アーグラと新武器の話
商業都市アーグラ。恐らく迷い人が最初に訪れる大きな都市だ。
アイギスとは比べ物にならないほどの巨大な街だ。ここでは様々な人、物が集まり、ダンジョンなども近くにある。アイギスのイベントから一件、俺は心機一転、ここで暫く滞在する事にした。ここの宿屋には俺の話は広まっていないようで、まず最初は近くの一番いい宿屋を10日ほど泊まる事にした。貴族用のホテルのようで、金色のカーテンや豪華なバスタブがついていた。早速部屋に鍵をかけて、部屋に荷物を置き、服を脱いでバスタブに湯をためる。現実世界でも水道代とかの関係であんまり入ってないから、ゲームでは毎日一日2回くらい入ってやろうと思ってる。
「はーいぎがえる~」
誰もいないので、思いっきり声を出して、思いっきりくつろぐ。最高だ。このゲームやっててよかった。
お湯の感触や温度、その他の要素も全て再現されている。あんまり入るとのぼせるから、ほどほどにしておく。
***
「あっ、あっ、ありがとうございました」
アーグラの街の冒険者ギルドに拡張バッグを持ち込んだ。案の定ナイト種をゴロゴロ入れたので、数千万Gを一気に手に入れた。このままここに家を買う事も出来そう。買わないけど。ついでだけど、ここでは序盤を戦い抜く武器を手に入れるためにこの数千万円は使おう。出来ればミスリルとか欲を出してオリハルコンとかそのレベルで作った武器が欲しい。序盤で所持してるべきではないが、アーグラの街ではCランクまで上げてもらった。これならミスリルとかそのレベルの武器を持っていても違和感はないだろう。ギルドの受付で貰った地図をあてに、アーグラで一番の鍛冶屋:鉄火を訪れた。
「すいませんー!」
鉄を叩く音に負けないほどの大きな声をあげると、中から返事の声が聞こえてきて、ごっついドワーフが出てきた。どうやらさっきまで鉄を打っていた人らしく、手に持ったハンマーをカウンターのそばにおいて、防護ゴーグルを外して俺に訪ねてきた。
「誰だお前?誰の紹介で来た?」
「こんにちは、ギルドの紹介できました」
「ふぅん、そうか、好きに選べ」
偏屈そうなドワーフのおじさんは俺を値踏みするように見た後、カウンターからそこら中にかけてある武器を指してそういった。なるほど自由に選べって事か。<鑑定>を使ったけど、特に買いたいと思った武器はなかったので、思い切って相談してみる事にした。
「あの、オーダーメイドって」
「はぁ?」
何言ってるんだこいつ身の程をわきまえろよみたいな顔で聞き返された。腕のいい職人はだいたい頑固だと自分の中で勝手に思っているので、思い切ってミスリルを取り出した。
「これで」
「おお、これは、ミスリルか」
「はい、これで短剣か鎌を」
「短剣かサイスだな。いいぞ。ミスリルを取ってこれるだけの人物だ、お前CランクかBはあるだろ?」
「えっ」
図星である
「図星だな、他に何かあるか?細かい要望やなんでも言ってくれ」
「えっ、そうですね...」
正直手になじめばなんでもいいと思っていたのに、すごい食いつきで聞かれる。わからん。よく切れて刃こぼれしにくくて手になじむくらいしか分からん。
「よく切れて、刃こぼれしにくくて、私の手になじめば...」
「わかった。3時間くれ、すぐ終わらせる」
「あっ、そうだ、親方?さん?鉱石要ります?」
「あ?うちは買い取りやってないよ。ギルドか商人の所に行きな」
「これなんですが」
取り出したのは白金鋼。ミスリルより高価な鉱石だが、なぜかギルドには買い取れませんと言われた。
「なに?おお、こいつはプラチナか」
親方が嬉しそうにプラチナを手に取り、なにやらググっと力を籠めると、濁った石のような形をしていたプラチナは済んだ白金色になった。
「こいつは並みの人間にはわからない。<鍛冶>スキルか<錬成>スキルを使って、精練しないとこうはならないんだ。どうする?この状態ならかなり売れるぞ?ギルドで売るか?」
「いえ、これも使って武器作れますか?」
「出来るぞ」
「ではお願いします」
「了解した」
そういうと親方は再び裏に行って、カンカンとなにやら作業を始めたようだ。折角だから、俺はアーグラの街の雑貨屋や商店街に行くことにした。
***
「おお、すげぇ、光ってる」
その後、残ったプラチナを親方にあげたら、支払いはいらないと言われた。ラッキー。試し切りをしようとしたが、アイギスとは違って、アーグラの近くにあるのは、アーグラダンジョンズと言われるダンジョン群だけだった。鉱石系のモンスターを生成するアーグラ岩窟ダンジョンや、獣系が多いアーグラ平原ダンジョン、ナイト系のモンスターしか出ないアーグラナイトダンジョンなど、他にもいろいろなダンジョンがある。このようにダンジョンが多い事が、多くの冒険者を引き付け、この町が繁栄した理由の一つだと思える。
折角なので、さっそくアーグラの平原ダンジョンに潜ろうとした。
(うわぁ...人多すぎだろ...)
見渡す限りの人人人、ダンジョンに入るためにはギルドの許可証がいるので、ダンジョンの入り口の門番に許可証を見せなければ入れない。その見せると言う事だけに長い列を待たなければいけない。めんどくさい。長すぎて5列くらいになっている。そんなに待ってられないので、岩窟ダンジョンに行くことにした。
(ここもか...)
平原ダンジョンよりはマシだが、岩窟ダンジョンの方も4列近く並んでいた。良質で高価に売れる鉱石を落とす鉱石系のモンスターが多く出るので、そのせいでこんなに並んでいるのだろう。やっぱり待ちたくないので、ナイトダンジョンに行くことにした。
***
(誰もいない...ラッキー)
こっちは特に許可証はいらないようで、ギルドから夜中外出の許可印をもらっていれば入れるらしい。
折角なので門番にネームタグを見せて、さっそく入ってみた。中はかなり広いようで、第一階層は夜の平原のようだ。出るモンスターもナイト・ゴブリンやナイト・ウルフだけだった。試しに<隠密>と<隠れる>だけを使って、さっそく新武器を使ってみた。足音を潜めて、ナイト・ゴブリンの背後に回り、一振り
(うおっ!?)
やはりスキル無しでは綺麗に上手くいかず、首の骨に当たったような感触があったが、止まる事なんてなく、そのままスパッと切れた。
(すげぇ)
流石親方、想像の数倍の出来だ。骨ごと切れるとは思っていなかった。MPを消費して、魔力を通してみると、なんか透明な刃も出てきた。試しにそこらへんの木を切ってみると、すんなり切れた。なるほど、刀身の延長もできるのか。折角なので、潜れるだけ潜る事にした。