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ひとりぼっちのVRMMO冒険譚  作者: 鹿田 丸男
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新生冬の騎士団の話

あれから数時間後、魔物連合軍もだんだんと数が減ってきており、数時間前の戦闘に比べてかなり戦いが楽になってきた。俺は、風魔法で空を飛んで、空中から地上の魔物軍に向かって魔法を撃ったり、空飛ぶ魔物を倒したりしていた。冬の騎士団の面々もだんだん疲れのせいか、無口になってきた。しかし連携は以前と比べて段違いに良くなっており、誰も何も話さなくてもお互いをカバーできていた。しかし、そろそろ大アルカナ:太陽の効果も切れる。残りのモンスターの数的にも、もう後1時間足らずで全て倒せるだろう。俺は<拡声>スキルで全員に聞こえるようにこう言った。


「聞け騎士ども!もう敵の残り数は少ない!よくぞ耐えきった!反撃の時だ!辛酸を舐めさせられた屈辱はもう十分だろ!野郎ども!攻撃開始だぁああああ!」

「「「うぉおおおおおおおおおお!」」」


そういうと、魔法陣の近くで必死に耐えていた騎士団の面々は少しずつ戦線を広げ、果敢に周りのモンスターを蹴散らしながら進軍していった。


「見よ!そして震えよ!お前らにもう太陽の加護は不要だ!あとは己の力のみで戦い、そして生き残ってみよ!大アルカナ:太陽を使用、落日(フォールンサン)


空に浮いていた太陽に俺は手をかざし、そのままその太陽を地面に叩きつけるように手を振り下ろした。

狙うは魔物連合軍後方、なんか指揮官とかがいそうな後方の陣地だ。ゆっくりと、しかし急速に、空に浮かぶ太陽は、無慈悲に魔物たちを焼き殺しながら地面に近づき、そして地面に触れたその瞬間、世界が一瞬、無音になった。その後、地面を揺らすような爆音と共に、残り数万いた魔物連合軍は、数百を残すのみだった。しかし、その代償は、()()()()、そう、日が落ちた事により、残った魔物連合軍は一部を騎士団に、そして逃げ延びた一部は、深夜種のモンスター達の餌となった。


「全員!魔法陣に集合!帰還する!」


隊長達が素早く点呼を終え、全員いる事を確認したら、俺は魔法陣を起動させ、鏡世界から脱出した。

そうして、全員が命からがら訓練場まで戻ってきたところで、みんな緊張の糸が切れたように、その場にへたり込んでしまった。そうして、泣き出す者や、笑い出す者、友と生還を喜び合う者などさまざまだが、みな嬉しそうにしていた。俺は今のうちにと思い、全員にこう言い放った。


「お前らぁあああ!良く生き延びたぁああああああ!これでお前らはもう立派な騎士団だ!否!お前らは地獄での戦いを生き延びた!これからは、氷獄の騎士団(コキュートスナイツ)と名乗るがいい!」

「「「うぉおおおおおおおおお!」」」


「大アルカナ:皇帝を使用!称号付与の儀を開始する!」


大アルカナ:皇帝の効果の一つ、人間一人に一回のみ、好きな称号を付ける事ができる。これは大量のMPを消費するが、称号を付けられた人間は称号を付けた人間へ忠誠を誓う事になる。別に忠誠は俺じゃなくてもいいのでが、流石になにもしないのは可哀そうだ。


