失敗しまくってるんだな!”冷ややかな視線だった。
クマタンもコウガ同様に思って、同じような態度だった。もちろん、フローラやエレノアも、そう思っていた。
それを感じたヒルデグランドは「まあ、たまには、失敗もあるけどさあ!ハッハッハッハッハッ!」と笑って誤魔化した。
そこに執事の男性が現れた。黒髪で、オールバックの短髪で、ポマードが付いている。黒い眼鏡をかけて、耳がとがっている。そして、門歯が2本口から飛び出ている。白のカッターシャツ、黒の蝶ネクタイ、黒のスーツを着ている。
執事は「帝王様、おかえりなさいませ!」
ヒルデグランドは「今、帰ったぞ!客たちが来たぞ!存分にもてなしてくれ!」
執事は「かしこまりました!」
ヒルデグランドは「よし!任せたぞ!」
執事は「ようこそお越しくださいました!私は、執事のラオドールと申します!よろしくお願いします!では、お嬢様のレティシア様のおられる応接間にお連れします!よろしいでしょうか?」
執事のラオドールは、クソ丁寧だった。
コウガたちは、ここまで来て、嫌だということも言えない状態だった。
コウガは「では、お願いします!」
ラオドールは「承知いたしました!ヒルデグランド様と奥様は、来賓のコウガ様御一行様に、遠慮されて、お誕生日パーティーには、ご欠席されます。」
コウガたち4人は、ラオドールの後に続いて、廊下を歩きだした。廊下は赤い絨毯が敷かれていた。かなりのふかふかだった。
フローラは、“このふかふか、クマタンのもふもふに似ているな。クマタンの何匹分だろうか?”とクマタンを見た。
コウガと手をつないでいるクマタンの手は伸びていた!そして、クマタンは、フローラの視線を感じて、フローラを見た。フローラはお愛想笑いをした。クマタンは、フローラをにらみつけた!漆黒の世界に来てまで、2人は、この調子だった。
廊下は、ずっと続いている。
コウガは“長い廊下だなあ。この広さは部屋にできるな。”
こんなことを思うコウガは庶民的だった。
壁には、油絵がかかっていた。2枚あって、1枚は、美しい女性の絵だった。たぶん、ヒルデグランドの奥さんだとコウガは、想像した。隣りのもう1枚の油絵は、レティシアだった。可愛く描かれていた。ヒルデグランドの描いた絵とは比べ物にはならないぐらいの出来だった。




