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7ラウンド目・遂に完成! 怒りのマッスル☆おしおき!(ここまでのあらすじ有り)

遂に必殺技が登場しますが、具体的な名前は……NGですからね?



 (ここまでのあらすじ)


 大伝寺 郁美(三十路手前)はインディース女子プロレスラー団体所属の看板悪役レスラーだったが、無理な興行スケジュールが祟り不慮の事故で死んでしまう。


 で、何だかんだあって異世界で若干十五歳のミライク(金髪ショートヘアー)になり、許嫁のヤレンナー・ドェイム君を日々筋トレのダンベル代わりに振り回したりの理想的マッスルニート生活を送っていたが、庭先に置いてあった防犯用の巨大ロボット(機甲猟兵ゲパンツァード・イェーガー)を猛特訓の末に操れるようになる。


 「わー! 素敵なロボットが動かせるようになったよ! ありがとうマッスルの女神様!!」


 日々の鍛練を見守ってくれた神々に感謝しつつ、清く正しいマッスルニートを目指し新たなトレーニングを開始する郁美(ミライク)だったが、突如現れたドリルヘアー(貧乳)から「お前のフィアンセは預かった! 無傷で取り返したかったら私を倒すんだ!」と宣告されて、戦いを望まぬ平和主義者な郁美は苦渋の選択の末、ヤレンナー奪還の為の血戦を挑む。


 戦いの前にヤレンナーは負傷してしまうが、郁美は彼の仇を討つ為にマッスルパワーを開放して【機甲少女アダマン☆たいん】に変身。ドリルヘアー(貧乳)を迎え撃つ為にわざと相手の攻撃を受けたが、引き換えに窮地へと追い込まれる。


 だがしかし、究極のマッスルボディーの郁美は新たなマッスルパワーを獲得、遂に仇敵のドリルヘアーを撃破。献身的に看病したお陰でヤレンナーも快方に向かうと判り、郁美は涙を溢した。


 (※一部に本編とは違う内容が含まれています)





 「……何さっきからブツブツ言ってんのよ?」


 ヤンデルナは宙に浮いたまま、眼下のミライクこと郁美が呟く言葉にツッコミを入れますが、本人は相変わらず気にしてません。


 「……いや、違うなぁ……折角だから、私があの【しゃくれ丸】に乗り込んで闘うって方がエモくない?」




 ……はぁ?


 あのですね、こっちに向かって妙な筋書きを送り込むのは止めてくれませんか? 仕事の邪魔すると元の世界に叩き戻しますからね。





 「……さ、さてと! これで五分と五分ね! まだまだ試合は始まったばかりよ!!」


 ……再びやる気と空気を読むゆとりを取り戻したミライクは、しっかりとファイティングポーズで構え、ヤンデルナの方を……って、ちょっとちょっと、【しゃくれ丸】って……何?


 「え~っ? あのロボット、アゴしゃくれてない? だから【しゃくれ丸】って名前を私が付けたんだけど」


 ……マジで? あの【機甲猟兵(ゲパンツァード・イェーガー)】の名前が【しゃくれ丸】!? うわっ、だっさ!!


 「さっきから色々言ってるのはそっちの方でしょ? 何か例の悪魔みたいなのがフワフワしてるよーに見えるから、気が散ってしょーがないんだけど?」


 あ、やっぱり見えてたのね。……あなたをここに連れてきたアッチと私は役割が全然違うから、一緒にしないでくれません? 私は【記録の神】なんだから職務を全うしているだけです。さ、判ったら試合に戻りなさい。相手のヤンデルナさんがキョトーンってしてるわよ?


 「へー、そーだったんだ。じゃ、見えてない事にするから静かに見ててくださいね、【ロリペタ貧女(ひんにょ)】さん!」


 おいコラ今すぐぶっ殺されてぇのか? やるぞオラてめぇふざけんなよマジでやっかんなっ、あっ? 何を~あーれーぇ~!?


 【……お前も出過ぎなんだよ、落ち着いて観戦してりゃいーのによ……さ、行くぞさっさと歩け】


 ……折角、最前列で見てたのにぃ……はいはい、判りましたよ。じゃあ、大人しく離れて観戦してますから、貴女も離れてくださいよ?





