第105話
翌日、アレキサンダーは配達に出かけた。
アレキサンダーは「チェッ!本屋のおじいめ!このワシを過重労働ばかりさせやがって!今に見返してやる!とりあえず、リュウジンバーガーに行ってみるか。コウガもクマもワシが来ないと物足りないだろうしな。仕方ない。行ってやるとするか。」
アレキサンダーはリュウジンバーガーに出かけた。
この日、リュウジンバーガーは、盛況だった。配達の注文が電話に入ったので、チーズバーガーセットを配達することになった。しかし、この時、あいにく、フローラとエレノアは、配達に出かけていたので、クマタンが配達することになった。
コウガは「クマタン、気を付けて行ってよね!」
クマタンは「僕より、コウガ、調理と受付の両方なので、大変だけど、頑張ってよね!」
コウガは「じゃあ、頼むよ!」
クマタンは「うん!じゃあ、行ってくるよ!」
クマタンは、配達の品物をリュックに詰めると、リュウジンバーガーの店外に出た。
すぐに、クマタンは、配達から帰ったフローラに出会った。
クマタンは「やあ!フローラ!お帰り!配達に行ってくるよ!」
フローラは「えっ!?大丈夫?私が行こうか?」
クマタンは「いや、たまには、僕が行くよ!いつも、フローラもエレノアも大変だろうしな!」
フローラは「うん!大変だよ!やっとわかった?」
クマタンは「相変わらず、減らず口だなあ!まあ、行ってくるよ!」
フローラは「気をつけてね!」
フローラは、クマタンを見送った。
その後も、リュウジンバーガーは、盛況だった。
次々と、客が来店していた。そして、客が途絶えた時だった。
クマタンが、配達から戻って、フローラのいるカウンターに近づいた時、クマタンが「コ・・・ウガ・・・。」と言って、バッタリと倒れた!
カウンター近くには、エレノアもいた。
フローラは「クマタン!!!!!どうしたの!?」
エレノアも「クマタン!!!!!」とフローラ同様に叫んだ!
クマタンは、全身、真っ赤っ赤だった!
フローラは「どうしたの!?どうしたの!?どうしたの!?」
コウガは、慌てて、走ってきた。「クマタン!!!!!」
コウガは、クマタンの体に触れて、体温が上がっているのがわかった。クマタンの意識は、もうろうとしていた。そして、倒れた。
コウガは「大変だ!何とかしなくっちゃ!」
コウガは、椅子2つを向かえ合わせて、クマタンを寝かせた。
コウガは「医者を探さなくっちゃ!」
フローラは「私が、呼んでくるから!コウガさんとエレノアは、クマタンを見ていて!」
コウガは「ああ!頼むよ!」
フローラは、リュウジンバーガーの店を飛び出した。そして、医者を呼びに行った。
リュウジンバーガーは、とても、緊迫した雰囲気になっていた!
そこに「よう!!!」とアレキサンダーが現れた!
アレキサンダーは「あれっ!?クマ!どうしたんだ?なんか具合が悪そうだな!」
エレノアは「かなり、クマタンの様子がおかしいのよ!死にそうなのよ!」
アレキサンダーは「ええっ!?そうなんだ!そうか!」
エレノアは「コウガさん、フローラがお医者さんのコウネリヤス先生を探しに行ってるけど、私も、祈禱師や薬師、あちこちに電話してみるわ!」
アレキサンダーは、リュックから1冊の写真集を取り出した。「おい!これを見よ!クマ!グラビアアイドルのエルフのバニーちゃんの写真集だ!元気出るぞ!」
クマタンは、反応がなかった。
アレキサンダーは「ダメかあ。」
コウガは「アレキサンダー、そんなことじゃダメだ!」
エレノアは「コウガさん、どこも病院も医院も不在だわ!」
コウガは「困ったなあ!」
アレキサンダーは「これは、ポーションだ!かなり、高価で、滋養強壮に効くらしいぞ!お代はいい!その代わり、チーズバーガーセットでオッケーさ!」
コウガは、アレキサンダーが差し出したポーションをクマタンの口に、ほんの少し流した。
「クマ!どうだ?高い薬だから効くはずだ!ワシのとっておきの秘薬だ!」とアレキサンダーは、大声で叫んだ。
すると、クマタンは、目を開けた。
「おおおっ!!!やはり、ワシの言う通りだろ!?ワシの言うことに間違いはない!」
自負するアレキサンダーだった。
コウガは「クマタン!わかるか!?」
エレノアは「気がついたようね!」
クマタンは、むっくりと起き上がった!
