冒険者ギルドとステータスの話
噴水広場から少し離れた場所、いわゆる商業区画の真ん中に冒険者ギルドがあった。
昼間はドアが常に開いており、まるで来るもの拒まずを表しているようだった。入り口でその建物の巨大さにびっくりしていると、ごめんよという声が聞こえてきて、振り返ってみると、全長2mを超えそうな巨大なイノシシを抱えた戦士のような人が嬉しそうに笑いながら入っていった。恐らく、討伐したモンスターの買い取りに行くのだろう。俺もずっと入口に立っているわけにもいかないので、ギルドの中に入った。
どうやらまだ混む時間でもなく、ギルド内に立てかけてある時計を見てみると、まだ朝の9時を少し過ぎたくらいだった。設定でゲーム内の体感時間を現実の数十倍にしてあるので、正直かなり遊んでも問題ない。一応メニューに現実時間の時計も表示するように設定してあるけどね。さて、開いている受付を発見したので、挨拶がてら冒険者登録をすることにした。
「おはようございます、冒険者登録をしたいのですが」
「はい、おはようございます、本日の業務を担当させていただきます、セシルといいます」
金髪緑眼のエルフの受付嬢のようだ。いきなりすごいファンタジー要素でびっくりしたが、これもこのゲームの売りなんだろう。
「ではまず、こちらの水晶に手をかざしてください」
なにやら受付台の下から水晶玉のようなものを取り出して、ずいっと俺の前に出してきた。
言う通りに手をかざしてみると、水晶からそれぞれ俺と受付嬢に俺のステータスが表示された。
ここで確認されるのは主に犯罪歴の有無らしい、今のさっきにゲームを始めたから、なにも問題ないはず。
「はい、確認いたしました。何も問題ありません。ようこそアイギス冒険ギルドへ」
そういうと、水晶からネームタグが生成されたようで、これを首にかけていればいいらしい。
俺は取得したスキルの一つである<鑑定>を使ってみると、このtagは[破壊不可能]と[窃盗不可]がついていた。
「そのネームタグは身分証明証のようなものです。まだ今は登録したてで銅のFランクですが、初代勇者様のように白金のSSSランク目指して頑張ってくださいね!」
「がんばります、さっそく任務を受けたいのですが」
「でしたらこちらですね、薬草採取、ゴブリン討伐、ノーマルウルフ討伐、出っ歯ウサギの討伐でしょうか?」
「わかりました、全部受けます」
「どれも常設依頼ですので、討伐証明である牙や耳をもって来ていただければ大丈夫ですよ、もちろん丸ごと持ってきてもかまいません。すぐそちらに解体所もありので、状態が良ければ追加報酬も期待できますよ?」
「わかりました、さっそく行きます」
「はい、お気をつけて」
***
薬草、ゴブリン、ウルフ、ウサギそれぞれ全部アイギスの近くにあるアイギスの森やアイギス平原という場所に出現するらしい。それもいわゆるFランクの魔物で、初心者にはちょうどいい。
俺は100G使って下級回復ポーションを二つ、近くの雑貨屋で購入し、まずは平原に向かうことにした。
街の出入り口にいる衛兵にギルドのタグを見せ、夜の12時にまでには帰って来いよと言われ、俺は街を後にした。
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名前 シエルボ
LV 1
職業 死神
称号 迷い人 魂の死神 肉体の死神 魔力の死神 アルカナの使い手 虚弱体質 貧弱 不運 精霊の怨敵 地霊の怨敵 魔族の怨敵 龍族の盟友
アクティブスキル <隠れる> <隠す> <急所突き> <急所切り> <急所叩き> <鑑定> etc...
パッシブスキル <霊体> <精霊体> <魔素体> <流体> <金属体> <霧体> <隠者> <自動HP回復+++> <自動MP回復+++> <致命の一撃> <会心率UP+++> <審判者> <死神> <アルカナユーザー>
etc...
HP 200
MP 120
筋力 25
魔力 20
精神力 25
耐久力 15
器用さ 85
俊敏さ 120
抵抗力 10
幸運 10
信仰 0
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なぜこんなステータスになっているかというと、これはどちらかというと本当のスキルの方だ。
普段は<隠者>のスキル効果をしようして、このステータスを剣士に偽装している。
死神とかいう職業はどこから来たかというと、極限まで下げたステータスで取得した。なんならレベルも下げた。ちなみに初期剣士はこんな感じだ。
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名前 剣士
LV 18
職業 剣士
称号 武器使い:剣 武器の達人:剣
アクティブスキル <スラッシュ><ガードブレイク><パリィ><攻撃力UP+>
パッシブスキル <自動HP回復+><自動MP回復+><武器攻撃力上昇:剣+>
HP 2850
MP 600
筋力 120
魔力 50
精神力 80
耐久力 100
器用さ 75
俊敏さ 65
抵抗力 100
幸運 90
信仰 0
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という感じだ。なんならこの剣士君のスラッシュの推定ダメージは最低でも480出る。一度の攻撃で俺が二人死ねる。攻撃力高くない?人二人分やぞ
とまあ俺はこんなのステータスに偽装しているわけだ。この剣士君よりは幾分よわい、剣士なりたての現地民程度のステータスにしてある。スキルは流石にギルドに見せていない。これは秘密にするものだろう。自分で考えた、ぼくのかんがえたさいきょうのスキル、を良く女神さまは許可したな?とかアイギス平原を歩きながら考えていたら、何やらゴブリンの鳴き声が聞こえてきた。