第二十一話
しぶしぶといった様子でセイラは話題を変える。
「あの子たちのほとんどは、タリル旅団へ入るんですよね。女の子もみんな」
「例外はあるが、普通はそうだな。タリル旅団には女兵士も多いだろう。そこは一緒に暮らしているんだから、セイラもよく分かっているだろう」
魔道具の発展の甲斐あって、その扱いに長けた女性であれば、戦場で男性に引けを取ることはない。全員が魔道武具を使いこなすタリル旅団では、他の軍と比べても女性の比率が高かった。
セイラは軍人寮の女性棟で暮らしている。女の兵士ともよく話しているはずだが、彼女たちの幼少期を知っているわけではないので、実感が持てずにいるのだろう。セイラがタリル旅団に入ってから、まだ数年しか経っていなかった。その間に奪還したこどもたちはまだ養護院で過ごしていて、軍に入団した者はまだいない。
「これだけ栄えた街ですし、軍人以外でもお仕事はたくさんあるんじゃないですか?」
「セイラだって、帝都に来て、軍人になっただろう」
「私の場合は、魔道具が特殊すぎて、他に使い道が見つからなかっただけですよ」
セイラは過去を思い返すように視線を上に向けながら答える。
「そう、その魔道具が問題だ。辺境の村ならともかく、ここ帝都では何か魔道具の扱いに長けていないと、良い職につくことはできない。タリル養護院で、魔道武具の扱いを長年かけて学べるのは、こどもたちにとっても悪くない話なんだ」
「別に教えるのは武具じゃなくても良いですし、魔道具が使えなくても、辺境の村で幸せに暮らせば良いじゃないですか」
セイラは引き下がらない。こどもたちに他の道を示さず、軍人になることを半強制していることが、納得できない様子だった。
「セイラはタリル旅団員が幸せではないと思うのか?」
「そういうわけじゃないですけど……」
タリル旅団員を否定するということは、リオンの人生をも否定することになる。セイラはそれ以上強く言うことができなかった。
「こどもたちに、色々な可能性を提示してやりたい気持ちは俺にもわかる」
リオンが譲歩を見せる。
「でも、軍も慈善団体じゃない。戦力にならない者を養うわけにはいかないんだ。今はただでさえ、長引く戦争で孤児が増えているからな。山岳育ちのこどもを受け入れる余裕のある孤児院は、帝国には無い」
諭すようにリオンは言葉を続ける。残念だが、それが真実だった。
「少なくとも、あのまま山岳で育って賊徒になるよりはよかったはずだ。命がけの鍛錬を何年もさせられるし、軍人になったら気の進まない任務につくこともあるが。それでも俺は軍に感謝しているよ」
リオン自身も、こどもたちにとって何が最適なのか、何度も考えてきた。その上で、山岳からのこどもたちの奪還に、注力することを決めたのだ。