コウガは「クマタン!どうもないの?大丈夫?」
クマタンは「あっ!コウガ!配達に行った先が、サウナ店でさあ。無理矢理、サウナに入っていくように誘われて、断り切れなかったんだ!熱くて熱くて、死にかかったよ!」
コウガは「そうだったんだ!でも、死ななくてよかったよ!」
コウガとクマタンは、抱き合って、喜んだ!
クマタンは「のぼせてたのかな?」
コウガは「いずれにしても、よかったよ!アレキサンダーの持ってきたポーションも効いたのかな?」
アレキサンダーは「遅い!遅い!遅すぎる!今頃気が付いたんか!遅いことは猫でもやる!」
クマタンが息を吹き返して、感激するコウガとクマタンだった。エレノアも同様に嬉しかった。
一方、医者のコウネリヤスを探しに行ったフローラは、あいにく、不在だった。他の医者も同様だった。
フローラは「クマタンが珍しく私に『大変だろうしな』って、変に、気遣ってくれたから、もしかしたら、自分の寿命が短いのがわかっていたのかな・・・?なんだか、可哀そうだな・・・。」
フローラは「そうだ!この辺に、熱が下がる草、ネツサガリ草が生えてたっけ?でもあれは、トゲがあって、痛いんだよね。でも、クマタンのためだしな!よーし!やるか!クマタン!必ず助けてやる!死ぬなよ!」
フローラは、トゲが痛いネツサガリ草を素手で、摘んだ!手は、トゲで、あちこち、血だらけになった!
走って、リュウジンバーガーに戻った。
フローラは、泣きながら「クマタン!ごめん!お医者さんがみんな不在なの!ネツサガリ草を取ってきたわ!」
フローラは、泣いた状態で、手には、ネツサガリ草を持って、突っ立っていた。
コウガは「フローラ、お疲れ様!クマタンは、元に戻ったよ!」
フローラは「ええっ!?治ったの?よかったー!」
クマタンは「フローラ、まあ、ありがとう。」
アレキサンダーは「クマも、治ったので、めでたしめでたし!いつも、かゆいところにも手が届く、お役に立つ、ワシなんだよ!お礼は、チーズバーガーセットでは、厚かましいので、デカデカバーガーとチーズ2倍バーガーを両方セットで、どっちもコーラで、いいよ!」
アレキサンダーは、まさか持参したポーションが、こんなに効いたので、驚いた!それで、調子に乗って、チーズバーガーセットではなく、デカデカバーガーセットとチーズ2倍バーガーセットに変更した!
コウガは「アレキサンダーさん。逆に、高くなっているんですけど。」
アレキサンダー「へぇー。知らなかったなあ。まあ、今日は、デカデカバーガーセットとチーズ2倍バーガーセットで、いいよ!」
クマタンは「だーかーら!高くなるって言ってんだろ!」
アレキサンダーは「病人がイライラすると血圧が上がるぞ!ここは、妥協して、ワシの提案を受けるべきだ!」
クマタンは「お前なあ!」
アレキサンダーは「やるか?死にかけ!」
クマタンは「なんだと!?ゴルァ!」
2人は、追いかけ合いが始まった。
コウガは「クマタン!無理するなよ!」
クマタンは「これは、黙ってられないよ!」と走った。
2人は、しばらく走って、床に座り込んだ。
コウガは、アレキサンダーの持参したポーションで、クマタンが回復したので、アレキサンダーが希望するデカデカバーガーセットとチーズ2倍バーガーセットをサービスすることにした。
コウガが調理したセットを受け取るとアレキサンダーは、すぐに食べ始め「味は、まあまあだな!うまないなあ!久しぶりだから食べれた!走って運動して腹が減っていたから食べれた!」
コウガは「アレキサンダーは、いつも通り、この調子だなあ!」
アレキサンダーは、満腹になって、気分がよくなって、いつもの「ホイー!!!」をかまして、去って行った!
ちなみに、アレキサンダーが、クマタンにプレゼントしたポーションは、ドラッグストアが消費期限間近のポーションを溝に流していたのをアレキサンダーが無理を言って、もらい受けたものだった。
フローラは、クマタンが飲み残したポーションを飲んで、すぐに、手の傷は、回復した。