[異伝]羽月四方の眠り姫
四方の出会い(1)
~画家と精神科医~
俺は様々な分野で逃眠病を治そうとしている人物を訪れている。
そして、最終目的といえる人物――画家と精神科医――にやっと会えるのだ。
その二人は、逃眠病の感染源と言われている[眠り姫]親友で、現在、自他共に認める逃眠病の最高権威とも呼ばれている二人だった。
「はじめまして、羽月四方さん。それとも、狂人と呼んだほうがよろしいかしら?」
精神科医はいきなり突っかかってきた。
「どちらでも構いませんよ。肩書きなんて関係ありません。逃眠病を撲滅できるのならば何と呼ばれても構いません」
負けずに対抗する。
すると画家は愉快そうに、
「はっはっは、美月、お前の負けだな」
「ええ、いきなりの非礼申し訳ありません。ただ、あなたがどれほど本気か試しただけです」
気を悪くしていないと言えば嘘になるが、今までの経歴――人体実験のような治療――からなら試したくなるのも無理はない。
「いえ、お気になさらずに」
「で、今日来た目的はなんなんだい?」
「はい、[眠り姫]をご尊顔したく参りました。また、私の考える逃眠病対策のプランを見てもらおうかと思います」
画家は困った顔をしながら、
「悪い、[眠り姫]に会わすことだけは出来ない。これは世界のトップシークレットなんだ。だから俺の描いた絵だけじゃ駄目か?」
正直言って、[眠り姫]に会いたいというのは社交辞令だったから構わなかった。
「ええ、構いません」
画家はそういって後ろにあったキャンパスを見せた。
絶句だった。
「美しい」
姉さんの事が無ければ絶対にこの女性のために逃眠病と戦っただろう。そう思えるほどの美しさだった。
「おう、さんきゅな」
画家は満足そうに笑った。
「では、今度はこれを見てもらえますか?」
俺はレポート用紙を見せた。
「あんた、これって?」
「はい、俺は逃眠病対策として新人類を作ろうかと思っています。まさしく狂人の領域でしょう。そして、これはそれに先駆けとして計画している、偽体[葉子]です」
「葉子?」
「羽月グループの設立者の名前を借りている。最初の新人類と、羽月グループの設立をかけてその名前にしました」
精神科医は納得の行かない顔で、
「これが出来れば、確かに逃眠病は治るわね。でも、世論がゆるさないわ」
といった。確かにそうだろう。それくらい俺でもわかる。
「ええ、理解しています。でも、これで撲滅するならば、俺はやります」
俺の言葉に今度は画家が口を挟む。
「じゃ、俺達とお前の話し合いは決裂だな。建前上だけ」
「え?」「なに?」
精神科医と俺は同時に驚いた
「本当にこれで治るなら良いじゃないか。俺たちも出来るだけ情報は渡す。そのかわり、世間からヒドイ扱いを受けるのはお前だけだ」
画家は意外と狡猾だった。
「はい、良いでしょう。情報が貰えるなら何も問題はないです」
俺は、この成果に大満足だった。この案は普通に反対されると思っていた。無謀と言われると思っていた。
けど、二人は信じてくれた。時代が違うのなら、俺も混じって[眠り姫]を起こしたいと言う衝動に駆られていた。
俺は二人と握手をし、退室した。
「私たちと彼は、協力はできても、決して相容れないわね」
「ああ。あいつは起こしたい人がいないと思うな。多分、逃眠病が原因で大事な誰かを失った。だから逃眠病を怨んでいる。世界を回ったときにあんな面をした奴は大抵そうだった」
「でも、あなたが協力を許可するのは珍しいわね」
「あいつは、狂っていても、治そうとする気のほうが強い。俺が今まであった奴は決してデータなんか見せなかった。あいつは、逃民病を撲滅するためにデータを見せた。自分が不利になったり、責められるのを承知でな。そんな奴を信じないのは男が廃る」
「フフ、だからあなたと組むのは楽しいわ」
「俺たちが眠る前に治したいな」
「そうね」
そうして、俺は研究室に戻った。
俺の目的は逃眠病に耐えられる偽体を作ること。今までの結果で起こせないなら、眠らなければいい。
それが、俺の考え付いた結論だった。
[葉子]作っているうちに、蛍に似てきたのは俺の弱さからかと思い、自分を叱咤した。
四方の出会い(2)
~ケイ~
その出会いは偶然なのか、必然なのか俺にはわからなかった。
唯一つ分かったのは、神様の気まぐれだった。
俺は親の遺産、その後の自分の必要最低限以外のお金を使い、逃眠病の影響により両親がいなくなってしまった子供たち――通称、逃眠孤児――を保護している孤児院に援助金を出している。
その子もそんな孤児院で暮らしている子だった。
俺はその日、久しぶりの買出しを終え、公園で一服していた。何にもない山に暮らしているから、月に何度かは買い物に町に下りてこなければならない。
気のせいかもしれないが、段々人の数が減っている気がする。特に、現実の厳しさを知ってしまった大人たちの方が減っている気がする。どこかでは、青年、子供たちが自警団を組んだり、野盗を組んだりしていると言う話も聞く。
つまり、逃眠病の進行は収まらず、強大になっていくばかりだ。
そんな、もの思いにふけっていると、
