第21話
コウガは、日本での生活を回想した。
高校生のコウガの学生生活は散々だった。私立の低レベルの高校は、進学校を自称していた。出来のいい生徒を授業料無料で釣り、入学させて、大学に進学させていた。担任は、成績を重視して、授業は、ほとんど内容も低レベルで、中学レベルだった。時には、草野球やフットサルで、教科のテストの点数を決めるような呆れた学校だった。大学には、とても行ける授業内容ではなく、さらに、通知表の成績が、ほぼ、オール10という生徒を学校説明会に、おとりに使い、騙すことを平気でやる学校だった。それを推奨する、校長のワンマン経営だった。ある意味、この学校に入学した時点で、人生の落ちこぼれコースの始まりが起こることになった。
卒業と同時に、コウガは、ある企業に入社した。事務職で、朝から出社すると、先輩、上司のいじめが始まり、就業時間の終了まで、それは、続けられた。ノイローゼや体調を崩して、同僚は、次々と、辞めていった。どうして、こう、うまくいかないのだろうか?
コウガは、悩んだ挙句、会社を退社した。
そして、ひきこもりの生活になった。母親は心配して、最初は、コウガに声掛けをしていた。しかし、あまり、詮索すると、余計にこじれると思ったらしく、そっとしておいてくれた。父親は、出来のいい息子ではないので、期待外れで、いつも顔を合わせても無言だった。
ある時、コウガは、外出した。近所のおばさんは、事情を察してか、すれ違っても、気付かないように、歩いていた。
“無視しやがって!”心の中でそう思った。
コウガは公園に向かって歩いていた。男女の小学生の子供たち3人が学校から、帰ってきていた。3人は、何かを蹴り倒して、歩いていた。見ると、クッションだった。耳が丸く、顔もまん丸だった。3人は、急に、蹴るのが飽きたらしく、クッションを木の隅に、蹴って、何事もなかったかのように、どこかに行った。
コウガは、そのクッションを手にした。クッションはベージュ色のクマだった。コウガは、土を払い、「可哀想に・・・。」と、つぶやいた。
その次の瞬間、急に辺りが変化した!日本の風景ではなく、中世ヨーロッパの景色だった!急変に驚いたコウガだった。