騎士団と訓練:後半の話
「いいかお前ら!ここはもう訓練場じゃない!俺の魔法も使えない!それにモンスターに襲われて死ぬことだってある!いいか!絶対に死ぬな!俺の指示には従え!独自行動してみろ!あっという間にモンスターに食われて死ぬぞ!いいな!誰も死ぬな!」
「「「「はい!」」」」
そういうわけで、今日はまずはサバイバル訓練のための練習をしていた。まずは5人1組になり、ノーザンの森の浅い場所に入ってモンスターを数匹倒してもらう事にした。まずは20組ほど森に入らせる。それぞれ討伐するモンスターは冬熊か冬猪1体だ。他の組は森の入り口で待機して、作戦を考えても貰っていた。俺はというと、森に入っていった20組の監視とピンチになった時用に助ける予定だ。だが、正直全員きちんと基礎ができていたので、俺の出番は全くなかった。
そうして、とりあえず狩りに成功した組はノーザンのギルドに帰らせ、少なくない報奨金を全員で山分けさせるように言った。そうしてとりあえず初日の狩りは全員無事に成功した。
「シエルボさん楽勝ですわ!」
ふむ、何人か天狗になっているような気がするが、まあ本当の地獄はここからだ。
数日後、森の入り口で全員を集めて俺は地獄の始まりを宣言した。
「今日から1か月、お前らにはこの森でサバイバルをしてもらう!」
「「「え!?」」」
「そうだ、これからは雪も降るし、冷えてくる。基本的なサバイバル用具や技術は既に渡したし身についているだろう。お前ら、死ぬなよ?」
そう言って俺は全員を風魔法で森の中に吹き飛ばした。さて、既にサバイバルの基本は叩き込んだ。死ぬことはないだろう。俺も森の中で一緒に過ごすか。
***
1か月後、森中に響き渡るように大声で
「終了!」
と叫んだ。すると全員ものすごい勢いで森から出てきた。
おお、流石に1か月冬の森でサバイバルしただけあって、全員顔つきが変わっている。ほう、腑抜けた顔から戦士の顔になったな。
「整列!」
整列の速度も依然と段違いだ。レベルも全員70を超えており、これなら立派に騎士団としてやっていけるだろう。だが、まだだ。まだ足りない。とりあえず全員訓練場まで帰らせた。
訓練場まで戻ってきた団員達は、一同生還の悦びをかみしめるように涙を流す者もいた。
「お前ら!よく頑張ったな!以上で訓練は終了だ!この後は打ち上げやる!自由参加だ!家族の元へ帰りたい奴は帰れ!以上!解散!」
「「「うぉおおおおおお!やったぁあああああ!」」」
***
数日後、俺は個別訓練を開始した。それぞれ全員基礎が出来上がったので、俺は一人一人ステータスやスキルを<鑑定>して騎士団の再編を始めた。そして、ステータス上位の団員や<指揮>スキルを持つ団員はいわゆる隊長や兵長に任命した。ギルドマスターとも相談をし、冬の騎士団の根本的な再編を始めた。
まずは団員をそれぞれ得意な武器や魔法に特化させる。もちろん全員なんでも最低限できるようにが最低限だ。そうして出来上がったのはそれぞれ6つの部隊だ。
魔剣士隊、黒斧隊、大盾隊、魔法隊、支援隊、暗殺隊
それぞれの部隊の役割は、
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魔剣士隊:魔法と剣を使いこなし、攻撃も支援もできる一番入隊が難しい部隊
黒斧隊:特殊な黒い斧を使いこなす、圧倒的破壊力を司る部隊
大盾隊:両手に巨大なタワーシールドを持つ、<大盾術>を操る最堅の部隊
魔法隊:あらゆる上級魔法を使いこなす遠距離破壊部隊
支援隊:あらゆる支援魔法を使いこなす、あらゆる部隊にとって、必要不可欠な部隊
暗殺隊:要人暗殺から偵察までをこなす隠密部隊
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となっている。この中から、事前に決めた隊長クラスの団員を引き連れて俺はノーザンの森に訓練にやってきた。ここはより難易度の高い訓練のため、森の深部までやってきた。隊長クラス同士での連携を取る練習もやってもらった。最初はうまくいかなかったが、しばらくするとだんだん慣れてきたようで、それぞれが上手に攻撃や支援をかみ合わせる事ができた。よしよし。上手くいって良かった。
***
「お前ら、滅国のモンスターって知ってるか?」
ここ数週間、隊長クラスのメンバーと一緒に戦って気づいたが、こいつらなら昼の赤肌のモンスターどもと戦えるだろう。ふむ。全員知っているようだ。ちょうどいいな。連れていくか。
「明日から、滅国のモンスター達と戦うぞ」
おお、全員の顔から絶望の表情が見えるぞ。そんなにかな?もう俺はレベルも200を超えており、正直赤色魔物域でのレベリングも限界を迎えたと思っている。ギルドマスターも王都と定期的に連絡を取っているが、あまり進捗は良くないようだ。俺はレベリングの関係上、夜の赤色魔物域に入っているが、昼でも条件を満たせば入れるので、これからこいつらには俺の代わりに討伐してもらおう。
***
翌日、隊長クラスの団員どもを引き連れて、俺は魔法陣の上で準備をしていた。
「お前ら、準備はいいな?」
「「「はい!」」」
モンスターの血を垂らし、ぐるんとした感覚の後、全員で鏡世界に入った。
昼の魔物域のモンスターのレベルはだいたい100と少し、少し荷が重いかもしれないが、きちんと連携できれば問題ないはず。
人数が多いせいか、早速色々なモンスターが襲ってきた。俺はあまり手出しせずに俺抜きでどこまで戦えるか観察してみる事にした。ふむふむ、まだ早かったかな?一応モンスターを倒す手助けも兼ねて、石を投げつけて気をそらしたり、レベルが高すぎるモンスターは先に俺が倒したりなどしている。
数時間後、ここらへんが限界かな?