「お兄さん、ここにタバコポイ捨てしないでね」
声のしたほうを見ると、
「蛍?」
幼い頃の蛍によく似た少女だった。生まれ変わっているなら大体このくらいの年齢だろう。
「ううん、アタシはケイっていうんだよ。蛍って漢字で蛍っていうの。よくわかったね。お兄さんエスパー?」
「いや、ケイちゃんが俺の知り合いに似てたからもしかしたらと思ってね」
ケイちゃんは少し思案したような顔つきで、
「もしかして、妹とか娘?」
そうか、今のケイちゃんの年齢から想像するとそう感じるか。
「内緒。ケイちゃんはこんなところにいて言いのかい?親が心配しないか?」
「アタシね、パパもママも知らないの。物心がついたときから孤児院にいたから」
聞くと、ケイちゃんの両親は逃眠病に罹っていたらしく、生まれてすぐに孤児院に預けられたらしい。
「そうだったんだ。じゃ、孤児院まで送っていこう」
「いいの?」
「こっからだとその地名はかなり遠いだろ?もしかして道に迷ったんじゃないかと思ってね」
「う」
図星らしかった。こんな変なボケ具合が実に蛍に似ていた。
ケイちゃんを車に乗せ、孤児院に着いた。孤児院の責任者らしい婦人に少し寄っていって下さいといわれたので、お邪魔する。
「本日はケイがご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした」
「いえ、色々と楽しいお話をしてくれて、終始笑顔でしたよ」
そうやって、少し雑談をする。
そして、俺は自分の口からとんでもない事を言い出した。
「実は、折り入ってお願いしたいことがあるのですが」
「何でしょうか?」
「ケイちゃんを養子にもらえないでしょうか?」
婦人は唖然とした。幼女愛好者と思われたかもしれない。
「なぜ…ですか?」
「ケイちゃんは俺の…亡くなった姉に似てるんです。姉は俺の所為で事故に巻き込まれました。だから、せめて、姉に似ているケイちゃんを幸せにしたいんです。それに、姉が生まれ変わっているならちょうど、あのくらいの年だと思います」
婦人はかなり、考え込みながら、
「あの子は…ケイですよ。あなたの姉とは何も関係ありません。姉への罪滅ぼしで育てられるな――」
「先生、ケイが、ケイが」
この孤児院の年長者らしき人が突然部屋に割り込んできた。
「まさか…?」
婦人もかなり慌てている。
「どうしたんですか?」
「い…いえ、あなたには関係ありません」
この慌てようは、病気か?
「これでもですか?」
俺は医師免許を取り出した。婦人は驚いたように、
「お医者様だったんですか?」
「ええ、専門は逃眠病ですが、調べる過程でほとんどの分野は分かります」
婦人は一息ついて、
「いえ、ケイは逃眠病なんです。診てください」
なんでも、ケイちゃんは俺でもまだ二人くらいしか診ていない過眠症と逃眠病の合併症らしく、いきなり数日寝てしまうことがあるそうだ。つまり、過眠症は重度だが、逃眠病のほうはまだ軽度だろう。
俺は卑怯だとわかっていてこう告げた。
「彼女を預からせてください。我が家で治療します」
婦人は反対するだろう。そう思っていたが、
「…一つだけ教えてください。本当に、姉の代わりではないのですか?」
当然だった。姉の代わりだけでいいなら俺の偽体技術があれば十二分に事が足りる。
「ええ。ケイちゃんは姉が死んでから一度も出せなかった笑顔を、会っていきなり引き出してくれたんだ。十年ぶりでしたよ、笑顔が出るなんて。そして、笑顔で心が洗われるなんて」
婦人は納得した顔をして、
「ケイの事をお願いします」
と、頭を下げた。
ケイちゃんの逃眠病を無くす。
それに、余生をかけてもいいだろう。
彼女が俺の起こすべき[眠り姫]だ。
・四方と葉子とケイ
~狂人と眠らず姫と眠り姫~
ケイを引き取ってからもう、十年近い月日が流れた。
俺は未だにケイを治すことが出来ずに――いや、さらに悪化している。最初の頃は普通に暮らしている時間が長かったのに、次第に寝てしまう時間が多くなり、段々と自分の内側に篭り、俺に怯えるようになっていった。多分、夢の中では俺が存在しておらず、起きるたびに居る見知らぬ男が怖いのだろう。
もう何年もケイと山を下るという事はなくなっていった。一つはケイが怯えるから。もう一つはケイが眠りについてから、四年以上経ったからだ。生き抜くためには買いだしに行かないといけないから、月に数度、俺は寝ているケイを残し、町に買い物に行く。もちろん、この家の防犯設備は大丈夫だし、こんなところに来る物好きもいないだろう。
買出しを済ませ、自宅に戻ると違和感があった。
「鍵、開いてる」
いくら俺でも、そこまでずぼらじゃないし、出るときはちゃんと確認した。
俺は急いでケイの寝室に向かう。
「ケイ」
ケイは何も無かったかのようにベッドで寝ていて、衣類の乱れも傷も何も無かった。安心したが、誰かが進入したのは確かだった。
「まさか」
今度は[葉子]がいる部屋に行ったが、
「い…ない」
[葉子]がいなかった。まだ、何もダウンロードしていない状態では動くはずが無い。ということは、盗まれた?誰に?
