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第一部自称魔王から自他ともに認められた魔王になり異世界生活します

 20045年、日本と某国Rの戦争が激化する中R国は日本に治療不可能な病原体の細菌particleserosionを用いて日本を侵略していった。体の弱い俺はその細菌に罹り床に伏して命を落とす寸前にある

 (嗚呼……、眠い。もうだめか)

 薄れゆく意識の中、俺の寝ているベッドの横で俺の手を握って涙をながら何かを云っている母と軍服を涙にぬらす父の姿だった。俺にはもう母が何を云っているのか聞こえなかった。

 俺は薄れゆく意識の中で心臓が止まっていくのを理解した。そして視界が闇に包まれた。

(もしも生まれ変われるのなら丈夫な体で剣や魔法が使える世界でダークヒーローになって陰で人や国を救ってのんびり暮らしたいな)

 

  第一章 自称魔王アズラエル・ソロモン

   

   一

  真っ暗だった視界に徐々に白い光が差し込んできた。目の前にはブロンドヘアの女が立っていた。

「お目覚めですか?斎藤隆弘」

 女に問われて「はい」と俺は答えた。女が言うには、自分が女神で名をフレイヤと名乗り俺が病気でこの世を去ってしまったので転生させることとなったようだ。

「本来転生させるべき魂は善行を少なくとも千回行ったものだけなのですが、貴方の生涯は生まれてから病に苦しみ齢二十五で死に至りました。故にとても善行を行えるほどの人生ではなかったので特別処置としてあなたの生まれた世界とは異なる世界つまり異世界へ転生させます。

 そこでなんでも願い事を三つまで叶えます」

 俺はそこで考えた、病室で読んだ漫画やファンタジー小説のことを思い出した。だが四つの願い事だけでは事足りないのでその中でも複数の願い事を一つの願いでかなえられるものを四つ厳選した。

「では、一つ目は不老不死の身体、二つ目は魔法を創造する能力(スキル)、三つ目は時空間を操る能力(スキル)、そして四つ目は万物を創造する能力(スキル)の四つをお願いしたい」

 それを訊いたフレイヤは薄く笑みを浮かべた。

「意外と欲張りさんなのね」

 どうやら彼女は俺がどうしてこの四つの魔法を選んだのかの意図を読んだようだ。

「まあね」

「そんな欲張りさんにはもう一つだけ私からの転生のお祝いとして願いを叶えてあげる」

「それならば転生先の世界での能力値を世界最強にまで設定して送り出してほしい」

「それは構わないけど、さっき言っていた願いだけでも十分最強だと思うのだけれど、理由(とうして)?」

 フレイヤにそう問われて俺は迷うことなく即答した。「大切なものができたときに守れるように」と、するとフレイヤは頬を薄く紅潮させ「わかったわ」と言って俺を赤い光に包み込み送り出した。

   二

  俺が目を覚ますとそこは一本の大樹の木陰だった。

 服はあらかじめ用意されていて黒いジャケットと黒いパンツのセットアップに中はワイシャツといった洋装だった。年は十歳にして転生させるとフレイヤは言っていた。

 周りを見渡すと遠くの方に街が見えた。そして背後には大きな森があった。森の方へ足を進めようとするとジャケットのポケットからチャリン、チャリンと音がした、ポケットを探ってみると小さな小銭の入った袋とこの世界の地図が入っていた。地図を開いてみると現在地と周辺国や街の場所が事細かに書かれていた。

 地図から分かったことは、この世界の名が『第五世界ラウル』。南に商業区、宿屋、レストラン、図書館、大図書館、冒険者組合が並んでいる人間やドワーフ、獣人族、エルフという他種族の住まう街がある、それが『商業国ムーンライト』東にはエルフやドライアドが住まう国『トワイライト』、西には魔族の住まう国『魔界』、北にはドワーフと獣人族の住まう二つの国がありそれが『ベレーカントリー』と『獣王国ブルートベスティア』。北の先にある大きな山を越えると龍族と人間の共存国『ヒノクニ』があると書かれていた。この東西南北の全ての国が集まって『テンペスト帝国』という。それぞれの国には一人ずつ国王がいる総勢六人の王とそれをまとめる皇帝がいる。

 俺はとりあえず、街とは逆方向にある森で暮らすことにした。暮らし始めてから三年の月日が経った。俺はこの三年のあいたで自分の使える魔法やスキルを極めることにした。フレイヤからもらった能力(スキル)【魔法創生】と【時空間操作】で様々な実験をして新たな魔法を手に入れることにした。この世界の魔力というものは人間の生命エネルギーから成る魔法を使用するための元となるものを指す。魔力量には個体差があり生まれつき決まっている。しかし魔力を底上げするための修行や一定時間底上げする薬品(ポーション)などもある。魔力は体力を回復することで同様に回復される。つまり食事と睡眠もしくは薬品(ポーション)を使用するなどして回復ができる。俺は不老不死だから魔力に際限がないつまり魔法を無限に出すことができる。

 次に万物創造と時空間魔法の実験を実施し何ができるのかを正確に知ることを目的とする。

 早速俺は【魔法創生】で実験を試みた。この世界では炎・水・氷・風・木・土・雷・光・闇・無の十の属性に魔法を分類している。俺は最初に殺傷能力の高い火属性の魔法を創ることにし、まずは六色の炎を作り出すことを考えた。『瑠璃色』『漆黒色』『翡翠色』『白色』『紅色』『紫色』その六色の炎はそれぞれ違う能力にし、状況に応じて使おうと考えた。

瑠璃炎(ルシファー)】には万物全てを焼き尽くす能力。火が付けば対象を燃やし尽くすまで消えることはない。ただし魔法で放たれる魔力の塊を焼くことはできない。だが魔法で作成された武具は作成された時点で魔力の塊から物体という範疇に分類されるためこれは燃やすことができる。この魔法は魂もろとも相手を燃やし、魂を餌に自発的に強化される。

 【漆黒炎(ダエーワ)】には魔力を基に放たれた魔法や作成された物すべてを燃やし尽くす。そして魔力で負った症状(毒、麻痺、焼けどなど)を元に戻すことや蘇生せることも可能。ただし人間を含めた生命体は燃やして殺害することはできない。この魔法は魔力を餌に自発的に強化される。

翡翠炎(マモン)】は広範囲灼熱攻撃。背に双翼を模した黄緑色の翼を生やす。その羽の一枚一枚が灼熱の炎を帯びている。羽を空中に放つことにより、その羽は双頭の猛禽類となり空中で翼を羽ばたかせ黄緑色の灼熱の炎をまとった羽を雨のように降らせる。これを『黄緑色の雨』という。火が付けば対象を燃やすまで消えることはない。この魔法は魂もろとも相手を燃やし、魂を餌に自発的に強化される。

白炎(サマエル)】は光の速さで白い色の炎を放つ。火力は『瑠璃炎(ルシファー)』と同等。火が付けば対象を燃やすまで消えることはない。そして【白炎(サマエル)】は自身の身体に薄くその炎を纏うことができ、それにより物理・魔法攻撃から身を守ることができるこれを『白炎之羽衣サマエルノハゴロモ』という。この魔法は魂もろとも相手を燃やし、魂を餌に自発的に強化される。

紅炎(マルバス)】は自分以外の生命体の症状や状態全回復・生命の蘇生をすることができる。対象者の状態が治るまでこの炎は消えることはない。この魔法は傷や状態の異常を餌に自発的に強化される。

紫炎(アスモデウス)】この炎は小さな粒の粒子になり甘い香りとともに放たれる。香りを嗅いだり、粒子吸ったものは夢幻を魅せられる。魅させられている夢幻を受け入れたものは肉体の内側から紫色の炎で燃やされる。これを『夢幻の芳香』という。火が付けば対象を燃やすまで消えることはない。この魔法は魂を餌に自発的に強化される。


 とりあえずはこの六色でしばらくは対応することにし、発動方法は体全体のどの個所からでも発動できる。発動の際は体全体から魔力を放出するイメージで発動する。火力を一点集中させることも可能。次は『万物創生』で武器を作ることにした

 俺は日本刀と小太刀を二本作成するとして問題はただの日本刀では意味がないということだ。そこで俺は先ほど魔法創生で作った瑠璃炎(ルシファー)を付与させようと考え、魔法創造で【魔法付与】を創りだして日本刀に瑠璃炎(ルシファー)を付与した。しかし付与すると刀身が炎に耐え切れなくなり燃えカスになった。そこで今度は【能力創生】で【混合分解】を創造した。そして今度は日本刀に【瑠璃炎(ルシファー)】を混合した。そこでできたのが魔力を刀に流すことで刀身が瑠璃色に変化し【瑠璃炎(ルシファー)】を纏う魔剣【魔剣ルシファー】。次に作ったのが小太刀に【漆黒炎(ダエーワ)】を混合させた魔剣【魔剣ダエーワ】。

 次に【飛行魔法(フライ)】を創造した。

 次に【時空間操作】の能力(スキル)把握。

 能力の実験を一時間かけて実施して理解したことは時間停止は一時間を停止することが可能、時間加速は自分の意思で止めるまで何時間でも加速し続ける、時間返戻も時間加速と同様に自分の意志で止めなければならない。

空間移動が可能。ただし自身が知っている場所や地名を頭に浮かべなければ空間を繋ぐことはできない。今の俺が空間移動で繋ぐことができるのは自分の視界に入る範囲だ。これを【空間門(ゲート)】と名付けた。後は空間に亀裂を開けて固有の空間を作り、物を出し入れすることができる。これを【固有空間(サームハラル)】と名付けた。

【空間変替】空間を入れ替えることができる。例えるならば人や物を入れ替えたりすることができる。

 最後に身体能力を確かめるために、フレイヤの手紙の最後に書いてあった自身のステータスを見るための方法を実行に移した。その方法とは意識を集中させながら心の内である言葉を唱えること。

 (管理者権限(アドミニストレータ)

 唱えると両の瞳に名前及びステータスと思われる様々な項目がずらりと並んで見えた。

 氏名:未記入、

レベル:∞(インフィニティ) 種族:人間 体力:∞(インフィニティ)、魔力:∞(インフィニティ)、 攻撃力:∞(インフィニティ)、防御力:∞(インフィニティ)、魔眼レベル:∞(インフィニティ)