「全員集合!」
声をかけると同時に、全員そろって集合し、俺は魔法陣に血を垂らして鏡世界から脱出した。
「全員よく生き残った。お疲れ。今日は解散!」
「「「ありがとうございました!」」」
それから数週間、みっちりと隊長クラスの面々を赤色魔物域で鍛えあげ、全員レベルが150を超えた。俺もレベルは300を超え、俺もそろそろ西大陸に行こうかなと思っていた。その前に、折角だから、冬の騎士団全員を集めて最後の話をしよう。
「集合!お前ら!それぞれの部隊の隊長たちから聞いたと思うが、この街は200年前に滅国のモンスターと言われる強力なモンスターに過去一度滅ぼされそうになったことがある。ゆえに、お前たちには、俺との最後の訓練も兼ねて、自ら滅国のモンスター達と戦ってもらう!」
「「「ざわざわ」」」
「静まれぇぇええ!!!」
黒斧隊隊長、通称ザガンが俺の代わりに場を静めてくれた。
「俺は既にこの場にいる隊長たちと実際に戦った。そして数週間戦って気づいたんだ。お前らは十分強くなった!仕上げだ!お前ら全員、滅国のモンスターと戦ってもらおう!それでお前らは完全に生まれ変わる!何人にも負けない最強の騎士団となるだろう!行くぞぉおお!」
「「「おおおおおお!」」」
そうして俺はそれぞれの部隊を部隊長たちに任せ、全員で赤色魔物域へと入った。
***
「引くな!ここで諦めたら我らは終わりだ!我らはノーザンの盾だ!」
「的確に首と心臓を狙え!不要な場所を切ると剣が折れるぞ!」
「気合い入れろお前らぁああ!一人たりともここを通すな!!!」
「魔法を切らすな!冷静に!弱点を見極めて有効な属性のみ使え!」
「支援切らさないで!」
「一体も逃さすな、敵の指揮官は全て我らが暗殺する」
えー、割とピンチです。どうやら赤色魔物域は大人数で行くと、大量のモンスターに襲われるようで、以前は10人とか、多くて20人だったから、多少、数が増えてもなんとかなったが、今回、500人で一斉に侵入したところ、魔物連合軍とかいう軍隊が待ち構えていた。いやこれ200年前の再来じゃね?やばくね?見たところ数万体、いやそれ以上いると言うのに、どうやって500人+俺で引き留めろと、うーん...でもほったらかしにできないし、俺のせいもあるし、ここで迎え撃つことにした。
「大アルカナ:太陽、発動。太陽の加護」
太陽の大アルカナ。発動すると昼夜問わず、空に巨大な太陽が出現し、味方に自動HPMP回復、全ステータスを5%ずつ上昇させる効果を与える。この効果は時間ごとに上昇し、最大100%まで上昇する。そしてこの太陽はあらゆるモンスターへ強力なデバフと火傷、熱中症などのバッドステータスを付与する。同時に、邪属性やアンデットモンスターを無慈悲に焼き殺す効果も持っている。
(<拡声>スキル使用)
「お前ら!空を見ろ!太陽が我々の味方になった!震えるな!恐れるな!負けるな!我らには太陽がついているぞ!」
「「「うぉおおおおおおお!」」」
よし、全員にしっかりと太陽の加護が付与された。これなら大丈夫だろう。