急いで[葉子]を探しに外へ向かった。
ドアの外には俺ともう一人、女性用の靴――[葉子]に履かせていたもの――の足跡しかなかった。
「どういうことだ?」
[葉子]が動いている事なんてありえないことだ。誰かが葉子に頭脳をダウンロードしたなら分かるけど、外には足跡が一つ分。こんなにわけが分からなくなる事なんて久しぶりだった。
少し歩くと、一人の女性が居た。
[葉子]だ。
俺は[葉子]に向かってこう言った。
「おい、お前は誰だ?」
[葉子]はこう言った。
「初めまして…でいいかしら、お父様」
蛍によく似た姿、声。俺は身震いした。それは恐怖なのか、罪悪感なのか分からなかった。
「私は羽月 葉子です。いえ、ケイと言ったほうがよろしいでしょうか?」
目の前の[葉子]はちゃんとした一つの人格を持った人間だった。
「な…どういうことだ」
混乱を続ける俺に[葉子]はさらに追い討ちをかける。
「お父様、私の全てを話します。今まで見てきたこと、体験してきた事を。けど、勘違いしないでください。私は、あなたを恨んではいません。それだけは、勘違いしないでください」
葉子の話の内容はこうだ。
ケイは俺に虐待され心を閉じたが、俺が罪を認め謝りケイを跡取りとして育てた。
そして、ケイは自分の過去と決別するために、葉子と名乗り世界を旅した。
その後、朦朧とする意識の中、最後の賭けとして自分の作った小型時空移動装置を使い、時空を越え、逃眠病が現れる十数年前まで戻り、逃眠病を治すために色々と暗躍したそうだ。
その世界では、俺と蛍を引き離し、代わりに[眠り姫]と出会わせた。
そして、逃眠病を治す算段がついたとき、自分の役目の終わりだと決め、また、身投げした。
が、その時にもう壊れていた小型時空移動装置が発動し、記憶などを電気信号変えたモノ――つまり魂――だけこの時代に来て、[葉子]に乗り移ったそうだ。
「なぁ、一つ聞いていいか?」
俺にはどうしても腑に落ちない部分があった。
「はい」
「俺がケイ…お前に虐待や放置をするはずが無いと思うんだが」
「え?でも、私は確かに」
「それに、ケイは逃眠病患者だぞ。ヒドイ言い方かもしれないが、虐待が出来るわけが無いんだ」
「え…」
その一言は予想外だったのだろう。葉子は酷く慌てた。
「私…が逃眠病に罹って…いた?」
ちょっとまて、もしかしたら。
「もしかしたら、ケイの逃眠病もイレギュラーなのかもしれない。精神病からの観点で見ると、本来逃眠病は夢に逃げる病気だ。けれど、もし、過眠症で無理やり寝てしまってそのまま寝てしまえば、もしかしたら、嫌な夢の中に取り残されるかもしれない。そう考えればケイが虐待を受けていた記憶って言うのは夢の記憶なんだ。あと、もう一つは、嫌な言い方だけど、そんな、虐待を受けている精神状態が逃眠病に罹らないのはおかしい。それこそ、現実世界から逃げたくなるんじゃないか?」
葉子は目に涙を浮かべながら、
「あ…あ…、そんな…私…ヒド…イ…嘘教えて…しまった」
俺は、葉子を抱きしめながら、
「いいんだ、気にするな。子供は親に迷惑かけても、甘えてもいいものなんだ。な?」
と言い、葉子は暫く泣いていた。
「すいません、もう大丈夫です」
「そうか」
葉子は俺から数歩離れ、言いづらそうに訊ねてきた。
「ということは、お父様が私の記憶を[葉子]にダウンロードした本当の理由ってやっぱり…?」
記憶違いからか、真実を知りたいのだろう。
けど、さっきの話でもう真実は予想できているはずだ。
「ああ、ついて来くれば分かる」
葉子をケイが寝ている病室兼研究室に通し、俺は資料とケイの姿を見せた。
「や…っぱり。筋肉と内臓の衰弱化が原因ですか」
「ああ、これでは、普通の暮らしを始めるのに数年かかるだろう。特に、子供の頃から罹っていた所為かケイの体は俺が見た中でも極端に酷い。このままの場合、最悪衰弱死もありえる。だから、違う俺は、ケイを[葉子]にダウンロードしたんだろう。俺もそうしようかと思案していたところだ。やっぱり、死ぬよりかはいいと思う」
「そう…ですよね。じゃあ、最後に私の賭けにのってくれませんか?」
「賭け?」
「はい。私の作った小型時空移動装置は多分往復できるくらいの力は残ってると思います。だから、そのケイを私が道を残してきた過去へ連れて行き、起こしてみませんか?」
確かに賭けだった。けれど、ここは行くしかない。確かに、偽体を使えば寝なくはなる。けれど、寝た人間を起こす事は誰も出来ていないのだ。
