第29話
ヒルデグランドは、少し考え込んで、無言だった。
コウガは、ヒルデグランドが諦めたと思った。
ヒルデグランドは「では、致し方ない・・・。本音を語ろう。」
ヒルデグランドは、うまくいかないので、次の方法手段をとった。
ヒルデグランドは「実は、レティシアはワシの娘ではないんだ。一緒に暮らしていて、本当の親子のように似ていると手下たちは、言うんだがな。」
コウガは“自分の娘ではない?ヒルデグランドは、人さらいをやったんだろうか?ここは、安全のために、そのことに、触れないでおこう。あんまり似ていないが、まぁ、似ていると言っておこう。うるさ型のオッサンなので、話は合わせておこうとするか。”
コウガは「ああ!似てますね!本当の親子でも似ていないことが多々あるのに、それに反して、ヒルデグランドさんの場合は、そっくりですね!」
コウガは“この言葉は、ヒルデグランドがうれしいコメントだと感じたかもしれないな。”と直感した。
コウガの予想通りだった。
ヒルデグランドは「でしょ!でしょ!でしょ!」
ヒルデグランドは、思った以上に、褒め言葉を素直に受け入れた。
コウガは「お嬢さんは、ヒルデグランドさんに、大切に思われて、幸せなお嬢さんですね!」
ヒルデグランドは「あの娘は、ワシの奥さんの連れ子なんだ。奥さんは、人間の未亡人で、ワシの奥さんになってくれたんんだ!オッケーされた時は、うれしかったなあ!レティシアちゃんは城で妖怪や魔物の友達はいるんだが、人間の友達がいなくてな。ある時、人間の書いた本を開けながら、寝ていた。ほっぺたには、涙のしずくが流れていた。やっぱり人間界が恋しいのか、ワシは不憫で、たまらなかった。いっその事、このワシを罵ってほしい!どうせなら、殴ってほしいという感情に駆られた。しかし、この時、ワシはな、思ったんだ。少しでも楽しい思いをさせてやろう!そう決心したんだ。それで、ハンバーガーを買った。次には、誕生日会を企画した。場所は、城でやるのが1番だと判断した。」
ヒルデグランドは「コウガ君!頼む!このとおりだ!ワシを助けると思って、協力してくれ!レティシアちゃんの誕生日を祝ってくれ!それも自分から参加したいと言い出したことにしてくれ!このワシ、ヒルちゃんからのお願い!」
ヒルデグランドは、最後は可愛くキメた。そして、なんと土下座までした。
ヒルデグランドは、下手作戦に出た。これで、コウガがプランに乗らなかったら、泣き落とし作戦も辞さないつもりだった。
コウガは「やめてくださいよ!困ります!」
ヒルデグランドは「じゃあ、引き受けてくれるんだね!」
コウガは「じゃあ、クマタンと女の子2人と相談してみます。なにしろ魔王城なんて行った事もないので、心配ですよ。」
ヒルデグランドは「大丈夫!ワシが付いているんだから。」
コウガは、そのヒルデグランドこそが信用をおけなかった。
ヒルデグランドは「じゃあ、十中八九、OKというこだね!」
コウガは「まぁ、そういうことですかね。クマタンとねえちゃん2人(フローラ、エレノア)に聞いてきます。」
コウガは、少し離れているフローラとエレノアに「今度、このお客さんの誕生日会に行くけど、みんないいかなあ?」
フローラとエレノアは、首を縦に振って了承した。
クマタンは「わかった!」
コウガは「みんな、参加できるようです!今度の休みでもいいですか?」
コウガは、待たせているヒルデグランドに、レティシアの誕生日会に4人で、参加することを伝えた。
ヒルデグランドは「いいよ!いいよ!よく承知してくれた!このワシに、任せてくれ!大船に乗った気でいてくれ!」
コウガは“大船に乗った気とは、相手を信用して安心することだが、こんなオッサンが1番いい加減だ!”
ヒルデグランドは「うれしいぞよ!サンキュー!」と土下座の態勢のままで、よほど、うれしかったのか、めっちゃ号泣した。
コウガはよく、帝王なのに、これだけ恥も外聞もなく、泣けるもんだと思った。よほど、“娘が可愛いんだなあ”と感心した。
ヒルデグランドは、リュウジンバーガーの客足が途絶えて客がいない時を狙って来店していた。計画的だった。