 魔法

瑠璃炎(ルシファー)】レベル:1 炎属性魔法

漆黒炎(ダエーワ)】レベル:1 炎属性魔法

翡翠炎(マモン)】レベル:1 炎属性魔法

白炎(サマエル)】レベル:1 炎属性魔法

紅炎(マルバス)】レベル:1 炎属性魔法

紫炎(アスモデウス)】レベル:1 炎属性魔法

【魔法付与】無属性魔法

【混合分解】 無属性魔法

飛行魔法(フライ)】無属性魔法

 所有武具一覧

【魔剣ルシファー】レベル:1 魔具

【魔剣ダエーワ】レベル:1 魔具

 独特能力(ユニークスキル)

【不老不死】

【魔法創生】

【万物創生】

【能力創生】

【能力無効】

【生命力感知】

【魔力感知】

【時空間操作】レベル:∞(インフィニティ) 

 ステータスを見て分かったことは、レベル表示があるものとないもの。そして【魔法創生】で創られた魔法のレベルは1として表示される。しかし【魔法付与】、【混合分解】にはレベルの表示がない。これはつまり成長する魔法とそうでない魔法に分類されていて、∞(インフィニティ)というのは無属性魔法に分類されるものであるということ。しかし今後無属性魔法で∞(インフィニティ)以外のレベル表記があるものが出た場合はイシュタルから貰った魔法故の表記と見るべきなのかもしれない。もしくは何らかの条件を満たすことによって他の魔法も∞(インフィニティ)になるかもしれないということも念頭に置くべきか。

 最後に魔眼の能力を見る。

 魔眼【真実之瞳(アンドロマリウス)

その瞳に移した相手のステータスを覗くことができる。さらに相手の現在から二十四時間までの未来と過去の動きを視ることもできる。さらには相手の数年先の未来を観ることができる。

 【偽り破り(フェイクブレイク)】

 瞳に移した者の偽りを見破ることができ、白日の下に曝すことができる。

【千里眼】

遠隔地を見渡すことができる。

 物体を透視することができる

【威圧】

自分よりもレベルの低い相手ならば自身の意志で瞳にうつしたものの(いのち)を奪うことができる。

 【解析鑑定】 

相手の発動する魔法を解析し、情報を得ることができる。

反射魔法(オートカウンター)

相手の魔法の発動に合わせて瞬時に反射魔法(オートカウンター)を放つことが可能。反射魔法(オートカウンター)・『漆黒炎(ダエーワ)』に設定中。変更可能。

『心理掌握』

瞳に移した相手の悪意と善意を見抜くことができる。

 最後にこの世界での新しい自分の名前を記入した。

 アズラエル・ソロモン……と。

 三年後俺は修行を終え、街に出る決意をした。そして少し歩くと、「やめてっ!」女性の悲鳴にも似た声が聞こえた。声の方に向かうと複数の男たちがエルフの女性を襲う場面だった。

「ヒャッハー!綺麗な顔してるぜ、これなら高値で奴隷として売れそうだな」

「そうッスネ頭領」

 俺は品のない会話をしている男たちとエルフの間に入った。

「おい屑共、……失せろ!」

 俺は男共に威圧を放った。すると男共は次ぐ次と倒れ死んでいった。

「大丈夫か?」

 俺はエルフに声を掛けると「助けてくれてありがとう!私はエルフィーナ、エルフィーって呼んでね」

 エルフィーは胸の部分が開いた服に足首まで長いロングスカートのようなものを穿いた服装だった。

「エルフィーは何で襲われていたんだ?」

「街に向かう途中に襲われたの。あのまま捕まっていたら奴隷として売られて一生帰れないとこだったよ」

「そうだったのか、俺もこれから街に行くところだったんだ。よかったら町まで一緒に行かないか?」

「いいよ!一緒に行こう」

 しばらく歩いているとエルフィーからある話を聞いた。

「さっきの奴らたぶんエルフ攫いの連中だよ」

「エルフ攫い?物騒だな」

「ここ最近多くのエルフが攫われているの」

 俺たちは商業のある南にある街に向かった。その街の名は『テンペスト街』。

街に入り水と食料を買って、情報収集を始めた。住み心地のよい静かな場所や危険な場所やこの世界の共通の法律などの情報を集めた。そして最近エルフが攫われるという事件があることも。

「エルフ攫いか……」

 俺はエルフィーと別れ街を一人でぶらぶら散策することにした。エルフィーが言ってたことは街でも噂になっているようで街で見かけたエルフはかなり周りを警戒しているようだった。

 俺はエルフの村に向かう前にエルフを攫う夜盗についての情報を集め始めた。テンペストにある『クイーン・オブ・キャット』という酒場を営業している人物が情報屋だという街の人間からの話で知った俺はすぐに向かった。

 店に入ると酒場には、カウンターにバンダナを頭に巻き剣を腰に携えた男が一人と店主と思える色黒の男が食器をタオルで拭いていた。

 俺はカウンターに座り飲み物を頼むついでに情報を訊くことにし、店主らしき男に話しかけた。

「すまないが店主、エルフを攫っている夜盗についての情報が欲しい。幾らで売って貰えるだろうか?」

 俺がそう云うと店主は食器を置き、指を二本立て「銀貨二枚」と云った。

 この世界での金銭の単位は上から順に

アリエル

帝国金貨

帝国銀貨

帝国銅貨の四単位がある。アリエルとは帝国金貨千枚以上の単位を指す。帝国金貨以下は全て百枚以上で単位が変わる。例えるならば帝国銅貨が百枚目に達した時点でそれを帝国銀貨へと換金でき同等の単位と見なされる。

俺は帝国銀貨二枚を出し店主から夜盗の居場所とエルフの売却地の二つの情報を入手して、店を出た。

 夜盗の組織の名は『デビルスナッチ』、頭領の名は『バルログ』、デビルスナッチは夜間に行動を起こすことを絶対としている。

   三

 夜間、情報にあった場所に俺は着いて大きな屋敷を確認し、真実瞳(アンドロマリウス)の能力を使い屋敷内を透視した。そこには家主と思われる男とエルフを攫っているデビルスナッチの頭領と思われる人物バルログがいた。俺の聴力は常人の数千倍ありかなり遠くの声を聞くことができる。

「マルチネス侯爵様、いつまでこのようなことをなされるのですか?今帝国騎士団が動き始めています。これ以上エルフを人身売買すれば跡が付きすぐにでも騎士たちは我々を罪人として抹殺しに来るでしょう。ギルベルト皇帝陛下はそれを許しはしません」

「わかっているバルログ。故に今回を最後にて暫くは動くつもりはない。金もかなり貯まったからな。だが帝国騎士団といえど六万五千の我が兵とお前たちデビルスナッチ元最上位SSランクの冒険者と名だたる元騎士団長六名がいれば壊滅することなど考えられんわ」

「なるほど、金のためにエルフを攫って売買していたということだったのか。もう少しまともな理由であれば殺すまではしなかったものを」

 俺はさらに屋敷を透視して地下室を見つけた。地下室には地下牢がありそこに四人のエルフが囚われていることを目視した。

「何っなんであの娘が」

その中にエルフィーの姿があった

 すぐに俺は屋敷に侵入し、地下牢に繋がる通路にまっすぐ向かった曲がり角を曲がると地下牢に繋がる扉があった。そこには扉を守る剣を持った男と短刀を持った男の二人が経っていた。