つまり、今目の前にいる葉子は、その賭けにのった未来の俺が過去へ行き、起こしてもらったケイで間違いないだろう。
なんだか、ややこしいな。
「いいぜ、のってやる」
「ありがとうございます。では、私の記憶などはそこのノートパソコンにダウンロードしてください。私も一緒に過去に行きます。あ、あと、もう一つお願いなんですが、この[葉子]にケイの髪をつけてくれませんか?」
「なんでだ?」
「たった一つだけでも、本当の自分を持っていたいんです」
確かに、全て偽者の体なんていうのは嫌だろう。
「分かった。それぐらい任せろ」
「ありがとうございます」
それが、葉子の最後の笑顔だった。
それから、俺は葉子をノートパソコンにダウンロードし、ケイの髪を[葉子]に移植し、そして、ケイの意識を[葉子]にダウンロードした。これは、人の道を外れる所業だろう。いくら、同じ体験をした[葉子]が恨んでないといっても、罪悪感はものすごいものだ。
「やっぱり、ケイの意識を[葉子]にダウンロードしても起きないな」
「ええ」
俺は、逃眠病を治すことが出来なかった事実に悔しさを覚えた。
「では、行きましょう。私が消えたあの日から十年くらい後の世界へ」
気付いたらどこかの部屋にいた。俺は窓辺により階下を見下ろした。
「ここが、この世界の2018年…か」
俺が知っている時代より活気があり、『普通』という単語がぴったりと当てはまる世界だった。
「よかったわ、変なところに出なくて。ここは私の部屋だわ。そこに内線があると思いますから、一番上に書いてある手書きの番号にかけてください」
俺は言われるままに電話をかけると、
「あなたは誰ですか?」
と、懐かしく、一度も忘れたことのない声で訊ねられた。
「その部屋に人がいるのはおかしいです。今すぐ警備員を向かわせますので待ってなさい」
その言葉にハッとした。確かにこれは不法侵入だ。
「私のところに持ってきてください」
葉子の言うとおり俺は急いで電話を持っていった。
「久しぶりね、蛍」
やっぱり、さっきの声は蛍の声で間違いなかった。
「ね、姉さん?」
「ええ、疑うなら、そうね…、あなたが最後に夜のおトイレが怖いって言ったのは中学だったわよね?」
蛍、お前はいつの時代でもボケキャラなのか?と言う疑問が湧いてきた。
「ちょ、ちょっと。本物なのね。今からそっちに行くわ、待ってて」
ガチャン。
勢いよく電話が切られ、数分後に蛍がやってきた。
「あ…れ、姉さんは?」
蛍は部屋に俺と、横になっている女性しかいないことを不思議に思っている様子だ。
「ここよ」
ノートパソコンから声が聞こえ蛍は俺らをそっちのけで葉子の元に向かった。
「な…んでそんな姿なの?でも、でも、姉さん、久しぶり。私立派になったよ」
「ええ、見れば分かるわ。けどね、積もる話は後よ。私達がここに入れるのは期限があるの。だから手短に話すわね」
「え、ええ」
「まず、彼は羽月 四方。そして、その隣で横になっているのがケイ、将来の私よ」
俺は会釈をした。
が。
バチン。
いきなり、ビンタを食らった。
「姉として、あなたを叱りたかった。姉さんを苦しめたあなたを」
その目は俺を怒るときの蛍の目にそっくりだった。
俺はビンタの痛みより、怒られた理由より、元気な蛍を見れたことに涙が出てきた。
「あの…ね、蛍、虐待って私の勘違いみたいだったの。私は過眠症と逃眠病の合併症に罹っていて、それの悪夢の記憶が虐待の記憶だったの」
「へ?」
蛍は目を丸くして、俺を見た。そして、俺が泣いてるのを見て罪悪感を感じたらしく、
「ごめん、お姉ちゃんが悪かった」
と、抱きしめてきた。
俺はボソリと「もう少しだけこのまま」と言って、少し泣いていた。
「さて、本題に入るわ。今現在逃眠病はどうなってる?そこにいるケイを起こしてもらいたくてこの時代に来たのだけど」
蛍は言いづらそうにこう言った。
「四方は…なんか方法を見つけたみたいだけど使おうとしてないわ。多分、あまりいい方法じゃないのね。あの子は姉さんに酷い事した自分に負い目を感じているから」
「もう一回私が説明したほうがいいわね」
俺はその言葉を遮った。
「そんなことはしなくていい。例え誰かに恨まれようとも、憎まれようとも、自分の大儀を全うできないんじゃすぐに駄目になる。何としてでも、自分の大儀を貫かせるんだ」
