王都と王都のダンジョンの話
とりあえず王都の近くのモンスターの強さを見るために、ギルド嬢に教えてもらった王都近くのダンジョンに来ていた。
王都ダンジョン群その一、炎のダンジョン。炎の魔素が充満し、数多くの炎系のモンスターが存在するダンジョンだ。王都ダンジョン群の中では初心者から上級者向けまで人気が高いダンジョンだ。そんなダンジョンに俺は一人で来ている。
第一階層から第十階層までは初心者推奨で十から五十までは中級者、それ以上は上級者向けである。俺が今いるのは24階。
フレイムハウンドを魔法で倒す練習をしている。王都で雑貨屋に寄った際に、偶然初級の氷魔法のスクロールが売っていた。その場で即座に購入して使用した。別に初級氷魔法のアイスボールとかそう言うのが欲しいわけではないが、初級魔法の一つであるアイスベールが欲しかった。この魔法は使用者の体を冷気で包む魔法で、このダンジョンに丁度いい魔法だ。正直アルカナカードを使うまでもないと思っているので、魔石以外一才ドロップ品が出ないのは寂しいが、魔石だけでも普通に売れるので、特に問題ない。ちなみに今着ている装備はB級の普通の装備だ。まあ、要するにBランク相当の、リザードマンシリーズだ。王都の防具やで売っていたので買った。着心地は、うーん普通かな。まだ来たばかりで少しリザードマンの革が硬い。なので夜天鎌(剣モード)を手に持ちながら全身ぶんぶん振り回しながら、てくてく歩いていた。
***
場所は進んで三十階
ここにはボスがいるみたいで、いざ入ってみると、イグナイトウルフとその他の取り巻きだけだった。うーん、正直あまり手応えが無い。ないのでこれも適当に夜天鎌で倒して次の階層にい行くことにした。
三十三階層を超えてから、アイスベールを纏っているのに、少しサウナのように蒸し暑と感じてきた。やっぱり初級魔法では限界があるようで、いくら自動回復があるとはいえ、やはりアイスベールの維持にとんでもないMPを消費する。称号のせいなのかそれとも虚弱体質のせいか。体質の方だわ。なので思い切って解除する事にした。うわっ、アイスベールのおかげで気がつかなかったけど、ここのダンジョン熱気がすごい。サウナみたいだ。
「あっつ」
そうして暑いのを我慢して、三十五階層まで行ったら帰ろうと思っていた矢先、道端に倒れている女性を見つけた。<鑑定>スキル使ってみると熱中症にかかっていた。見たところプレイヤーでもない、ただの現地民のようなので、急いで応急処置をする。アイスベールを倒れた女性にかけ、アイスキューブをタオルで包み、首元や脇、そして膝の裏に当てた。
数分後、無事に目を覚ましたようで、物凄い勢いで御礼を言われた。どうやら王都の学園区にある、王立学園の先生のようで、どうやら周りの先生はみんなAランクとかの冒険者だったり、王都ダンジョンを五十階層までクリアしている上級者だったりで、少し生徒たちに他の先生に比べられて気後れをしているようだ。別に気にしなくていいのにな。他の先生がどうかは知らないけど、少なくともこの先生は単独でここ、三十四階層まで到達している。ダンジョンは基本的に四人で攻略するものなので、単独でここまで来られるだけの実力があるのに、それを認識していないのか、はたまた。
「私はエイラ、王立学園の魔法講師をしています。改めて、助けていただきありがとうございます」
「俺はシエルボ、よろしくです」
「あの!急なんですけど!良かったら私と五十階層までいってくれませんか!」
「えぇ...」
エイラは俺が使っているアイスベールのおかげで恐らくここでも快適だろうが、俺は今もサウナ状態だ。なんとかアイスキューブを体の近くで生成しているので、まだマシだが、正直不快感はぬぐえない。
「うーん...」
「今度ご飯奢りますので!」
「よし乗った」
「えっ...」
龍の晩餐で頼みたいコースが前々からあったのだ。しかし二人いないと注文できないので、それに付き合ってもらおう。
「よし、行くぞ、五十階層だな」
エイラのレベルは43、正直少し低いので、俺からパーティ申請をしておく。俺の情報はフレンド以外非公開にしているので、恐らく俺の名前とレベルしか見えないだろう。
「えっ!レベル90!?」
「えっ!?」
「いやなんでシエルボさんも」
正直レベルなんていちいち確認していない。レベリングしているわけでもないし、なんで上がったんだろ?多分階層ボスを討伐した時の経験値獲得量がパーセントで貰えるのかな?だから上級者でも人気があるんだな。納得した。
「まあいい!行こう!」
エイラを手を引いて、爆速で攻略していく。やり方は簡単、以前のナイトダンジョンで手に入れた失われた機械生命で作った自動光線照射機械、通称レーザーバーズを展開した。小さな虫に似た機械を俺とエイラの前後左右に展開し、出てくる敵を、設定:冷凍光線で次々倒していく。エイラは不思議そうになぜかモンスターが次々凍っていく様に驚いていたが、俺は気にせずにずんずんと進んでいく。四十階層のボスはイグナイトタートル、火山のような甲羅を持ち、甲羅は全ての氷属性と水属性の攻撃を無効化する厄介なモンスターだ。