「ここは【紫炎(アスモデウス)】が有効だな」

 【紫炎(アスモデウス)】の幻惑の芳香により二人に幻覚を見せた。

「この匂いは……」

 剣を持った男は亡くなった妻と昔住んでいた家で晩飯を食べ、床を共にしている幻覚を見ていた。

「サラ、また会えるなんてこれは夢か幻か、いやどちらでもよいこうして君に会えたのだから」

 剣を持った男は幻覚を受け入れた。すると彼の身体が内側から紫色の炎で燃え盛り塵も残さず消えた。

 短刀の男も同様に幻覚を受け入れ焼き尽くされた。

 俺は地下牢に入り、エルフを探した。いくつもの牢がありそこには大量の古く固まった血痕が凄惨さを物語っていた。

「誰かいるのですか?」

 牢屋の奥から声がした。向かってみると一部屋に四人のエルフが鎖に繋がれ座っていた。

「エルフィー助けに来た。怪我はないか?」

 エルフィーは大きく目を見開いた。

「アズラエルさんっ!何でここにいるの?」

「エルフ攫いの拠点の場所が分かったからそのエルフを助けようと思ってな」

「そうだったのですか。私は先ほど後ろから変な匂いをかがされて意識を失って、目が覚めるとここにいたの」

「そうか、それは災難だったな今助けるよ」

 俺はエルフィーの足枷を解き、他の牢屋に入っているエルフを助けに向かった。

 髪の長さの違う金髪碧眼の三人のエルフうち三人は頷いた。しかし一人は顔を腫らし腕を骨折、さらに肋骨にひびが入っている状態になっていた。

「なぜ彼女だけこんなに怪我がひどいのだ?」

「シャーリー姉さまは私たちを夜盗たちから助けようとしてこのようにされてしまったのです」

「そうか、君名前は?」

「私の名前はフィオナです」

「フィオナ、君のお姉さんの怪我は俺が治そう」

「ほんとうですか、ありがとうございます」

 俺は【紅炎(マルバス)】を使いシャーリーの身体を燃やした。

「きゃあっ、なんてことを!」

「問題ない。これは炎属性の治癒魔法だ。よく見てみるといい」

紅炎(マルバス)】に焼かれたシャーリーの身体の傷が急速に治癒されていく。やがてシャーリーが目を開けられるようになった。

「傷が治った」

 シャーリーやその他の三人のエルフは驚きを隠せないでいた。

「さて、君たちここから逃げようか?」

「無理ですよ、ここから出るなんてここには大勢の武器を持った屈強な用兵や戦士がいるのですから」

 フィオナは体を震わせながらそう云った。

「問題ない。時空間操作でテンペストまで行くからな」

 それを聞いたエルフ四人はポカンとした表情になった。

「まあものは試した」

 そう云って俺はテンペストにある『クイーン・オブ・キャット』までの【空間門(ゲート)】を開いて四人を逃がした。

「そこに建てられている『クイーン・オブ・キャット』という酒場で待っていてくれ。君たちが来ることは店主に伝えてある」

「わかりました。あのお名前をお訊きしてもよろしいでしょうか?」

 俺は今後のことを考えこう答えた。

「俺の名は魔王アズラエル・ソロモン」

「え、ま、魔王?」

「そうだ、それじゃあ後でな」

 そう言って俺はゲートを一度ゲート閉じて、バルログのいる部屋にゲートを開いて部屋に侵入した。


   四

  頭領バルログはワイングラスを片手に座っていた

「はぁー、まったく伯爵には困ったものだ。人一人攫うのも楽ではないというのに、ん!」

バルログは部屋に現れた空間の歪に驚き大剣を構えた

「何奴!」

「エルフを売りさばいている馬鹿どもを始末しに来た魔王だ」

「ま、魔王だと、なぜ魔王がエルフのことで」

「俺の今後の目的のためにエルフが必要になった。エルフの売却先リストの場所を教えてもらおうか?」

「教えると思うのか?」

「いや、力ずくで教えてもらうつもりだ」

 バルログと俺の間で数秒の間ができ、それを過ぎるとバルログが大剣を振りかぶって切りかかってきた。だが掌に『瑠璃の(ルシファー)』を一点集中させ大剣を掌で受け止め炎を放出してバルログの両腕ごと燃やした。

「ぐあーっ!」

「さあ、教える気になってくれたか?」

「雇われている以上教えるわけにはいかんな」

「そうか、その心意気に免じ一瞬で逝かせてやろう。【蒼炎(ルシファー)】」

 俺はバルログを【蒼炎(ルシファー)】で燃やし尽くした。その後侯爵のいる執務室の前まで行って、扉に手をかけた。

「貴様がマルチネス侯爵だな」

 部屋の中にいたのは小太りの派手に着飾った男だった。

「そうだが、貴様は何者だ」

「魔王である」

「はっ?魔王じゃと。魔王がなぜここに」

「エルフを助けるために来た。エルフの売却先リストをよこせ」

「やるわけがなかろう!くくく」

「ならば、これで教えてくれるか?」

 俺は時間停止をして侯爵の片腕を【魔剣ルシファー】で切って見せた。するとマルチネスは青ざめ、泣き喚きリストの場所をペラペラと話し出した。リストは執務室に備え付けられている机の引き出しにしまってあり、それを手に取りマルチネスに背を向け屋敷の上空に空間門(ゲート)を開き、外に出だ。

 俺は【飛翔魔法(フライ)】を使い空中に浮遊し、【黄緑炎(マモン)】を使い、六万五千の兵とデビルスナッチの六名を屋敷ごと燃やし尽くした。その後生命力感知を使い、生存している者がいないことを確認した。

「さて、行くか」

 その場を立ち去ろうとすると「ガサッ」という瓦礫が動く音がして、音の方を見ると、黒い靄を身体から発するマルチネスが現れた。

「よくも、よくもやってくれたなー!」

 そう叫ぶと黒い靄がマルチネスの体を侵食し、彼は黒い靄の集合体になった。

「殺してやるぞー、我が侯爵家秘伝黒魔法【闇黒の體】でな」

  真実瞳(アンドロマリウスロス)でマルチネスを見て【闇黒の體】を解析した。内容はこうだ。

【闇黒の體】発動後自身の肉体を魔力に変換させ、物理攻撃を無効とする。黒い靄を放つことができ、それに触れたものは様々な状態異常にさらされ死に至らしめることができる。

「なるほど、それで『黄緑炎(マモン)』で焼かれるのを防いだということか。それならば【漆黒炎(ダエーワ)】っ!」

 マルチネスは俺に気が付き、黒い靄を放ってきた。それに合わせて俺は火力を上げた漆黒の炎を放ち黒い靄ごとマルチネスを跡形もなく焼き尽くした。

 俺は魔力感知と生命力感知の両方の魔法を行使し周囲を確認し、売却リストに載っている場所へ向かい、購入者を始末後さらに四人のエルフを救出した。総勢八人のエルフの救出に成功した俺はフィオナにエルフの国への道案内を頼んだ。

 半日かけて、ようやくエルフの国に着いた。門前には門番が二名槍を持った男と剣を持った男の二人が門を守っていた。

「お父様!」

 フィオナが剣を持ったエルフにそう声を掛けた。すると男の方は涙を浮かべフィオナを抱きしめた。

「フィオナー!夜盗にさらわれていたはずじゃあ」

「こちらにいるアズラエル・ソロモン様に助けていただいたのです。アズラエル様、こちら私の父のギルバートです」

 男が娘の言葉につられこちらを見てきた。

「私は魔王アズラエル・ソロモンだ」

「魔王だって!なぜ魔王が娘や同胞たちを助けてくれたのですか?」

「その話は後程わかります。この国の国王はいらっしゃいますか?」

「はい、いらっしゃいます」

「呼びつけるのは失礼なので、案内してくれませんか?」

「わ、わかりました。こちらです」

 大きな木造建築の建物の前に数分待たされたのち髭をはやした金髪碧眼の男性が出てきた年の頃は三十過ぎに見える。だがエルフは見た目と年齢に大きな開きがあり若く見える種族なのだ。

「私がこのエルフの国の長レオパルドだ。話はギルバートから概ね聞いている。して何を欲する」

 レオパルドは鋭い眼光を向けてきた。

「話が速くて助かる。ならばあそこに見える山をいただきたい」

 俺はエルフの国の反中にある大きなヤマを指さした。

「よかろう。しかし何に使うのかを一応聞いておきたいのだが?」

「俺の住まいを作るための土地として活用したいのだよ」

 それを聞いたレオパルドはとても驚いたような顔を見せた。

「そうか。してつかぬことを訊くが何故魔王の名を騙るのだ?本当の魔王はお主のような変わった匂いをさせなかったし何より容姿も体格も種族も違う」

 俺の目をまっすぐ見てレオパルドは訊いてきた。それに対し俺は意図を話すことにした。

「俺がこの世界で魔王を名乗るのは厄介なものたちが近づいてこないようにだ。今回のような夜盗などが良い例だ」

「なるほど」

「あなたは本当の魔王を知っているような口ぶりだが実際に見たことがあるのか?」

「あるぞ。今奴は魔界の王としてあちこちの国と戦争を始めようと動いている。彼は吸血鬼の血を得たオーガの変異種である。腕が四本あり二本の尾をもち翼を持つ今世紀最強の魔王だ」

「この世界にちゃんと魔王は存在しているのだな。ならば自ずと噂を聞きつけて俺のもとにやってくるかもしれないな。やって来ないようならこちらから行くだけだがな」

「うむ、今回は我が同胞を助けていただいたこと誠に感謝する」

「構わんきまぐれだ。それよりも先ほど今世紀最強の魔王と言っていたが代替わりの方法はあるのか?」

「ええ、あります。次なる魔王になるためにはその魔王を殺し魔王の力の元となる宝玉を手に入れる。もしくは屈服させ配下に加えることです配下にすることで魔王の力が屈服した者の方を強者とみなし力が譲渡されるのです。ただしこの方法で魔王になれるのは魔族だけです」

「そうか、とりあえずは向こうの出方次第だな。そうだレオパルド国王俺が助けたエルフたちをここに集めてもらえないか少し話がある」

「わかりました」

 五分後レオパルドと共に八人のエルフが集まった。

「助けていただきありがとうございました」

 フィオナ並びにその他の七人も順番に俺にお礼の言葉を述べてきた。

「たいしたことはしていない。だがもしも感謝の気持ちがあるならば俺の頼みを訊いてはくれないか?」

 そう云うとエルフ全員から怯えの表情が目に見えた。

「いったいどのようなことを?」

「それは」

「「「「「「「「それは?」」」」」」」」

「あそこにある山を戴いたからそこに住処を作り過ごそうと考えている。そこで使用人を雇いたいと考えている。それを君たちにやってもらいたいと思っている。仕事内容は家事全般だ。どうだろう?」

 そう云うとエルフたちの顔が明るいものになった。

「やります!やらしてください」

 エルフ全員から受諾を受け俺は三日後から雇うことを話し、山に向かった。山の頂上に上ると草木が大量に生えていて景色を楽しむには無理のあるものだった。そこで俺は【魔法創生】で新しく【硬軟糸】と【能力創生】で【地形操作】を作り、山の三分の一を取り除き国の中にあるエルフの集落と簡単に行き来できるように階段を作った。地形操作で段差を作るには少し骨が折れたがやってみると快適に登り降りができた。段数25段

次に【硬軟糸】を使用して木々を切り倒し燃やして処分した後に万物創造で巨大な黒色の水晶の城と赤と黒の模様を基調にした家具を作り出し屋敷の内装に手を加えた。これにて小説やお伽話に出る魔王城の完成、名を水晶城(クリスタルキャッスル)

 水晶城(クリスタルキャッスル)にある自室に万物創造で創った姿見の鏡を設置して転生した自分の姿を映した。

 顔は中性的で、シルバーブロンドの長髪。背丈は百九十超えだった。

 自分の姿を確認後万物創造で城の守護者を創造することにした。守護者は大前提として強いことと家事全般書類作成などの事務仕事ができ知恵者であること。種族は魔物であること。それらを統合して想像できるものを作ることにした。

 万物創造で生命体を創る場合能力値などを正確に設定できる。だが今回は俺自身の能力値をトレースした。外見などは自身のイメージで構成する。

 数分後、俺は魔族の女性二人を創ることに成功した。

 フィファニー、レベル:∞(インフィニティ)、種族:最上位吸血鬼、魔力:∞(インフィニティ)、攻撃力:∞(インフィニティ)、防御力:∞(インフィニティ)、魔眼レベル:∞(インフィニティ)。