俺の言葉に二人は、
「やっぱり、姉さんの育ての親ね。スパルタだわ」
「やっぱり、私の育ての親だわ」
なんて言いながら笑っていた。
「でも、四方を動かす術はあるの?」
蛍の問いに俺は答える。
「ケイを見てくれ」
「うんしょ。…うわ、姉さんに瓜二つ。と言うか本人」
「ああ、将来的にケイは『羽月 葉子』と名乗るはずだ。[眠り姫]と同じくらい大切な自分の恩師を起こすためならどんな手段でも用いるだろう。本人が言うんだから間違いない」
俺には俺がケイを起こすためならどんな手段でもすると思う。そんな確信があった。
「じゃあ、明日四方を説得してみましょう。いきなりやると混乱しそうだから、あなたは、う~ん、フリージャーナリストで、逃民病の取材をしてるって設定で行きましょう。この時代の資料は後で渡すわ」
蛍はトントン拍子で話を進める。
「ああ、わかった」
「今日は、この部屋で休んでいいよ」
「ありがとう…蛍」
そう言うと、蛍はこう言った。
「コラ、ちゃんとお姉さんって呼びなさい」
その一言は俺の知ってる『蛍』ではない事の実証だった。
俺と愛し合っていた蛍がもう二度といないことの証明。
もし、ちょっと前だったら、本当に気が狂ってしまうかもしれない言葉だったのかもしれない。あの日の出来事を蛍に忘れられると言うのは、一番辛いはずだった。
けど、今はそんな事はもうどうでも良かった。気が狂うかもしれない言葉だったのに、俺はその言葉を冷静に受け止め、そして、姉という存在の蛍に安堵していた。
俺は気を取り直して、
「ごめん…姉さん」
と、言った。
それから、蛍――姉さん――は資料を届け、一旦仕事に戻っていった。
俺が無言で資料を読んでいると、勘違いした葉子が慰めてきた。
「お父様、元気を出してください」
「ん?いや、落ち込んでないさ。むしろ、スッキリしてるんだ。俺はもう一度蛍に出会えたらどんな手段を用いてでも手に入れたいと思っていた。けどさ、此処で会って、話して、怒られて、抱きしめられたらさ、『やっぱり、蛍は恋人じゃなくて姉なんだな』って思ったんだ。確かに、好きだし、それは仕方のないことなんだ。だから、好きでいる。ずっと…、ずっとな。例え、今後誰か他の人を愛しても、ずっと、蛍を好きでいる。こうやって言うと負け惜しみに聞こえるかもしれないけど、結ばれるって言う事よりも、好きって思い続けることが大事なんだと思うんだ。ハハッ、四十過ぎのおっさんが言うセリフじゃないな」
俺が苦笑すると葉子はこう返した。
「そんなことないと思います。人は常に誰かを愛しているものだと私に教えてくれたのはお父様です」
俺はロマンチストらしいな。また苦笑して、意識を資料に戻した。
その後、俺は資料を分かりやすくまとめ、明日に備えて就寝した。
決戦は明日。今、葉子がいることから結果は分かっているがその仮定を見るのは少し恐ろしくもあった。
朝起き、姉さんに用意してもらった朝食を食べながら今日の事を打ち合わせする。
「とりあえず、四方って名乗るのは良くないから、そうね、う~ん、逆から呼んでタカシなんてどう?」
安直な意見は姉さんらしく俺と葉子は苦笑した。
「ああ、良いんじゃないか?」
「よし、次は――」
そうやって、取材なら録音が必要だとか、少し心を揺さぶるだとか、話す内容も綿密に決めた。
そして、朝食の後すぐに、スタンバイに入った。
部屋から出るとき、葉子にはこう激励をもらった。
「お父様、自分との対談は変な気分だと思いますが、頑張ってください」
俺は苦笑を隠せなかった。
「くくっ、確かに変だな。じゃあ、行ってくる」
「御武運を」
「ああ」
俺は姉さんに会議室のようなところに案内され、五分くらい経った後、今の俺より二十弱ほど若いもう一人の俺が入ってきた。
ここから、予定通り録音を開始する。
「初めまして。私はタカシと言います。本日はインタビューを受けていただきありがとうございます」
「いえ、こちらこそこのような場を設けていただきありがとうございます」
初めは打倒に雑談から入る。
しばし雑談。
「では本題です。実は、あなたの活躍を事前に調べさせてもらいました。そして、こう思ったのです。何故、様々な医療関係を学び、世界規模でも一目おかれているあなたが逃眠病の専門医を目指したのですか?」
最初は妥当な質問で行く。答えは知っている。[眠り姫]を起こすためだろう。
「えっと、笑わないで聞いてもらえますか?」
