↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/18

15ラウンド目・ヤレンナー君の桃源郷。

ヤレンナー君、久々に登場ですが元気ですね。



 「ふぬぅおぉっ!?」


 くりくりの脇髪を降ろしたヤンデルナが、野太い声で叫びます。手の平に載せられたのはクルミ位の小さな鉄球でしたが、彼女にとってはかなりの重量なのです。しかし、ミライクの表情は楽しい遊びを共有出来る喜びでキラキラと輝いてます!


 「それじゃあ、握ったままスクワット!!」


 「……何で私がやらなきゃなんないのよっ!?」


 「……ん~、流れ的に?」


 素直に従わなかったヤンデルナでしたが、ミライクこと郁美はぐるっと自分の部屋の様子を見回してから、さらりと言いました。


 「んぅ!! ふう……これは……なかなか、いいなッ!!」


 傍らにはヤンデルナの姉のジレッテーナが、人の頭と同じ位の鉄球を両手で挟むように持ちながら、右に振ってはしゃがみ、立ち上がっては左に振ってと繰り返しながら、何故かニヤニヤしながら筋トレしています。


 (……これはバストアップに効果があるよ?)


 ミライクにそう耳打ちされた瞬間、ジレッテーナの脳内には輝かんばかりに美化された自分(巨乳)が現れて、


 【ありがとう!! 今までの悩みにさようなら出来たわ!!】


 と、部下の男性近衛兵達から(胸さえ有れば完璧なのになぁ)と陰口を叩かれていた過去の自分に手を振っていたのです。つまり、そーゆー訳だったのです。



 (……ジレ姉さんは単純だからなぁ……あんなの、普通に筋肉が付いて土台が嵩(かさ)増しするだけじゃないの?)


 彼女の悩みと妄想なんてお見通しのヤンデルナでしたが、かといって自分も似たようなもの。いや、控え目に見ても既に干からびたミミズのように横たわっているヤレンナー君より、自分の方が若干有るかどうか……かも?


 「わ、判ったわよやればいーんでしょ!」


 若干自棄(やけ)気味になりながら、握り締めた鉄球を掴んだまま、フンッと勢い良くしゃがみ、あひぃ……と小さく呻きながら立ち上がるヤンデルナでしたが、ミライクはとっても嬉しそうです。


 「そーそー、その調子! それじゃあ、私が向かい側に立つから一緒にやろう!!」


 そう言うとミライクは、振り回せば軽く一人は殺せそうな鉄の塊が両側に付いた鉄棒を各々両手に握り、リズミカルに屈伸を始めます。


 勿論、そんな夢のような光景を見逃すヤレンナー君ではありません。


 目と鼻の先に上下する、ミライクの形良い臀部……白の薄い布地越しにうっすらと浮き出る下着の線が……彼のリビドーを余す事無く掻き立てます。


 更に、その向こう側には……ヤンデルナが動きにくい服の袖を腕捲りし、ぷるぷると柔らかそうな二の腕を振るわせながら、息も絶え絶えになりながら、


 「……ひいぃ、あっ……ふうぅ……んんぅ……」


 と、只の屈伸運動にも関わらず、悩ましさギリギリの喘ぎ声を出しながら、ちょっぴり丈の短いスカートから白い脚を露にしているのです。


 (……良かった……トレーニングと聞いて、直ぐに逃げ出さなかった自分を……今日は誉めよう!!)


 そう思いながら、薄目を開けて無表情のまま恍惚状態。まあ、このままで良いそうです。


 と、そんなヤレンナー君でしたが、新(・)た(・)な(・)刺(・)激(・)が彼の視界に現れました!!


 「いやぁー、実に爽快だな!! ミライク君!! 次のトレーニングは有るのかい?」


 そう言いながら彼の頭を跨ぎ越すように、ジレッテーナがミライクに向かって近付いて来たのです。いや、跨ぎ越しながら聞いていたのですが。


 「ん~、そうだなぁ……それじゃあ、次はアレに掴まってぶら下がりながら、脚を持ち上げてみようか?」


 するとミライクは部屋の真ん中に据え付けた鉄棒を指差して、


 「それじゃ、お手本見せるから真似してみて!」


 言いながらサッと頭上の鉄棒に掴まると、軽々と両足を揃えながら振り上げて、ピタリと顔の前で停止させてから、ゆっくりと降ろして見せました。


 「おおっ!? それはまた効きそうだな!! ……よっ、と……」


 ジレッテーナは嬉しそうに微笑みながら隣にぶら下がり、同じように脚を振り上げて、ピタリと停止させた後、ゆっくりと同じように降ろします。


 (おおおおぉっ!! す、すごい……!!)


 ……うん、一人前の立派な変態だな。


 ヤレンナー君の視界の先には、鉄棒にぶら下がった大小二人の乙女が、形の良い臀部を強調するように見せつけながら、各々の肉体を鍛え続けているのが全て丸見えです。


 こうして三人の甘酸っぱい汗の匂い、直に肌へ触れているかのような湿気を帯びた部屋の熱気、そして薄い布地越しに浮かび上がる異性特有の曲線美の数々を目の当たりにしながら……ヤレンナー君は、夢の桃源郷へと誘(いざな)われていきました。




 「……うん。軽い脱水症状と、熱中症かな?」


 やっと彼の異常に気付いたミライクこと郁美は、冷静に脈を取りながら状態を確認し、あと一歩で本当の桃源郷に行っちゃいそうだったヤレンナー君の頭に、水で濡らして絞ったタオルを載せます。しかし、彼の表情はとても穏やかで、楽しい夢を見ているように微笑んでいました。



 ま、その時既に意識はなかったんですけどね……早く気付きなさいっての。





ミライク→毎度お馴染みの白い部屋着姿。ヤンデルナ→少し厚手な布地の紫色のワンピース風魔導士服。ジレッテーナ→開襟シャツに膝下丈のぴったりとしたパンツスタイル。履いていたブーツは脱いで素足。


……気分的には、女子更衣室か何処かに居るような感じでしょうかね? ヤレンナー君に合掌(生きてるって)。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。