第25話
次に、テッサム、通称てっちゃんが現れた。20歳の男性で、現地人だが、なぜか大阪弁だった。酒屋を営んでいて、コウガの店やドーナツ店のクルトやアロマ店のシャーロットの店などに酒を配達していた。
バージルの帰った後、クマタンは、まだイートインの席付近にいた。
てっちゃんは「あれー?クマタン、珍しいやんか!いつも、調理場にいるのに、なんでやのん?」
クマタンは「あんたこそ、いつも元気でいいね!」と不機嫌そうに言った。
てっちゃんは「元気過ぎて、困ってまんねん!うるさ過ぎて、女の人から嫌われて、結婚なんか、でけへんわ!」と卑下して、冗談を言って、ウケようとした。
先ほど、バージルがクマタンとコウガの関係(結婚)を否定的に言った後だったので、てっちゃんが、結婚でけへんと言ったので、バージルの言葉と重なって、クマタンは、機嫌が悪かった。てっちゃんは、実に、タイミングが悪かった。
クマタンは「あんた、ずっとそのキャラが似合ってるな!」と皮肉った。
てっちゃんは「おおきに!」
懲りない、てっちゃんだった。てっちゃんは、納品の酒を納入すると帰って行った。
クマタンも調理場に戻って行った。
そして、店に、マサムネが現れた。フローラが、厨房内のコウガを呼んだ。盗賊の難から救ってくれたマサムネに、礼を言うために、マサムネが来店したら、自分を呼ぶように頼んでいた。
コウガは、マサムネだと気付くと、駆け寄った。
コウガはマサムネに「その節は、助けていただいて、ありがとうございました!命の恩人です!」
マサムネは「いやいや!義を見てせざるは勇無きなりだよ。あれは、拙者にとっては、ほんのお遊びのようなものだったよ。」
コウガは「あんな、詰みの状態でですか?」
マサムネは「ちょうど、腹ごなしに、いい運動だったよ!」
コウガは「お礼をしたいんです!商売物で申し訳ありませんが、チーズバーガーがお好きなので、チーズ2倍バーガーは、いかがですか?」
マサムネは、いつもよりチーズが倍増なので、内心、うれしかった。しかし、ここで喜んだら、男が廃るような気になったので、ここは、すぐに、即答しないのが賢明だと判断した。
コウガは、お礼なので、もう少し価格の高いものを考え付いた。
コウガは「では、それなら、うちの人気商品の焼肉バーガーにしますが、これならば、どうですか?」
マサムネは「美味そうだなあ!どちらもよくわからないがな!」
コウガは「そうですね!どちらも、ご存じないですから、宣伝の意味を兼ねて、チーズ2倍バーガーと焼肉バーガーの両方用意しますね。それと、フライドポテトとドリンクを用意しますよ。ドリンクはいつも通り、コーラにしますね!」
コウガは、命の恩人なので、大盤振る舞いだった。
マサムネは「じゃあ、そうするよ。」
コウガは、その場を離れ、調理を開始した。
コウガは、フライパンに油をひき、牛肉を炒めて、焼肉のタレを絡めて仕上げた。次に、バンズの真ん中を切り、鉄板で温めた。上になるバンズを逆さにして、マヨネーズとわさびを塗り、ちぎったレタスと焼肉を乗せた。下になるバンズをかぶせて、ペーパーで包んだ。焼肉バーガーの完成だ!
チーズ2倍バーガーは、いつものチーズバーガーにもう1枚、チーズとハンバーグを増量してペーパーで包んだ。そして、フライドポテトとコーラを袋に入れた。
コウガは「お待たせしました!お召し上がりください!またよければ、感想をお願いします!」
コウガは、無料だといえ、しっかり宣伝して、売り上げの足しになるように考えていた。
マサムネは「ありがとう!」続けて「困ったことがあったら、遠慮なく呼んでくれ!」
コウガは、前回のようなことがあったら、困るが、一応、お愛想で「その時は、お願いします!」と返した。
コウガにしたら、そんなことが度々あったら大変だと、心の中で思った。
次に、常連客のクラインが現れた。
フローラは、客がクラインなので、コウガをすぐに呼んだ。店は、シャーロットから調達した、対クライン用のスプレーを常時、まいていた!
コウガは「クラインさん、いらっしゃいませ!先日は、どうもありがとうございました。」
コウガは、心の中では、“盗賊の手下にクラインがダメージを与えて、余計に面倒なことにしやがった!”と思ったが、一応、礼を言った。
クラインは「ああ・・・そうだったわね・・・。別に、あの時も、あなたたちがいたので、後をついて行っただけなの・・・。あっ。別に、ストーカーというわけじゃないのよ・・・。」
コウガは「それは、立派なストーカーと言うんです!」
クラインは「え・・・?そうなの・・・?」
クラインは、何を言われても、全く気にせず、受け流していた。
コウガは「ところで、こちらでお召し上がりですか?それともお持ち帰りですか?」
クラインは「あのね・・・。私ね・・・いつも、家でも、外でも1人で食べているのよ。あ~寂しいわ・・・。」
コウガは「ああ、そうなんですか。」
クラインは「ええ。そうなの・・・。寂しいのは、いつも、1人だけだからかしらね・・・?今日は、イートインして、帰るわ・・・。」
コウガは「では、何をご注文しますか?」
クラインは「じゃあ、オレンジジュースにしようかな・・・?」
コウガは「ありがとうございます。」
やっとこさ、注文が決まった。
クラインは、オレンジジュースを飲んで帰った・・・。
クマタンは、コウガを心配そうに見ていた。クマタンは、コウガに「やっと帰ったね。一仕事終わったような気分だよ・・・。」
今日は、知り合いのバージル、てっちゃん、マサムネ、クラインと次々と続いた。クマタンは、特に、クラインには、注意を払っていた。クラインは、コウガを狙っているのではないかと、気が気でなかった。今日は、1人、というのをクラインが強調していたので、目が離せなかった。しかし、当のコウガは、クラインを客以上には、見ていなかった。コウガは、クラインを相手にしないのは、当たり前のことだった。クマタンは、心配性だった。
疲労困憊のクマタンだった・・・。