「魔剣士隊、隊長!ユウト、前に!」

「はっ!」


ユウトは俺に突っかかってきた当初とは違い、部下を率いる責任、そして二度と慢心しないと言う、成長した顔つきになっていた。


「ユウト、成長したな」

「全てシエルボさんのおかげです」

「いや、よくここまでついてきた、誇りに思え、お前は成長した」

「ありがとうございます」

「ユウト、お前に[氷獄の剣士]の称号を与える!これからも驕らずに、邁進せよ!」

「ありがたき幸せ!」


「次!黒斧隊のザガン!前へ出よ!」

「はっ!」

「ザガン、最初は怯えてばっかりのお前だったが、今じゃ部隊長か..成長したな!」

「や、昔の事はやめてくだせぇ...」

「自信持てよ、お前は成長した!これからもがんばれよ」

「はい!」

「ザガン!貴様には[氷獄の黒斧]の称号を与える!これからも臆することなく、敵を切り伏せよ!」

「は!」


「次!大盾隊のドラン!前へ!」

「は!」

「ドラン、昔はあんなにひょろひょろだったのに、強くなったな..」

「シエルボさん...あんたの飯と鍛え方のおかげですぁ」

「ふ、そうかもな」

「ドアン!お前に[氷獄の守護者]の称号を与える。これからのその強さをもって人々を守るがよい!」

「はっ!」


「次!魔法隊のセシル」

「は!」

「セシル、あんなにおどおどしていたお前が、モンスターに臆せず魔法を放てるようになるとは...」

「シエルボさんのおかげです」

「ふふ、そうかもな」

「セシル!お前には[氷獄の大賢者]の称号を与える。その魔法をもって、これからも敵を蹴散らすがいい!」


「次、支援隊のラーナ」

「はい!」

「ラーナ、どうだ、騎士団はなれたか?」

「はい!シエルボさんのおかげです!」

「悪いなラーナ、女の子って言うのはわかってたんだ、もっと紳士的であるべきだったな」

「いえ!大丈夫です!おかげで強くなりました!」

「そうだな、今じゃ男どもはみんなラーナに頼りっきりだな」

「ふふ、そうですね」

「ラーナ!お前には[氷獄の支援者]の称号を与える。これからの、他のメンバーを支援してくれ!」

「はい!」


「最後に暗殺隊のフーリ、前へ!」

「は」

「おお、一瞬気づかなかったぞ、<隠密>スキルがまた上がったんじゃないか?」

「御冗談を...全ては御身のおかげです..」

「まあまあ、そうかしこまるな」

「われら暗殺隊は全て貴方から学びました。感謝してもしきれないです。」

「フーリ、例の件は分かってるだろうな」

「は、騎士団を悪用する者は...」

「確証があれば王都に突き出すなりなんなりしろ。もし権力者が後ろにいたら...」

「まとめて殺す」

「そうだ。騎士団の仕事はただ一つ、ノーザンの街を守る事だ。それを邪魔する者は何人たりとも許すな」

「はっ!」

「フーリ!お前には[氷獄の審判者]の称号を与える、これからも、()()()()

「ありがたき幸せ!」


「以上をもって、称号付与の儀とする」


俺は大アルカナの効果を切って、普通の状態に戻る。


「お前ら!長い間!良く俺についてきた!お前らはもう数か月前とは違う!お前らは立派な騎士だ!騎士団だ!お前なら!これからもノーザンの街を守れるだろ!」

「シーエルボ!シーエルボ!シーエルボ!」


俺は歓声を聞きながらそっと演説台を下りた。大アルカナを使用した時に自動で生成されていた。ホントに便利だなこのスキル。


***


それから隊長達には一緒にギルドに来てもらい、魔物連合軍の素材を買い取ってもらおうと思ったが、量が多すぎたので、ノーザンの街のギルドマスターに一筆書いてもらう事にした。それをもって俺は王都にロングワープし、手紙を王都のギルドマスターに渡すように受付嬢に渡した。そうするとギルドマスター直々に出てきて、素材やその他もろもろも全部買取をしてくれた。俺は買い取り金額を直ぐにアイテムボックスに入れて、飯や酒、服、そして前々から頼んでいた大量の武器や装備も全部受け取った。いつか騎士団のみんなに配ろうと思っていた装備がようやくできたので、いまならあいつらもこの装備や武器に使われる事はもうないだろう。


***


ノーザンに戻った俺は、まずはギルドマスターに騎士団の育成の件はもう無事に完了した、と報告し、騎士団全員、滅国のモンスターの討伐が可能になった。その証拠となる素材も既に王都のギルドマスターも認識しているので、ついでに王都の冒険者に定期的な討伐を任せる必要もなくなった。そして、王都で売った素材の分の金は全て騎士団の全員に配ってほしいと、全部ギルドマスターに預けた。俺が直接渡すのもいいが、俺は西大陸に行く予定なので、ここらへんは信頼できるギルドマスターに任せよう。俺はそういうと、今日は前々から開く予定だった騎士団での俺との訓練完了お祝いの宴の準備があるため、あいも変わらず隊長どもを先に呼びつけていた。


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