「潜り込めバーズ」
しかし、イグナイトタートルの体中の隙間にレーザーバーズを入れてしまえば、
「照射!」
一瞬でイグナイトタートルは死ぬ。ふはははは!強い!これならとっととこんなあっついサウナから脱出できるぞ。
***
そして五十階層。
ボスの名前は確かマグマ・ワームズ
通り過ぎた場所を全てマグマに帰る凶悪なモンスターだ。しかも毎回複数で来る上に、数も1体からひどい時は20体以上になる場合がある。
「エイラ先生、ここからは自力で頑張って!」
「えぇ!?」
「暑くて動けない…」
ついに限界を迎えた。マグマワームが既にボス部屋の地面を走ったみたいで、三分の一がマグマになっていた。おかげでもう暑すぎて俺も熱中症のバッドステータスになりそうだ。
「先生!バフをかけたので頑張ってください!」
そう言い残すと俺はリザードマンの装備を全部脱いで薄手のシャツに短パンに着替えた。あー、あとは傍観するか。エイラ先生もレベル上がったし、パーティ入れたおかげで、バフもかけたし、なんか覚悟決まったみたいだし、いけるやろ
***
私、エイラ、シエルボさんの気持ち伝わりました!ここまで全部モンスターを倒してくれたのは私にこのボス戦をさせるため、私のMPを温存するためですね!先ほどからマグママップなのに凄く涼しいし、バフもかかって今ならいけそうな気がします!パーティに入れてくれて、レベルも78まで上がりました!今なら私が考えていたスキル構成を取得できます。生涯かかってもレベル50を越えられないと思っていましたが、今では学園長を除く他のその先生よりレベルが高くなっています!
ありがとうシエルボさん!私、いけます!
「全ステータスポイントを魔力に、スキルポイントを消費、<魔法操作:氷>、<魔力増幅+++>、<魔法威力向上+++>、<魔法特化:氷>、<全消費MP減少+++>を取得」
そう、私と相性が良かったのは氷魔法。幼少期から最初に覚えた魔法も水魔法ではなく氷魔法、家系もあると思うけど、私は氷が好きだった。キラキラとした冷たい透明なキューブは私の大好きな輝きだった。
(一定以上の特定スキルと魔力量、魔法経験値の条件を満たしました。新たな職業が取得できます)
「取得します」
(承認、職業を魔術師:氷から魔導師:氷に昇格します。それにより、付随する魔法スキルも進化、<魔法操作:氷>を<魔導:氷>へ、<魔力増幅+++>を<魔力操作>へ、<魔法威力向上+++>を<魔法威力操作>へ、<魔法特化:氷>を<魔導の創造者:氷>へ、<全消費MP減少+++>を<MP操作>へ。ようこそ世界へ、氷の魔導師様)
力が漲る。気づくと自分の足元から冷気が出ていた。ピキピキと近くの地面に氷が張っていた。
(魔導師の祝福を付与、エラー、異常発見、警報、死将軍の祝福を確認、祝福を取り除かないと予期せぬ効果が現れます。続けますか?)
(はい)
(承諾を確認、死将軍の祝福を使用、称号:死将軍の加護を取得、スキル<絶死零度>を取得、種族、人間からエルダー・ヒューマノイドに進化。全ステータスを向上、称号:超越人を獲得、全ステータスを向上、条件達成、神の祝福を付与、スキル<存在変化:氷結令嬢>を獲得。称号:氷結令嬢を獲得、全氷スキルの威力上昇、氷スキルの消費魔力減少。ようこそ氷結令嬢・エイラ様)
神の祝福とシエルボさんのおかげで、生まれ変わったような気分です。新たなスキルなのに、わかる。氷、氷結、絶対零度、全て理解しました。これが私、これが本来の私、感謝しますシエルボさん。ありがとうの意をこめてシエルボさんの方にウィンクしましたが、物凄い勢て首と手を横に振っている。よくわからないけど、このまま行きます!
「変化!氷結令嬢!」
そう叫ぶと、私の周りに冷気が集まる。いや、私が生み出した冷気が周りを埋め尽くしていく。そうして、変化を終えた。どうやら身長が少し伸びたらしく、服も蒼白いドレスになっていた。力が漲る。今なら、いける。
「スキル発動、<絶死零度>」
そういうと、私は手の平に生み出した冷気をふぅ、と軽くマグマワームの方に向かって優しく吹いた。
すると。私の前方にいた全ての存在が凍死した。
地上にいたマグマワームも、地下にいたマグマワームも、壁も床も全て、氷になった。私は凍りついたマグマワームに近づく。純度の高い氷のせいか、私の顔が反射して見える。
長く床まで垂れた白い髪に、白い肌、そして目は海のような深い蒼色になっていた。ひとしきり自分の顔に満足すると、私はコンと目の前の凍ったマグマワームを人差し指で叩いた。すると、まるで粉雪のように一瞬で砕け散った。
私は一人でマグマワームを倒せた事が嬉しくて、変化を解いてシエルボさんの方に向かったら、シエルボさんが絶句していた。