笑えるはずが無い。俺もその気持ちを持ってるんだから。
「はい、もちろん」
「実は、僕の初恋の人が逃眠病にかかってしまったのが一番の原因です。出会って一ヶ月もしない内に発病してしまって、…彼女との時間を取り戻したいっていう想いです。そして、亡き恩師は逃眠病を直す事ができず辛い思いを聞かされ、きっと直すと誓いました」
確かに、葉子に聞いたとおり事は動いている。俺はもう一人の俺のその気持ちに嘘は無いと思う。けど、少しだけ、蛍を好きになった俺を否定された気がした。
「…いやはや、ここまでなったのは、恋する力だったのですね」
「照れくさいですね」
さて、そろそろ説得に入るか。
「何を照れてるんですか、胸を張っていいことですよ」
「そうでしょうか?実際に、私はまだ、一人も目覚めさせておりません。そんなんじゃ、胸は張れませんよ」
「そう…ですか」
結果が無いと自信が無いのは仕方のないことだった。
「………」
けど、自信が何も無いから出来ないんじゃ一生結果なんて出来ない。
「詩月さん、ハッキリ言いましょう。あなたは背負いすぎじゃないですか?」
「なにを…ですか?」
「最初は初恋の人を起こしたいと言う思いだけだったんでしょう。次に恩師の思いを背負い、それからどんどんと沢山の患者、家族の思いを背負っている。あなたはもうつぶれる寸前でしょう。少しは降ろしたらどうですか?」
俺はハッキリと思った事を言った。重荷が増えれば結果を出すための行動にリスクが生じるからだ。だけど、こう言っても俺ならきっと、
「それは出来ません。これは責任と期待の重さです」
予想通りの答えだ。
だから、俺は俺の言葉で俺を説得する。
「ハハハ、意地っ張りですね。詩月さんは初恋の人を起こす事だけ考えていれば良いんですよ。あなたの…あなたたちの思いが世界を救うなんてのは思い上がりです。あなたたちの思い…愛はあなたたちだけを救えばいいんです。他の人はそのおこぼれさえ貰えればいいんです」
そう、これは俺の体験談だ。
俺は蛍の二の舞になる人を出したくない一身で[葉子]を作った。それが巡り巡って、逃眠病を治す種を植えるなんて思わなかった。
俺は、俺の自己満足のために作った[葉子]と、自分を少し誇らしく思った。
「あ、は、はは、ははははは。あなた良い事言いますね。なんだか、スッキリしました」
やはり、自分自身とは分かり合えるらしい。
「そういってもらえれば光栄です。それに、あなたたちの愛が世界を救うと言うより、あなたたちの愛が、あなた達を幸せにしたついでに世界を幸せにした、と言う方がカッコいいでしょう?」
「良い台詞ですね。あなたは、小説家に向いてるんじゃないですか?」
「では、あなた方の何年越しのか恋を元に恋愛小説でも書いてみましょう。そのためには、絶対にその女性を起こしてください」
「はい、任せてください」
俺はもう一人の俺の顔を見て、素直にこう思った。
「さっきより断然良い顔ですよ」
と。
「では、取材はこれまでにしましょう。詩月さん、ありがとうございました」
「いえ、こちらこそ、大変参考になりました。また、次の機会を」
俺はデッキのスイッチを切った。
そして、俺は自分が狂人と恐れられた顔を出した。
「…、では、個人的な興味でもう少し突っ込ませていただきましょうか。[眠り姫]の調子はどうですか?」
ダン。ガタン。
もう一人なお俺は今にも俺を殺しそうな顔で睨みつけてきた。
俺は手を前に出し、言葉を続ける。
「まあ、落ち着いて座ってください。先ほど、私はあなたに一つ嘘をつきました。本当の事を言いますと、あなたの事はほぼ全て調べてあります。無論、画家と精神科医の事もね」
もう一人の俺は力をなくし椅子に座った。
「…何が目的ですか?」
やれやれ、これじゃ、脅しだな。仕方ないか。
「一人の逃眠病患者を救っていただきたい」
予想外の答えだったのだろう。目が見開かれていた。
「…む、無理です。今の状況で治療をするのは、人体実験と変わりません。そんな非人道的な事はできるわけがないです」
ガチャ。
外で待っていた姉さんは実にいいタイミングで入ってきた。
「彼は納得済みよ」
ここは姉さんに任せたほうがいいだろう。
「姉さん。…納得って、どういう意味ですか?」
「彼は自らの大事な人をあなたに託したのよ」
「な…」
「もし、失敗しても彼は他言しない。逆に成功したら世界的に取り上げるわ」