魔法

 【天候操作魔法】無属性魔法

 【環境操作魔法】無属性魔法

 【封緘魔法】無属性魔法

 【次元列斬】無属性魔法

【重力操作魔法】無属性魔法

【生命力感知】無属性魔法

【魔力感知】無属性魔法

 【魔法・物理反射】無属性魔法

飛翔魔法(フライ)】無属性魔法

独特能力(ユニークスキル)

 【家事(ハウスワーク)(マスター)

 【格闘技】

空手、詠春拳、テコンドー

 【日光無効】

 【太陽無効』】

 【紫外線無効】

 【吸血】

 対象の生命力と魔力を奪って回復することができる。

 対象を吸血鬼の眷属にすることが可能。種族問わず。

魔眼【夢幻眼】 

 その瞳に写したものを幻覚に引きずり込み自害させることができる。

誘惑(チャーム)の効果で対象を操ることが可能。

【操作魔法・操作スキル無効】

 創造主以外の外敵からの干渉を無効とする。

 見た目はブロンドの髪で碧眼そして巨乳。背丈は俺と同様百九十超え。

 エリザベス、レベル:∞(インフィニティ)、種族:最上位吸血鬼、魔力:∞(インフィニティ)、攻撃力:∞(インフィニティ)、防御力:∞(インフィニティ)、魔眼レベル:∞(インフィニティ)。

 魔法

 【天候操作魔法】無属性魔法

 【環境操作魔法】無属性魔法

 【封緘魔法】無属性魔法

 【次元列斬】無属性魔法

【重力操作魔法】無属性魔法

【生命力感知】無属性魔法

【魔力感知】無属性魔法

 【魔法・物理反射】無属性魔法

飛翔魔法(フライ)】無属性魔法

 独特能力(ユニークスキル)

 【家事(ハウスワーク)(マスター)

 【格闘技】

 空手、詠春拳、テコンドー

 【日光無効】

 【太陽無効】

 【紫外線無効】

 【吸血】

 対象の生命力と魔力を奪って回復することができる。

 対象を眷属にすることが可能。種族問わず。

魔眼【蛇眼(じゃがん)

 瞳に写した対象を石化させ破壊する。

 世界に浮遊する魔力を収束させ高質力エネルギー波を放つことができる。

【操作魔法・操作スキル無効】

 創造主以外の外敵からの干渉を無効とする。

 見た目は銀色の髪で空色の瞳を持つ巨乳。背丈は俺と同様百九十超え。

 俺は今回双子の吸血鬼を作ることに成功した。

「目覚めよ、ティファニー、エリザベス」

 目覚めたティファニーとエリザベスは跪きこう言った。

「「我が造物主アズラエル・ソロモン様何なりとご用命を」」

「ティファニー貴様を水晶城(クリスタルキャッスル)のメイド長に任命する。そしてエリザベス、貴様を水晶城(クリスタルキャッスル)の副メイド長に任命する」

「「はっ」」

   五

 水晶城(クリスタルキャッスル)城内

約束通り二日後に救出した女性のエルフ八人を雇うことにした。

 名前をフィオナ、シャーリー、フェリス、ラン、シウ、サファイア、アマデウス、サリエリ、アリス。

「君たちにはこの城の家事全般をやってもらう。だれがどんな作業をするかはメイド長と副メイド長のティファニーとエリザベスが決める。それとこのメイド服が君たちの作業着だ」

「「「「「「「「可愛い」」」」」」」」

 このメイド服は俺が万物創造で創って【蒼炎(ルシファー)】【紅炎(マルバス)】【漆黒炎(ダエーワ)】と新たに作った【魔法・物理反射】と【認識】を混合させた。『認識』は着用者に身の危険がある場合に発動される。魔法の場合は【漆黒炎(ダエーワ)】、物理攻撃の場合は【蒼炎(ルシファー)】、怪我、致命傷、死亡状態には【紅炎(マルバス)】が着用者の身を守る。基となる魔力供給はスキル時空間操作を使用して俺自身の魔力を消費するようにできている。これによりフィファニーやエリザベス他八人のエルフに何か危機的状況にあった場合すぐに雇い主である俺にも伝わってくるという仕組みだ。

 仕事内容を説明した俺はエルフ達に支払う給金を稼ぐために様々な魔法を作成した後に冒険者組合に行き冒険者になることを決意して城を後にした。


  第二章自称魔王冒険者になる


   一

  冒険者組合はムーンライトにある。冒険者にはそれぞれランクがある。

SSランク、Sランク、Aランク、Bランク、Cランクと順になっている。俺は中に入りすぐさま受付に足を運んだ。

「すまないが、冒険者として稼ぎたいのだが、どのように仕事を受注すればよいのだ?」

 受付嬢はブロンドのケモミミ顔はかなり美人といういで立ちの獣人族の女だ。

「はじめまして、私は受付嬢のフランソワ・フランシスです。こちらのプレートに手を翳して魔力を流してください。そうすることでこのプレートにあなたの名前とレベルそれから冒険者ランクが浮かび上がります。冒険者ランクは自身の強さによって異なります」

「つまり簡単にSSランク冒険者に承認されることもあるということか」

「そのとおりでございます」

「了解した」

 俺は手をプレートに翳した。するとプレートが輝きだして文字が浮かび上がった。

「では、確認いたしますね。名前はアズラエル・ソロモン、レベル∞(インフィニティ)!、冒険者ランクはSSランク!です」

「そうか。ではSSランクの仕事を受注したい」

「う、承りました」

 受付嬢のフランソワからSSランクの大量のゴブリン退治の依頼書を貰い現地へ向かった。

 魔界は自然が豊かでごつごつとした岩や火山が多くある国だ。上級魔族の周辺の土地は豊かな草木が生え果物や野菜を育てるための畑などもある。魔族は好んで人間の肉を食べるものも多いが、牛や馬や豚の肉を食べるものも多い。だが人間の肉の味を知った魔族はその美味さが忘れられなくなり中毒になり人間を襲い続ける者もいる。

 この世界では方角によって月の色の見え方が異なる。東が蒼色、西が紅色、南が白、北が碧色というように見える。この現象は月に住まうものが見せる幻だと、この世界の伝説で残されている話だ。

 ゴブリンは魔界にある山の麓に生息している。そこにはゴブリンレベル:5、ハイゴブリンレベル:20、グレーターゴブリンレベル:50の三種類がいる。その三種族はムーンライトに人間を襲いに夜間にやってくることがよくあり、街の住人が怯えているという。そして今日か明日にでもやってくるという情報が組合の方に伝わってきている。前に討伐に行ったAランク冒険者の連合パーティーは一夜にして全滅している。故にSSランクとなった。

 俺は現地に着くと、ゴブリンたちを率いたひと際大きいグレーターゴブリンが巨大な斧を振り上げ今にもムーンライトに向かおうとしていた。

「うじゃうじゃと、鬱陶しいな。【蒼炎(ルシファー)】!、【黄緑炎(マモン)】!」

 大量のゴブリンとハイゴブリンを焼き尽くした後グレーターゴブリンとの一騎打ちとなった。斧を勢いよく振り下ろしてくるグレーターゴブリンの猛攻をその場で大きく動かず最小の動きで躱し、頭部に白炎(サマエル)を放ち焼き尽くした。白炎(サマエル)の炎は煌々と白く淡い炎で蝕むようにグレーターゴブリンを飲み込んでいくように見えた。

 その後数々の依頼をこなしていった。大量の炎蜥蜴(サラマンダー)討伐、鱗が金剛石でできた金剛石結晶龍(ダイヤモンドドラゴン)討伐、大量の魔獣討伐など。大量の魔物やドラゴン魔物を倒していった。暫くすると一週間で二十四億アリエル貯まった。そして管理者(アドミニスト)権限(レータ)を開いてみると。

 魔法

【瑠璃色之業火ルシファー)】レベル:∞(インフィニティ) 無属性魔法

万物全てを焼き尽くす能力。火が付けば対象を燃やすまで消えることはない。ただし魔法で放たれる魔力の塊を焼くことはできない。だが魔法で作成された武具は作成された時点で魔力の塊から物体という範疇に分類されるためこれは燃やすことができる。この魔法は魂もろとも相手を燃やし尽くす。

最大熱量四千度

宵の明星

 宇宙空間を作り出し粒子状の【瑠璃色之業火(ルシファー)】を星々のように見せて周囲に鏤める。鏤められた炎は相手を囲うように収縮し極細の炎でできた切っ先の鋭い針となって襲ってくる。そして貫かれた個所から発火し相手を燃やし尽くすまで消えることはない。

統一儀式(リトュアール)

漆黒色之業火(ダエーワ)】レベル:∞(インフィニティ) 無属性魔法業

魔力を基に放たれた魔法や作成された物すべてを燃やし尽くす。そして魔力で負った症状(毒、麻痺、焼けどなど)や状態(部位の欠損・死亡した生命体)を元に戻すことや蘇生せることも可能。ただし人間を含めた生命体は燃やして殺害することはできない。コートの様な形状をし両襟を繋ぎ目のない金色の骸骨のアクセサリーが繋いでいる。

漆黒の裁き

 【漆黒色之業火(ダエーワ)】の炎で燃やされた相手は能力(スキル)と魔法を燃やし尽くされる。それにより能力(スキル)と魔法が永久に失われていまい再度同じ能力(スキル)と魔法を使用することができなくなってしまう。

相手の能力(スキル)か魔法を奪うことができる。

統一(リトュ)儀式(アール)

黄緑色之業火(マモン)】レベル:∞(インフィニティ) 無属性魔法

広範囲灼熱攻撃。背に双翼を模した黄緑色の翼を生やす。その羽の一枚一枚が灼熱の炎を帯びている。羽を空中に放つことにより、その羽は双頭の猛禽類となり空中で翼を羽ばたかせ黄緑色の灼熱の炎をまとった羽を雨のように降らせる。これを『黄緑色の雨』という。火が付けば対象を燃やすまで消えることはない。この魔法は魂もろとも相手を燃やし尽くす。

黄緑炎(マモン)(テンペスト)

