ダンジョン達成お祝いと王都のナイトダンジョンの話
あれから数時間後、エイラさんはマグマワームのドロップ品をギルドに提出し、無事に上級冒険者の認可が冒険者ギルドから貰えた。これでエイラさんも学園では胸を張って先生になれるだろう。よきかなよきかな。そういう俺は…
「うめー!」
「ふふふ、すっごく美味しいですね」
エルダー・ヒューマノイドになってからエイラの雰囲気が変わった気がする。なんというか、前より色々ふくよかになった気がする。胸とか雰囲気とか。今俺が食べているには、龍の晩餐:赤龍の宴会セットだ。創始者が赤龍に振舞ったとされる精進料理だ。唐辛子などの辛い料理が多い事と、当時あまりに辛すぎて赤龍が我慢できずに口から火を吹いた逸話も残っているほどだった。
「辛いッッッ!」
俺も我慢できなくなって口をヒーヒーさせている。
辛い!美味い!旨味が口の中で爆発しているようだ。赤龍が大喜びした理由がわかった気がする。エイラも美味しそうにハフハフしているが、なんかこう…少し扇情的だ…
***
「ありがとうございましたシエルボさん」
「いえいえこちらこそ」
非常に美味しかったが、なんか扇情的なエイラさんと辛旨い料理でもうなんか色々満足だった。エイラさんの自宅は学園区のほうみたいで、俺はいわゆるダンジョン区の方だった。
「あっ、エイラさん、夜も遅くなりましたし、送っていきましょうか?」
「あー、うーん…いや、大丈夫です…」
ガーン、だな。そりゃそうか、あんなに美人なら彼氏の一人や二人はいるか。くぅ〜!なんかご飯付き合わせたの申し訳なくなってきた…今後誘うのはやめとこう…
悲しいなぁ…
一人悲しく帰路に着いた。
***
王都のナイトダンジョン、通称、ハズレダンジョン。特に入場制限がなく、夜間外出印をもらっている冒険者なら誰でも使用できるダンジョンだ。しかし、尋常じゃないくらい強いモンスターばっかり出現する。しかもこのダンジョンの特性で、ドロップ率-30%が侵入者全員に自動付与される。ダンジョンから脱出すれば解除されるが、これのせいで頑張って強力な深夜種を倒しても全然金になるドロップ品が出ないので、次第に誰も来なくなった。
そんな王都のハズレダンジョンにて、
「大アルカナ:皇帝、発動」
レベルアップにより、進化したアルカナカードは全て大アルカナと言う名前になっていた。今まではアルカナカードの力の一部しか使えなかった、大アルカナに進化したことにより、それぞれのカードの効果を全て発動できるようになった。例えば皇帝のペルソナカードなら、ドロップ率100%固定に加えて、全スキルが絶対発動し、絶対必中になる。つまり、全ての成功率が100%に固定される。正直言ってぶっ壊れスキルだよな。でも実装されたし、取得しちゃいけないとはなっていたし。また、副次効果として、領地運営の心得や民衆を率いるのが上手くなるらしい。要するに皇帝らしくなれるって事なのかな?今のところ使う予定もないので気にしない。
「夜天鎌:鎌形態、<特殊戦闘術:命を狩るもの>発動」
夜天鎌を鎌形態に戻し、両手でしっかりと鎌を握る。そうして、目を閉じてゆっくりとスキルに体を任せる。さぁ、今日も荒稼ぎの時間だ。
***
再び目を開けるころには、どうやらかなり深層までたどり着いた事に気づいた。ここは...?急いで確認してみると、六十六階層目だった。ここが最深のようで、目の前には見たこともないようなボス部屋があった。恐らくここにはダンジョンコアを守る、凶悪なコア・ガーディアンがいるのだろう。だからスキルもいったん中止になったのだろう。自動戦闘機能が備わっているとは言え、それで勝手に攻め込んで勝手に死んだら元も子もない。俺は意を決してその大きなドアを開けた。
結果から言うと、正直少し拍子抜けだった。中にいたのはナイト・サイクロプス。いわゆる深夜種のサイクロプスだ。こいつはサイクロプスだけど、顔にある大きな目が<暗視>と<未来視>ができるようになっており、さらに他の感覚器官も全て進化しており、なおかつ高い機動力と筋力があるのだが、<即死>系のスキルに対しての耐性がほぼ0のため、首をはねて即死した。ここは王都で一番難易度が高いダンジョンだと聞いたが、今思えば大したこともなかったのかもしれない。という事で、ボス部屋を抜け、俺はダンジョン・コアのある、いわゆる管理人部屋についた。
***
「誰もいない??」
ダンジョンはダンジョンマスターというダンジョンを生み出し、運営するモンスターがいないと直ぐに崩壊を起こすと聞いたが、どうやらここはそうではないようだ。という事は、まだマスターがダンジョンのどこかにいると言う事かな?俺は別にここのコアを壊す気はないので、なんか目の前に置いてある宝箱を開けてみた。中には...スキルオーブ<長距離転移>が入っていた。おお、これはあれだな、一度言った事のある街に、自動で飛べるやつだ。これがあれば飛行船や馬車要らずになる。ありがたい。早速手に取って、取得する。そして試しに王都の宿屋と念じてみると、ふわっとした後に、転移に成功した。これは便利だ。将来王都に戻ってくるかは分からないが、いざって時に戻ってこれるようになるのはありがたい。外を見てみると、もう夜だったので、キリもいいから、ここらへんでログアウトする事にした。