「それじゃ非公式の人体実験じゃないか。葉子さんを作った僕とどう違うんだ」
その言葉はとても痛かった。誤解だと分かっていても、辛い思いをさせたのは事実だ。
「じゃあ、あなたは一生くすぶっているつもりなの?そろそろ、転機を迎えるべきじゃないの?少なからず自信はあるんでしょ?」
「怖いんだ。万が一の事を考えると怖いんだ」
「…ふう、…来て。取り合えず患者を診てみなさい。治療じゃなくても出来る事は見つかるでしょう」
そう言って姉さんが俺らを案内したのはケイが眠っている特別病棟の一室だった。
「葉子さん…」
「似ているでしょう?アタシも驚いたよ。彼女の名前はケイ、彼の大事な人よ」
「アタシも最初は人体実験みたいだから乗り気じゃなかった。でも、姉さんによく似た人がまた、逃眠病で苦しんでると思うと、どうしても助けたくなっちゃって…」
本心だろう。
そして、もう一人の俺の目には決意の光が浮かびだした。
「分かりました。治療をやりましょう。姉さん、あの二人を呼んでください。治療内容を説明します」
「分かったわ」
「それと、タカシさんは別室で待ってていただけますか?治療はあまりお見せしたくないので」
ふむ、どのような治療法なのか興味はあるが、ここは大人しく頷いておくべきだろう。
「分かりました」
こうして、ケイの治療が始まった。
俺はさっきの会議室で待機していた。
することもなく、一人で待っていると様々な事を思い出す。
あの半日の事、葬式周辺の事、一時期俺が狂っていた事、ケイと出会って笑顔を取り戻した事。
多分全ては姉さんが居たから起こった事だろう。姉さんがいなければ、俺はきっと羽月グループの社長になって、逃眠病に侵されて眠りにつくだけだったはずだ。
僅かな間だが、自分の事を考えたのは久しぶりだった。
バタン。
画家がいきなり会議室にやってきた。
「タカシさん、今すぐ治療室に来てください」
「あ…ああ」
俺と画家は急いで治療室に迎い、その場の状況に絶句した。
ケイは狂ったように暴れ、体を押さえつける布で肌がこすれ、血が染み出していた。
「な、何なんだこれは…」
俺は目の前の状況が理解できなかった。どう見たって治療には見えない。
「苦情、文句は後で聞きます。精一杯ケイさんの事を呼んでください」
さっきまでとは全然違うもう一人の俺。まるで、さっきと立場が逆転していた
「なっ」
「早くしろ!あんたが最後の鍵なんだ」
恐怖。もう一人の俺の存在に恐怖した。圧倒的な存在感。恐竜の前に立ったライオンの気分だった。
「っく、ケイ!」
それから、数十分後、病室は静けさを取り戻し、俺はもう一人の俺に治療の事を全て聞いた。
「これが、僕が治療に進みたがらなかった理由です。納得いただけましたか?」
出来るわけが無かった。この男は俺ですら出来なかった逃眠病の治療を成功させたのだ。同じ研究者として、仮定がどうであれ、素晴らしい結果を隠していたのは許せなかった。
「理解できませんね」
俺はハッキリと言う。
「あなたは逃眠病を治せる最高の手助けが出来る薬を開発したんですよ、それなのに、どんな理由があろうと出し惜しみするのは手を貸さないのと同じです。そんなのは納得できない」
俺の言葉が終わった瞬間、怒鳴り声がした。
「なら、あなたは僕に夢を奪う人間になれと言ってるんですか?」
まだ、踏ん切りがつかないのだろう。もう一押しする。
「その覚悟が無いなら、さっさとその薬は棄てた方がいいですよ」
もう一人の俺は少し下を向き、そして、さっきまでとは全然違う顔で、
「覚悟は十年前にしてきました。何人殺してでも、汚名をかぶってでも、逃眠病を治して見せましょう」
もう、俺は満足だった。
「さっきまでとは全然違ういい顔つきですよ」
俺は、もう一人の俺を誇りに思えた。
そして、もう一人の俺は事務処理へと話を進めた。
「姉さん、羽月グループの全宣伝力を使って、逃眠病を治す手段を正確に伝えてください」
「了解」
姉さんも嬉しそうだった。
「タカシさん、先ほどの手術の映像は流して平気ですか?」
「どうぞ」
俺は快く頷いた。
「これで、いくつかの逃眠病は治る。とりあえずの未来変革には成功だ」
この治療の賛否両論の反響は凄かった。もう一人の俺の事を夢を奪う悪魔と罵る人、奇病の治療法を見つけた天才と称える人。否定派の人もいたが、賛成派の沢山の逃眠病患者が逃眠病専門病院を訪れた。それから一週間の間、もう一人の俺らは、ほぼ不眠不休で働いたにもかかわらず、治せた人数は百人足らずだったが、世界中のメディアは大きく注目していた。