背に双翼を模した黄緑色の翼が四枚羽に増える。

猛禽類の羽も四枚羽になる。

猛禽類の羽から着弾追尾点火する羽が放たれる。灼熱の炎を纏った羽に風属性と雷属性を纏わせ、それが地面や生物に触れることにより、着弾点化する。着弾時に電撃が広範囲に走り周りにいる敵を感電させ、点火することで大きな黄緑色の爆発が起き攻撃範囲を拡大させる。そして爆発により生じた巨大な爆風を風属性の効果でさらに広範囲に緑黄色の火の粉を乗せ拡大して火の粉に触れたものも燃やす。その炎に触れたものは魂もろとも灰も残らず塵と帰す。

最大熱量四千度

統一儀式(リトュアール)

無色之業火(サマエル)】レベル:∞(インフィニティ) 無属性魔法

光の速さで無色の炎を放つ。火力は『瑠璃色乃業火(ルシファー)』を遥かに超える。火が付けば対象を燃やすまで消えることはない。

無色乃業火(サマエル)無炎(むえん)(てん)

無色乃業火(サマエル)を自身の身体に纏うことができ、それにより物理・魔法攻撃から身を守ることができる。そして遠隔操作が可能になり自身の周囲の空間から無色之業火(サマエル)を光速で出現させ相手の視界に映らない速度で放つことができる。

無色乃業火(サマエル)の炎で巨大な結界を張ることができる。効果は無炎(むえん)(てん)と同様に物理・魔法攻撃から身を守られる。

この魔法は魂もろとも対象を燃やし尽くす。

最大熱量六千度

統一儀式(リトュアール)

紅色之業火(マルバス)】レベル:∞(インフィニティ) 無属性魔法

(スカーレット)息吹(リバイブ)

自分以外の生命体の症状全回復・生命の蘇生をすることができる。対象者の状態が治るまでこの炎は消えることはない。

生と死を焼き尽くし、死者・生者を不老不死にすることも可能とする。

統一儀式(リトュアール)

紫色之業火(アスモデウス)】レベル:∞(インフィニティ) 無属性魔法

 粒子状の紫色の菌を相手の周囲に発生させる。それは体温に反応して対象の肉体に侵入して幻覚作用を齎して内部から発火させる。

 魂もろとも燃やし尽すまで消えることはない。

 統一儀式(リトュアール)

【魔法付与】無属性魔法

【混合分解】無属性魔法

飛翔魔法(フライ)】無属性魔法

【硬軟糸】無属性魔法

 所有武具一覧

【魔剣ルシファー】レベル:∞(インフィニティ) 魔具

【魔剣ダエーワ】レベル:∞(インフィニティ) 魔具

 独特能力(ユニークスキル)

【不老不死】

【魔法創生』

【万物創生】

【能力創生】

【地形操作】

【変質】

能力(スキル)無効】

【生命力感知】

【魔力感知】

【時空間操作】レベル:∞(インフィニティ) 

 すべての炎のレベルが∞(インフィニティ)表記され属性も炎属性から無属性魔法へ変質していた。さらに名称も変わり追加効果も増えた。そしてすべての炎同士の混合分離が可能になった。レベル1だったときは混合が不可能だったが、無属性魔法もしくは∞(インフィニティ)に変質したことで可能になったと見るべきだろうか。

次に魔剣同士を混合してみると日本刀の形状をした『魔剣業炎(エリ)(ゴス)』を作ることができた。

魔剣業炎(エリ)(ゴス)

【斬圧】

 刀を振ることで対象に斬圧を繰り出せる。

【斬撃】

 刀身に魔力を注ぎ込むことで赤黒いオーラを纏わせ、赤黒い炎を纏った斬撃を放つ。

奪失剣(ロベリーズロスト)

 斬った魔法、能力(スキル)、対象者問わず燃やし尽くす。斬られた対象者は魔法と能力(スキル)が永久に使えなくなる。

 斬られた対象者は魔力を奪われ永久に失う。

 次に能力(スキル)【変質】を使用して【時空間操作】を【時空間支配者(フラウロス)】に変質させた。すると新しい効果を発現させた。

時空間支配者(フラウロス)

【時間停止】

【時間加速】

【時間返戻】

【空間移動】

固有空間(サームハラル)

【空間変替】

【過去改変】

【未来改変】

時空間支配者(フラウロス)】に変質したことで【過去改変】と【未来改変】が発現した俺は前に創った【魔法付与】を作らなかったという現在にするため【過去改変】を行った。過去改変後管理者(アドミニスト)権限(レータ)から【魔法付与】が削除されていた。

次に未来改変を行うつもりでいたがこの能力は現在から未来に存在するものに影響を与えるものだ。故にこれは対人戦闘向けであることが推察される。

 例えば、相手が数段階武器を強化させ形状を変化することができるとすれば最終段階まで強化させてから未来で破壊するといったような使い方だ。初期段階の形状で破壊したとしても強化して形状変化が可能だった場合それでは意味がないからだ。最終段階まで強化させてからは破壊することにより相手の戦意を喪失させ絶望の淵に叩き落すといった精神的攻撃としても有効と考えられる。他にも数秒先の未来で対象そのものに干渉して深手や致命傷を負わせるなど。

一通りを見てから管理者(アドミニスト)権限(レータ)を閉じた。

 城に戻ってみると、ティファニーとエリザベスが執務室で俺の帰りを待っていた。

「ただいま、今帰った」

「「おかえりなさいませ、アズラエル様」」

「かわったことはなかったか?ティファニー」

「いえ、なにもございませんでした」

「そうか、フィオナたちは帰宅したようだな」

「はい」

 俺は椅子に座り、煙管を潜らせた。煙管は万物創造で創った俺のオリジナルだ。吸い口には狐の尾、雁首には狐の胴体から頭部までを彫っている。

「明日魔王討伐のクエストに行ってくる。留守は任せたぞ」

「はい。畏まりました」

 冒険者ギルドの方に先ほど顔を出すとギルドマスターが慌てていたから理由を訊いてみると、どうやら国々の国王の集まる会議の最中エルフの長レオパルドと魔王が言い合いになり魔王が怒りエルフの国を攻め落とし全てのエルフを奴隷にすると言い出した。そのことが国中に漏れレオパルドが魔王討伐のクエストをだした。成功報酬三十億ノエル。それを聞いた冒険者達の中には討伐に行く者もいればしり込みして挑まず他のクエストでのレベル上げにいそしむ者もいた。俺はこれを機にレオパルドから魔王の情報を訊きだすことにした。

 レオパルドの住処に行き大きな声で呼んでみた。すると中からレオパルドが出てきた。

「何用ですか?アズラエル殿」

「魔王の討伐のクエストの張り紙を見てきたのだが少し話がある」

「は、はい」

 俺は魔王の名前と使用魔法やスキルについて聞き出そうとしたが、魔王が戦ったところを目撃した者はいないということがまず一つ。その理由は魔王と対峙した勇者を含めた数々の冒険者は奴の圧倒的力に死という敗北を刻まれ能力や魔法は闇の中だからだ。ただし名前は知ることができたその名はフォルス・ロギア。


第三章自称魔王、魔王討伐に向かいます

  俺は他の冒険者よりも先に魔王の住む魔王城の門の前に着いていた。

俺は門に入る前に『黄緑炎嵐(マモンテンペスト)』で魔王城を上空から奇襲し、魔物らしき断末魔が響き渡った。次に鋼鉄でできた門を瑠璃色之業火(ルシファー)で溶解して穴をあけ侵入した。すると最上階に繋がる階段があり階段のすぐ近くには魔物が『黄緑炎嵐(マモンテンペスト)』で塵になる最中だった。

「貴様が魔王城に奇襲をかけた者だな」

「そうだ」

「四天王が一人我ジオウを倒したからと言って魔王様のいる最上階の王の間までたどり着けると思うなよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 そう言い残し魔物は跡形もなく燃え尽きた。俺は飛翔魔法(フライ)を使って王の間の扉の前までたどり着き扉を開けた。

「来たか……、冒険者よ」

 紅髪紅髭を生やした額に二本の黒い角を生やした長身の赤いマントを背にした男は襲撃によって穴の空いた天井から差す月明かりに照らされながら大剣の切っ先を床に刺し侵入者を待っていた。

「ああ、来てやったぜ魔王フォルス・ロギア。お前から魔王の座を奪いにな!」

「フッ、勇者キサラギではないようだな。この力を欲するか人間の分際で」

 俺は魔王のステータスを真実瞳(アンドロマリウス)で視た。

 フォルス・ロギア レベル:MAX 種族:魔王、魔力:986574、

攻撃力:1089546防御力:129387

 魔法

 【天地明殺】

 空に漆黒の太陽を生み出しそこから幾億の闇属性を宿した漆黒色の溶岩を降らす。

 【魔王領域(サタンフォーム)

 自身のステータスを倍にする

 【能力(スキル)喰い】

 相手のスキルをランダムで奪うことができる

 独特能力(ユニークスキル)

 【オーラ開放】

 魔力を他者に視認させることができる。レベル70以下の相手を失神させることができる。ただしレベル71以上の相手には視認させることしかできない。

鉢特摩(ハドマ)の鎖】

 この鎖に捕縛されたものは全身が凍り付きやがてひび割れ全身が崩れ落ちる

 グランドオーダー

 自身の配下を次元を超えて呼び出すことができる

 【占星術】

 予知を見ることができる

 【蘇生】 

 一度だけ生き返ることができる。

 【キメラ作成】

 複数の魔族や魔獣を合成してキメラを作ることができる。

 武具

 【魔剣レーヴァテイン】

 この剣で傷一つでもつけられた者は魂を消滅させられる。

(これが魔王のステータスかさほど恐れるスキルはなさそうだが、鉢特摩(ハドマ)の鎖と蘇生には気を付けた方がよさそうだな)