 ……はい。同僚の【導きの神】に引き摺られて、私は元の観戦ポイントまで戻されちゃいました。まあ、ここからでも良く見えるんですが、雰囲気って大事じゃないですか? そう言う潤いが有った方が仕事って捗りますからね。




 ……えーっと、ミライクこと郁美は、見覚えのある悪魔みたいな奴に()()()()()()()()()()()な私こと【記録の神】が連れ去られていくのを見送った後、再びヤンデルナとの戦いを再開しました。


 しかし、相手は今も高い空の上。何かのきっかけが無い限り、下まで降りてきそうに有りません。


 「う~ん、さっきは驚いたけど、結局私の方が有利なのは変わり無いのよね……じゃ、回復したら、また魔導をぶっつければ勝てそうだわ!」


 ヤンデルナはそう言うと、早く回復しようとリラックス出来る楽な姿勢になります。でも、その格好は何もない場所にゴロンと寝転がっている様にしか見えません。


 「くっそぉ~、手が届けば引き摺り降ろしてやるのにぃ……」


 ギリギリと歯噛みしながら、ミライクは悔しそうに拳を振り上げて、振り下ろしま……


 「いてっ!? ……ん、なんじゃこりゃ?」


 ミライクの拳が何かに当たり、ゴツンと宙に留まります。どうやらヤンデルナが作り出した不可視の足場みたいな物が、まだ手の届く場所に留まっているようです。


 「ははぁ~ん、これが【空に浮かぶカラクリ】って訳ね……」


 ミライクこと郁美は納得し、懸垂の要領でよじ登ります。すると案外しっかりと浮いていて、自分が載ってもびくとも動く気配は無さそうです。まあ、傍目から見れば、何にも無い空間をわさわさと手で探り、よっこらしょと登っていくんですが。


  「よっ、ほっ、はっ……さーて、ここまで来れば……」


 軽やかに掛け声を出しながら、ミライクは遂にヤンデルナの身体に触れられそうな場所まで近付きました。でもまだ寝入っている彼女は気付く様子も有りません。




 「……いくわよっ!! 必殺【ハイスパート・ルチャ※①】!!」


 威勢の良い掛け声と共にジャンプしたミライクは、射程距離に捉えたヤンデルナの頭を両手を広げて包み込むようにぐわしっ、と掴むとその不安定かつ狭い足場をものともせず、ギリギリと鷲掴み(アイアンクロー)!!


 「……ふみぃ? ……ぃ、い、痛い痛い痛い痛いっ!?」


 まあ、そうなりますね……頭をガッチリと掴まれたまま、ヤンデルナさんは目覚めた原因を探ろうと頭をペタペタと触ってましたが、苦悶の表情で顔面を覆うミライクの両手を掴みながら絶叫してます。そりゃそーですよ、目覚めた理由がハンサム王子の優しい口づけじゃなくて、筋トレ中毒女の両手合わせて百二十キロ分の握力から繰り出す鉄の爪(アイアンクロー)なんですから。耳から脳ミソ出ちゃいますって……。



 しかし、郁美の追撃の魔の手は止まりません。その体勢からヤンデルナさんを抱き抱えたかと思うと、スラッとした白い脚をガッチリと両脇に抱え、グルグルグルと我が身もろとも大回転(ジャイアントスイング)し始めます!!


 「……ふわああはああはあああぁぁあああーっ!?」


 目覚めたヤンデルナが訳も判らないまま叫びますが、ミライクの回転は横から徐々に縦に近付いていきます!


 ……うん、ヤンデルナはスカートだよね?


 もう、突風に煽られた傘がオチョボになった感じです……哀れ、ヤンデルナはおへそも真っ白いパンツも丸出しのまま、顔はスカートで隠されたまま振り回され、勢い良く宙へと投げ飛ばされました。


 「ひぎいいいぃーっ!!」


 ああ、もう悲惨です……叫び声を上げた後はほぼ失神状態のヤンデルナがくるくると回りながら舞い上がり、そして重力に逆らえず落下していく瞬間、


 「うおおおりゃあああぁ~っ!!」


 雄叫びと共に再び飛び出したミライクが、ヤンデルナを空中で掴みます。もう堪忍してやんなさいよ……


 「……食らえっ!! 【怒りのマッスル☆おしおき】ッ!!」


 あー、そうですか、止めませんか……えーっと、うん……ヤンデルナの肩を自分の肩に担いだミライクが、相手の脚をがっしり掴み……やだなぁ、もう……お股全開状態をキープしながら急降下……


 ……どっしいいぃ~んっ!!


 「ぴぎいいいぃ~っ!!!!」


 ……はい、股関節をもっきりと可動範囲外まで開かれたヤンデルナさんに、恥辱の極致な【怒りのマッスル☆おしおき】が決まりました。ミライクこと郁美には同性に対しての情けは無いのでしょうか?


 「……いっち! にぃ! さん!! ぶいいいいぃーッ!!」


 あー、いわゆる完全勝利宣言って奴ですか、そうですね。口からヨダレ垂らして白眼剥いたまんま気絶しているヤンデルナをほったらかしにして、ミライクは掛け声に合わせて拳を突き上げて、最後はVサインしながら両手を高く掲げました。はいはい、勝ちました勝ちました……。





 (※①→ハイスパート・ルチャ。次々と技を畳み掛けるスタイルの名称。徐々に小技から大技へと進行させる日本の予定調和スタイルとは掛け離れ、序盤から一気に大技を連発するが、ある意味空気を察しない人とも言える)



 


 

次回もタイトル未定ですが、よろしくっす!

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[気になる点] もしかして:キン肉バs……いえ、なんでも。。。
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