その一週間の間、ケイは意識を少しずつ取り戻すも、まだ、眠っている時間が長かった。
けれど、悪夢を見て起きるの繰り返しでやつれていくのは心苦しかった。
また、俺は今日のインタビューと資料を少ししたらネットに流すように姉さんに頼んだ。
これを見れば、また、ここに誰かが治療に来る事を祈って。
退院の日。
この時代に長くいるのは良くないと言う俺と葉子は無理を言って退院の日を急いでもらった
「ええ、術後の経過もなんとか順調ですし退院できますね。取り合えず鎮静剤は出しておきますので、いざとなったら使ってください」
と、もう一人の俺のお墨付きを貰って退院した。
俺は最後に、
「あなたに、いえ、あなた達に僅かばかりの奇跡が訪れる事を」
と、神にも祈る思いで伝えた。
そして、また裏口から入って、葉子の部屋に戻る。
「ケイが寝ているうちに戻りましょう。でも、本当にいいんですか?」
「何が?」
「お父様が本当は、虐待して無いって事を伝えなくて」
自分の嘘の記憶が心苦しいのだろう。葉子は何度も俺にこう聞いてきた。
「いいんだ。伝えると運命は変わってしまう。そうするとこの世界まで消えてしまう。それだけは避けたいんだ」
俺はいつもこの答えだった。
「わかりました。最後に一つだけいいですか?」
最後?
「最後って言うのはどういうことだ?」
「私は小型時空移動装置の電力になります。予想より無茶だったみたいです」
「な…俺に娘を殺してでも生き残れと言うのか?」
「はい」
キッパリと言われた。
「なんで、お前だけ不幸な目にあうんだよ。納得できるか」
葉子は笑顔で、
「やっぱり、お父様と四方君は同じ人ですね。四方君にもそういわれましたよ」
「ち…くしょう」
俺はただただ悔しかった。
だから最後の望みだけは聞かなければならなかった。
「わかった、納得は出来ないが理解はした。最後の望みを言ってくれ」
「はい。私は初めて会ったときから羽月 四方さんのことが好きでした。私が逃眠病で見た悪夢は蛍に嫉妬してみた悪夢だったんだと思っています。あなたのことが好きなのに、あなたは蛍のことしか見えていないと言う勘違いからあの悪夢を見たんでしょう。だから、最後に私の事をどう思っているか教えてください」
知らなかった。ケイがこんな思いを持っていたなんて。俺は親失格だった。
「俺は、ケイの事が好きだ。けど、それは親愛なんだ」
葉子はにっこりとして、
「はい、今の本当のお父様を見て、わかっていました。不満ですけど、愛されていたのならそれでいいです。ありがとうございます。お父様」
そして、まばゆい光が俺たちを飲み込み、気付いたらケイを寝かせていた病室だった。
「さよなら、俺の眠り姫。そして、最愛の娘よ」
それから、少しして、ケイが目覚めたとき俺は色々な意味をこめて謝った。
ケイは唖然とし、疑り深い目でこちらを見据え、泣いていた。
「俺ももういつ眠ってしまうかわからない。だから、お前に俺の全てを与えたい。俺の後とりになってくれるか?」
ケイは怯えた目を決意のこもった目に変え、
「はい」
と、言った。
俺はケイに逃眠病に関する知識だけでなく、内科、外科、精神科、薬学などを叩き込んだ。
ケイを鍛えるのも一通り終わった日、ケイは、
「私は羽月 ケイではなく、この体に恥じぬよう、そして、過去との思いに決別するために、羽月 葉子と名乗ってもいいでしょうか?」
と、訊ねてきた。
出来れば、この現象だけは起きてほしくなかったが仕方ない。
「ああ、羽月家の創設者の名前に恥じぬように生きろ」
と、言った。
そして、ケイは世界を旅するといって、俺の前から巣立っていった。
その後、少しして、画家と精神科医から封筒が届いた。
中身は[眠り姫]の脳波だった。
「な…んだ、これは」
[眠り姫]は世間一般の人間がかかっている逃眠病とは違うモノに罹っていたのだ。
「は…はははは…はーっははははっは」
神よ、あなたは人類が嫌いなのですね。
けれど、俺の作った新人類はきっとあんたの気まぐれをぶち壊して見せるさ。待ってろよ。
結局俺はこの脳波が原因で世界に絶望し、逃眠病に罹った。最後の最後まで葉子へ、そして、もう一人の俺へ手紙を書き、そして、深い眠りへと堕ちていった。
本編で語られなかったお話です。
眠り姫はこれにて終了となります。