「ジオウは死んだようだな、ならば【グランドオーダー】!」

 魔王がスキルを発動させると3体の魔族が次元を渡って魔王の前に呼び出された。

「お呼びでしょうか?魔王様」

「あの者を抹殺せよ」

「「「はっ、ただちに」」」

 3体の魔族が俺の方に向き直った。

「我が名はプライド」

「私の名はソル」

「俺はクルポポ」

 見ると吸血鬼、蛇の尾と獣と人間の女の合成キメラとマンティコアのようだ。

「来い、3匹まとめて相手してやるよ」

「調子に乗るなよ人間!」

「食い殺してあげるわ」

「俺の毒でしびれさせてから喰ってやる」

 プライドは翼を羽ばたかせ空中に浮上して魔力を圧縮したエネルギー波を放ち、ソルは瞬間移動で爪を立てながら近づいていきて、クルポポは遠距離からサソリの尻尾から毒霧を放ってきた。

「ふあぁ~あ、役不足だ失せろ!無色之業火(サマエル)無炎(むえん)(てん)

 俺は欠伸をしてから無色之業火(サマエル)をクルポポとソルに放ち、無炎(むえん)(てん)でプライドのエネルギー波を防ぎ魔剣業炎剣(エリゴス)の斬撃でプライドを一太刀で屠った。

「これほどとは、貴様何者だ?」

「魔王だ」

「何?」

「聞こえなかったか魔王だといったんだ」

 それを聞いたフォルスは高笑いを浮かべそれからレーヴァテインを振りかざし俺の方に向かってきた。

「我から本気で魔王の座を奪うとな、戯言をおおおおおおおおおお!」

 向かってくるフォルスに対し俺は漆黒色之業炎(ダエーワ)の漆黒の炎を体中に纏って魔法攻撃に対処可能な状態にして、振り下ろされたレーヴァテインを魔剣業炎剣(エリゴス)で受け止めたと同時に混合分解の独特能力(ユニークスキル)を使いレーヴァテインを分解し、魔剣業炎剣(エリゴス)と混合させた。

「な、なに我が剣が!消えた。ど、どうなっているのだ?貴様その剣は何だ!先ほどと形状が異なっているではないか!」

 魔剣レーヴァテインを混合させた魔剣業炎剣(エリゴス)は強力な魔力を内包した紫紺の大剣へと姿を変えた。

「ものは試してみるもんだな。さてお次はこれを俺自身と混合さ出し入れしやすくするか」

 混合させてみると魔剣業炎剣(エリゴス)は俺の肉体の一部となり、出し入れするのが自由自在に出になった。

「さて次はお前だ」

「この俺をなめたこと後悔させてやる人間!天地明殺」

フォルスは青筋を浮かべ天地明殺を発動させた。

 漆黒の太陽が月を飲み込むように空から姿を覗かせ動き出す。その瞬間「時空間支配者(フラウロス)」で俺は時間停止を行い、フォルスに至近距離まで近づき彼に手で触れて漆黒の裁きで能力(スキル)蘇生を焼き払った。そして魔王フォルスを分解し魔王の力の源となる核と俺自身と混合させた。すると体が闇色に光り輝きだしすぐに収まった。管理者(アドミニスト)権限(レータ)を開いてみた。すると種族が魔王に変質され、独特能力(ユニークスキル)に【超速再生】、【オーラ開放】、【鉢特摩(ハドマ)の鎖】が追加された。魔法の方も同様に天地明殺、魔王(サタン)領域(フォーム)を習得した。その後鉢特摩(ハドマ)の鎖】を『摩訶鉢特摩』に変質させた。

 『摩訶鉢特摩』

 この鎖に捕縛されたものは全身が急速に凍り付き極寒の地獄『摩訶鉢特摩』への門が開かれ飲み込まれる。その後門の扉は締まりその身はゆっくりと崩れ去る。

「これで俺は魔王となったわけだが、この城をどうしたものか?」

《ならば燃やし尽くしてしまえばよいのです我が主よ》

 俺の頭に直接何者かの声が響いた。

「誰だ、どこにいる」

《私は貴方様が創り出した炎瑠璃色乃業火(ルシファー)の意志です》

 (は?こいつは何を言っているのだ。俺はそんな能力は設定上付けてないはずだが)

《私が意思を持つようになったのは先ほどです。主が魔王になられたことで私たちは意思を持つ業火となって主に仕えるようになったのです》

 (俺の心の声に反応するのか、これは驚いたな。っていうか私たちってつまり他の業火もか、あまり騒がしくしないでくれよな)

《畏まりました。我が主よ》

 意識を集中させ管理者(アドミニスト)権限(レータ)を開くとすべての炎の能力表記の最後に(魔王種に変質したことで意思を持つことに成功した)と表記されていた。

 因みに城は瑠璃色之業火(ルシファー)を最大火力をもって上空で巨大な瑠璃色の炎の球体にして落下させ焼き尽くし消滅させた。


  第四章日常へ


   一

  魔王討伐後帰宅した俺はレオパルドに討伐のことを報告しに行った。

「ありがとうございますアズラエル殿。それでは報酬の方を」

「その前にその報酬についてなのだが、この国を俺に貰えないだろうか?」

「な、何を言い出すのだっ!」

「それはそうだろう魔王を倒したのだからそれなりのものでなければ納得ができない」

「しかし、エルフの国を渡すなど・・・・・・」

「では、こう言ったら渡してくれるかな?俺は魔王になった」

「な、なんと!」

 俺は制御していた巨大な魔力を解放してみせた。

「な、これがアズラエル殿の魔力……息が、苦しい」

「返事は?」

「わ、わかりました。この国をあなたに譲渡します」

「それでいい。後これからのエルフのことで言っておくことがある」

「そ、それは」

「今まで通り生活していて構わない。それだけだ」

「い、今まで通りとは・・・・・・よろしいのですか」

「ああ、構わない。その方が賑やかでいいからな。自然豊かなこの森もそのままにしておく。それと国名はソロモンとする」

 翌日、レオパルドは俺がこの国の王になることと国名がソロモンに変わることを容認した理由を事細かに説明した。レオパルドが説明を終えると俺はエルフとドライアドに挨拶をすることにした。

「今日からこの国の王になることになったアズラエル・ソロモンだ。よろしく」

 俺が挨拶をすると、動揺した表情の者が多数いた。

「いきなりのことで驚いているものも数多くいるだろう。だが安心していい君たちから私に危害を加えない限りこちらからは手出しはしないと約束しよう。それと俺がこの国の王になったからにはとりあえずは三つのルールを守ってもらいと考えているそのルールとは、まず一つ国内での国民同士の殺しを禁ずる。ただし正当防衛の場合は殺害しても罪には問わない。ただし嘘をついた場合は俺が殺害した者を処刑する。二つ他種族を見下さない。三つ何かあった場合は必ず報告、連絡、相談をすること。これを略して『ほうれんそう』という。以上」

 俺がルールを話し終えると挙手するものが一人。

「はい、フィオナ」

「あの三つ目の報告、連絡、相談は誰を介せばいいですか?」

「いい質問だ。今のところは俺を介してくれればいい。今後ちゃんとした担当者を決めるつもりでいる」

「わかりました」

「他には何か訊きいておきたい事はあるか?」

 次に手を挙げたのはフィオナの父ギルバートだ。

「一つ目の殺しについてなのですが、嘘かどうかはどうやって判断するのですか?」

「それは俺の能力(スキル)で知ることができるので問題はない。もちろん皆にもどういった経緯があって対象が殺されてしまったのかを確認してもらう」

 それを聞くとみんな一様に驚きの顔を見せた。

「とりあえず質問は以上のようなのでこれにて閉幕とする」

 一通りの話を終えて俺は城に戻り昼食を食べることにした。メニューはステーキ、炊き立てのごはん、野菜炒めだった。因みに米や調味料は万物創造で俺が出した。炊飯器も同じく。

 食事をしているとフィファニーが横から声を掛けてきた。

「アズラエル様今日のご予定は?」

「この国中を散歩して色々見て回る。その後は国々の王が集まる議会『フュテュール』があるから俺はレオパルドと共に向かいこの国の王となったことを告げに行く。フィファニーお前も俺とともに同行せよ」

「畏まりました」

「エリザベス、俺が帰宅するまで城のことは頼んだぞ」

「はっ、畏まりましたアズラエル様」

「それとフィオナたちにこれを渡しておけ」

 先日俺はレオパルドとの話を終えた後に万物創造で八つのそれぞれ色の異なる指輪(リング)を作り出した。

「これはいったいなんですか?」

「護身用に持たせておけ。これに一度魔力を通せば身を守る武器となる」

「武器ですか。とても気になります」

「そ、そうか。そんなたいしたものではないのだがな」

 この世界では人間は魔力を持たない者もいるが魔族やエルフといった種族はすべての者が魔力を持って生まれてくることはレオパルドに確認済みだった。だから俺はこの指輪(リング)を作った。

「俺からのプレゼントだといって渡してやれ」

 俺は昼食後予定通り散歩に行っていた。その頃フィオナ、シャーリー、フェリス、ラン、シウ、サファイア、アマデウス、サリエリ、アリスたちはというと。

「皆さま、アズラエル様から皆様にプレゼントがあります。こちらです」

 私はアズラエル様から預かった八つの色の異なる指輪(リング)を皆さんに渡し、使い方の説明をした。フィオナさんには群青色、シャーリーさんには翠色、フェリスさんには黄色、ランさんには白色、シウさんには桃色、サファイアさんには青色、アマデウスさんには紫色、サリエリさんには黒色、アリスさんには無色透明の硝子で作られたもの。

「こうですかね」

フィオナさんは群青色の氷でできたガントレット、大気中の水を氷に変化させたり対象を凍てつかせ殺害することもできる。直接打撃を打つことで対象の血液と皮膚を凍らせて砕くこともできる。氷雪系統の魔具。その名は【群青色乃氷籠手(リヴァイアサン)】。

「「「「「「「おおっ!」」」」」」」

「すごいわ」「私もやってみよう」

シャーリーさんには樹木でできた木属性の魔法を混合させた柄。それに魔力を注ぎ込むことで翠色の刀身の二本の剣が柄から伸びる長さは注いでいる魔力の量に比例する。地面に刺すことにより、大樹でできた巨大な蔓を地面から生やして操ることもできる。蔓は触れた対象の魔力と生気を奪う。本数は剣に注いだ魔力の量によって異なる。名を【翠樹剣(ユグドラシルブード)】。

 フェリスさんには雷を纏った槍。投擲すれば次元を超える速さで敵を百発百中で射抜く。名を【絶対(グン)投擲()()()】。

 ランさんには主の代わりに戦いそして守護する光を纏った白き獅子。高速で動き敵に視認を許さず爪と牙で獲物を狩る。名を【(ライトニング)獅子(リオン)】。

 シウさんには桜の花びらをかたどった癒しを齎す杖。名は【治癒(ヴィー)(シニャ)(ロット)】。

 サファイアさんには水の渦を纏うトンファー。魔力を注ぎ続け一定量に達すると渦はさらに加速し触れるだけで対象物を抉ることで殺傷力が上がる。名を【(アクア)(ドラゴン)打突(トンファー)】。

 アマデウスさんには聞いた対象を操作できる紫色の笛。名を【操り人形(マリオネット)(ファゴ)(ット)】。

 サリエリさんには覗いた対象を呪殺に導く闇属性を纏ったモノクルとすべての打撃と魔法を相手に反射する闇属性を纏ったマントです。名を【呪殺片(カースズ)眼鏡(モノクル)&反射(リヴェルベロ)外套(マント)】。

 アリスさんには無色透明の変幻自在の武器。使用者にしか視認することはできない。武器にも盾にもなる。そしてすべての属性を付与可能。つまり属性も変幻自在となる。名を【無色(ヴァッフェ)武器(クラールハイト)】。

「皆さんなかなかにすごいものを手に入れましたね。これならもう夜盗に襲われたとしても皆で力を合わせれば難なく切り抜けられますね」

「ほんとだよ、すごいよこれ、私なんて見たこともない大きな獣だし」

「私はモノクルと外套です」

「この剣は使いやすいな。重さもそれほどでもないしとても良い剣だ」

「私のは敵に視認されにくいから暗殺なんかには向いているのかも……」

「私のはみんなを癒す杖です。花びらが装飾してあって可愛い」

「私は槍だ。頑張って使えるように特訓しよう」

「私は籠手ですね。着けていると力がみなぎってきます。それに心なしか体が軽いように感じて足取りも前よりとても軽く感じます」

「それでは皆さん仕事に戻りましょう」

「「「「「「「「はいっ」」」」」」」」


   ニ

  俺は散歩をしながら辺りの景色を見まわしていた。周辺には森林と呼ぶべき数々の木々が目に優しく心を落ち着かせてくれる。

(レオバルドに会いに行くついでに必要になりそうなものをピックアップしなくてはならないな)

 俺はこの国のありとあらゆるものに目を向け聞き込みをした。その結果必要とされるものは、潜水トイレ、水に溶ける紙日本でいうトイレットペーパーだ。幸いそれは万物創造で創ることができる。だが問題はそれに供給される電気であることだ。そこで俺は道中考えていたこの世界には魔石というものがあるという。俺はそれを万物創造で創れるかを試してみようと考え、創れる場合はそれを基に様々な物を作れるかを試そうと考えている。

 レオパルドの自宅に着き俺は今後のこの国のことを話した後に彼とティファニーと共に向かった。場所はテンペスト帝国中心にある大聖堂だ。

 俺たちは大聖堂に着くと入室手続きを済ませ会議室に入った。そこには円卓があり六席のうち三席が埋まっていた。

「アズラエル殿こちらの席にどうぞ」

 レオパルドが俺に席を促した。俺の右側の席にいるのがリチャード・コニャック、左側がファフニール・トニック。そして正面にいるのがラウ・クリムゾン、『炎に愛されし魔法使い』の異名を持つテンペストの皇帝だ。

「おお、そ奴がレオパルドに代わる次の王か、エルフではないのか?魔力がなく脆弱そうに見えるな。ワッハハハ」

「ずいぶんと弱そうな奴だな」

「そんなことを言ってはいけませんよリチャード、ファフニール。レオパルド事の詳細を私たちにお話しください」

「はっ、陛下」

 レオパルドは俺が何故トワイライトの新しい王になったのかそして国名が変わったのかの理由を周りの者に伝えた。ただし俺が魔王になったことはまだ伏せている。皇帝がレオパルドの話を聞き終えて一息つき、俺に話しかけてきた。

「そうかフォルスを討伐したのがあなただったとは。彼が討伐されたことは知っていましたがSSランクの冒険者ということ以外は全く情報が得られなかったので探していたのですよ。でもまさかそれがあなたのような魔力のない人間だったなんて驚いた」

「そうだな。驚くのも無理はない。今は魔力を抑えているからな」

「魔力を抑えているだって!いやしかし全く感じられないのだが、本来なら完全に魔力を消すことなどできる者はいないはず!できたとしても少なからず漏れ出るはずだが」

「信じられないのであればここでお見せしましょうか?ラウ・クリムゾン、あなたはかなり魔力を鋭敏に感知することができるようなので。先ほど俺たちが入ってきたとき微塵も驚いた表情をされなかった。まるで分っていたかのように。それはレオパルドと私のお付きのティファニーとレオパルドの魔力を感じ取ったからではないか?」

「その通りだ。だから私は内心で三人目である君がいたのが不思議でならなかった。自分で言うのも何なのだが私の魔力感知はかなり秀でている。故に君の話を聞いて魔力を持たない人間が魔王フォルス・ロギアを倒したということが。レオパルドの話を聞いたうえでも疑っている君が魔王を倒したと嘘を語っているのではないかと。だがレオパルドは嘘を吐くような者ではないこともこれまでの彼が築き上げてきた私たちへの信頼でもそれは明らかだ。故にだからこそ私は君を図りきれないのだよ。だから君の本来の魔力を見せてほしい」

「よかろう」

 俺は魔力を全開に開放した。周りを見るととても驚愕している表情のラウ、リチャード、ファフニールの三人の顔があった。そしてみるみるうちに三人の顔は蒼白になり胸を抑え息がしずらくなっているようだった。

「も、もうよい、抑えてくれ」

「ああ」

「はぁー、はぁーはぁーっ」

 三人は息を整えつつ水を口に含みその後最初に口を開いたのはリチャードだ。

「これは、何という強大な魔力なんだ。魔力感知の鋭敏でない俺までもあんなにはっきりとずっしりと重く息苦しい感じを直接的に感じ取ることができるなど、普通の魔力量ではない」

「まったくだ!陛下お身体の方は大丈夫ですか?」

「問題ない。大事ない」

「これで信じてもらえたか?ラウ・クリムゾン」

「ああ、信じよう君とレオパルドの言葉が誠であると」

 俺はこれからのソロモンのことについて様々な話をした。主に国の法律などをメインに。そして最後にフォルスが言っていた勇者キサラギのことについてラウに訊いた。

「勇者キサラギとは我が国テンペストのSSランク冒険者キサラギハルオミの事でしょう。二年前に一度魔王フォルスと戦い一太刀浴びせ一度屠った男です。しかしフォルスは蘇生し隙を突かれキサラギは逆襲に合あい瀕死の状態で逃げ帰り今はどこかに修行の旅に出て今だ帰らずにいる」

 キサラギの情報を訊いた後すぐに城に帰宅した。

「ただいま」

「「「「「「「「おかえりなさいませ。アズラエル様、ティファニーメイド長」」」」」」」」

「おかえりなさいませ。アズラエル様、ティファニー」

「ただいま、エリザベス、みんな」

 皆に目を向けると色の異なる指輪(リング)を薬指にしていた。

「皆、指輪(リング)は気にいってもらえたか?」

「「「「「「「はい」」」」」」」」

「その指輪(リング)の正式名称はまだ聞いていないだろう、それは『ソロモンリング』という。君たちにはその指輪(リング)で俺が留守の時にこの屋敷を守ってもらいたい。頼んだよ」

「「「「「「「了解しました。我が主様」」」」」」」」

(主様って、言わせているのはエリザベスか?まぁいいか)

「それと、ティファニー、エリザベス、フィオナ、シャーリー、フェリス、ラン、シウ、サファイア、アマデウス、サリエリ、アリス君たち十一人を『魔王十一勇士』と命名する。よいな」

「「「「「「「「「「はい」」」」」」」」」」」

(よかった気にいってもらえたみたいで。八人もいると四天王とは呼べないし、かといって八天王っていうのもなんだかなぁーだし、それなら真田十勇士みたいでこの名前の方が格好いいからな)

 大聖堂会議室

「アズラエル・ソロモン危険な男だ」

「まったくでございます」

「どうにかして始末してしまった方がよいのでは?フォルネウス・ロギア以上に危険でございます」

「わかっている。だがどうしたものか私が直接手を下すわけにもかない。暗殺に適した者を雇うか」

「それではラウ陛下直属の暗殺部隊を動かしてはどうでしょう?」

「ならぬ、それでは簡単に足が付く可能性がある。それは最後の手段として考えておくとして、誰か凄腕の暗殺者を知らぬか?」

「それならば、彼奴はどうでしょう?影の暗殺組織『絶影』その二番隊団長『クロコ』と呼ばれている闇魔法の使い手です」

「その者の武勇ならば聞いたことがある。私の先代の皇帝の元側近だった男の話だな。今は落ちぶれて暗殺家業に身を投じたときいている。原因は先の戦争で帝国側の魔法がクロコの妻に当たり亡くなられたからだと。そしてそれが先代の命令であったことだとか。理由は先代が彼女をメイドとして雇っていた時期に肉体関係を強要しそれを暴露される恐れがあったからだとクロコは証言した。だが先代がそれを握り潰し彼を拷問し闇市に売ったときいている」

「よくご存じで陛下」

「王宮ではよくその話が持ち上げられたからな。クロコの使う闇魔法はターゲットの親しい者に殺させるそして殺させた相手を自害させ痕跡を決して残さないというやり方で有名になり二番隊団長にまで上り詰めた男だと」

「彼奴に依頼をすれば簡単に暗殺してくれるでしょう」

「そうだな、ではすぐに依頼をしておいてくれ。金額に糸目は付けない」

「「はっ」」


   三

地獄(アンフェール)(キャッスル)執務室

 俺は夜遅く執務室で一人新しい魔法とスキルのことで頭を悩ませていた。特に意思を持った炎のことを。

瑠璃色(ルシ)の(ファ)業炎()

《はっ、我が主御用でしょうか?》

「ああ、漆黒色乃業炎(ダエーワ)黄緑色乃業炎(マモン)無色()の(マエ)業炎()紅色()の(ル)業炎(バス)紫色(アス)の(モデ)業炎(ウス)と話がしたい。どうしたらいい?」

《それでしたら内に意識を集中させ呼び出せば主の声に応えるでしょう》

 そう言われて俺は瑠璃色(ルシ)の(ファ)業炎()に言われたとおり内に意識を集中させて呼びかけた。

《クックック、お呼びでしょうか主》

《《何用でしょうか主様》》

《主様》

《フッフッフ、呼びましたか主様》

《あらら、主様お呼びかしら》

 俺の声に応えた炎たちは俺の体から六枚の羽を生やした人間の姿で目の前に現れた。

 長身の瑠璃色の髪をして眼鏡を掛けた黒スーツ姿の男性、漆黒色の髪と瞳を持ちラ黒いライダースジャケットに黒いパンツを履き金色の髑髏のネックレスとピアスをした男、黄緑色の左右の目が緑と黄色に分かれた長髪のシャツとジーパンを着こなした中性的な顔立ちの男性、次は黒髪オールバックに灰色のスーツ姿の男性、紅の背中までのびた長髪の男性、最後に紫色の瞳をしたブロンドヘアに神秘的でダークなメイクのゴシックロリータ姿でストラップシューズを履いた巨乳美人な女性が現れた。

「何というか姿と恰好が不自然な気がするのだが何故だ?」

 俺はそう瑠璃色(ルシ)の(ファ)業炎()に訊いた。

《それはですね主が日本という国にいたときの記憶をもとに我々はこの姿になったのです》

「ならばなぜ羽が生えているんだ?そんな人間はいなかったが?」

 瑠璃色(ルシ)の(ファ)業炎()に訊くと紫色(アス)の(モデ)業炎(ウス)が割って入り答えてくれた。

《それはね主様が前の世界に伝わっていた悪魔をイメージしてのものだからよ》

「そ、そうか」

(俺は確かにファンタジーや神話や旧約聖書に登場する神や天使や悪魔、魔王といった類のものが好きだったが、こんな形で影響を及ぼすとは思わなかったな。俺の中では魔王といったら悪魔を使役したりするものだったり街や世界を滅ぼすものだと思っていたのが大きかったからな)

「皆に訊きたいことがある『統一(リトュ)儀式(アール)』とは何なんだ?俺の混合分離とどう違うんだ?」

《それはですね、我々の真の力を発揮できる一度だけしか使用することのできないものです。我々が統合され一つとなり更なる力を主様が得ることができます。その際我々の意志も統合され全く新しい意志が生まれあなたの手助けをしてくれるでしょう?》

統一(リトュ)儀式(アール)を使用した後はどうなるんだ?俺はその炎を一度きりしか使えないのか?」

《いえ、問題なく使用後も使えます。しかしもう一度我々を分離することはできないのです》

「なるほどな、わかったならば現状で敵わない敵が現れたら使うとするよ」

《これは主の力ですお好きな時に使ってくださるのが我々の願いでございますのでお気遣いは必要ありません。ですが我々のことを思ってのお言葉痛み入ります》

《なんと慈悲深いお言葉なのかしら、うれしいです。主様》

《クックックお優しい主だな》

 話もひと段落すると唐突に魔力が減少する感覚に陥った。

「ん?この感覚は?」

《クックック主、お気づきになられましたか?》

漆黒色之業炎(ダエーワ)、お前も気がついたか」

(これはフィオナたちに何かがあった事を意味している。そして使われた魔法は漆黒色之業炎(ダエーワ)だということも)


  第五章アズラエル・ソロモン暗殺計画始動


   一

  私、フィオナと他のみんなの掃除がひと段落していた時のことだった。私、ランさん、シウさんと三人で掃除を終えたところでした。

「あ~あやっと終わったよ」

「そうですね、掃除は終わったから夕食の準備をしないと」

「ええ、そうね今夜の夕食は何にしましょうか?主様からは一通りの食材は戴いているので足りないものは倉庫の方で調達をすれば問題ないわ」

「それならチャーハンというものにしませんか?アズラエル様が手書きで作ってくださった料理本を確認しながら」

「そうですね」

 そんな話をしていた時のこと。「ブオッ」という何かが燃えるような音は背後で耳にすると、私の背中から漆黒の炎が『何か』を燃やしたようだった。

「こ、これは敵ですっ!皆さん戦闘態勢に入ってください」

私の合図でソロモンリングに魔力を注ぐランさんとシウさん。形状を変化させた武器を構え敵の出方を見る私達。すると私の背後にある窓ガラスの割れる音とともにフードを被った黒ずくめの人物が城内に侵入してきた。

「なぜ俺の魔法が通じなかった。答えろ!小娘」

(俺の魔法が効かなかった!一体どうなっている)

「敵にそんなこと言うはずないだろ」

「まったくです」

「二人とも、敵を殲滅しましょう。アズラエル様に危害を加える者をこの屋敷から排除しますよ」

「ああっ!」

「はいっ!」

私、ランさん、シウさんは【群青色之氷籠手(リヴァイアサン)】、【(ライトニング)獅子(リオン)】、【治癒(ヴィー)(シニャ)(ロット)】に形状変化させた武器で攻撃を仕掛けた。まずは私の【群青色之氷籠手(リヴァイアサン)】で敵の足を凍り浸けにして身動きができないように封じ、次にランさんが【(ライトニング)獅子(リオン)】で相手の頭上から攻撃を仕掛けた」

「甘い!、魔法【心域(マインド)侵略(ジャック)】。ふっこの魔法は生物の意識を操る魔法だ」

男は【(ライトニング)獅子(リオン)】に魔法をかけた。【心域(マインド)侵略(ジャック)】は生物の意識を奪い操る魔法しかし生物では無く分類が武器である【(ライトニング)獅子(リオン)】には全く通じずそのまま踏みつぶされた。

「終わりましたね。皆さん怪我もなかったので私の出番はないようですね」

「ああ」

「はい」

「それにしてもこの男どうしましょうか?頭を潰してしまいましたから即死しています」

「よくやってくれたさんにんとも」


   ニ

「「「アズラエル様!」」」

 俺は空間を超えて現場に足を運んだ。敵は見るも無残な姿になっていた。頭部は見る影もなく首から下が鋭い爪で抉られ損傷されていた。

「アズラエル様、申し訳ありません。本来ならば生かして情報を訊くべきでした」

「確かにそうだな。だが殺したところで問題はない【紅色之業炎(マルバス)】!」

 俺は【紅色之業炎(マルバス)】を使い敵であった者の損傷を直し蘇生させた。

 男は瞼を開き意識をとり戻し座り込んだ。

「ここは……、俺は白い獣に、はっ、そうだあの時死んだはずなのに……」

「気が付いたようだな」

 俺は座り込んだ侵入者に声を掛けた。

「お前を雇い差し向けたのは誰だ?答えなければすぐに殺す。だからいいな?よく考えて答えるのだ」

「わかった、答える。俺たち『絶影』を雇ったのはリチャード・コニャックとファフニール・トニックの各国の王たちだ」

(やはりか、そしてその裏にいるのがラウ・クリムゾンといった図式だろう)

「ならばもう一つ俺の使用人に何の魔法を掛けようとした?」

「相手の心と肉体を操る魔法だ。この魔法を使って使用人を操り、隙を付いてあんたを殺害しようとしたんだ」

「ほーう、そうか、そうか。ここで貴様には二つの選択肢がある。一つは絶影に戻り私のスパイとして絶影とリチャードとファフニールの行動(うごき)を俺に知らせること。二つ目は拒否してもう一度死ぬことだ。因みに死に方は焼死だ。苦しみながらあの世に行けるようにな、さあーどうする?」

 男はしばし考える素振りを見せた。

「わかった一番目の選択肢を選ぶ。そしてあんたのスパイになろう。因みにスパイが終わったらどうなるんだ?」

「それは貴様の働きしだいだ。大した情報一つ持ってこれなければ……、なるようにしかならん。逆にそれなりの成果を視させてもらえればそれ相応の対処をしよう」

「わかった」

「貴様が裏切るとも限らない故に俺の魔法【契約(ギアス)】を使い俺と貴様の間で制約を契る」

俺は最近創った魔法【契約(ギアス)】により俺との間に契約を行った。

 【契約(ギアス)

 一:アズラエル・ソロモンの発言にはすべて従うこと。

 ニ:アズラエル・ソロモン含むソロモン国にいる住民に魔法・物理攻撃を一切行うことを禁ずる。

 三:アズラエル・ソロモン含むソロモン国の住人の真実に当たる情報を他者に口外、筆記での公開漏洩、魔法での情報漏洩を禁ずる。

 この三つの制約のうち一つでも破る素振りがあれば喉と心臓が潰れることとなる。

「これで貴様は俺に従うしかなくなった。名を教えろ」

「『クロコ』と呼ばれている本名はクライツ・バルカンだ」

「そうか、ではクライツスパイとなって情報を持ってこい」

「はっ」

 そう言ってクライツは俺の前から闇の移動魔法で煙のように消えた。

 ムーンライト地下道

「団長今戻った」

「ああ、おかえりクロコ。仕事は成功したようだな」

「ああ、これから報酬を貰いに行ってくる」

「そうか」

 俺は団長にそう言うとリチャードとファフニールのいる大聖堂に入り二人に嘘の顛末を伝えた。

「そうかよくやってくれた」

「これで陛下も安心でしょう。ところでクロコよアズラエル・ソロモンを殺した証拠となるようなものを今持っているのか?」

「ああ、ここに」

 俺はあらかじめソロモンが創った自分に似せた生首を木箱に入れ渡されていた。それをリチャードとファフニールに差し出した。

「おおっ、確かに」

「これからソロモン国に二千万の兵を我々二人で指揮して送り込むぞ」

「そうだな、私のところにいる凄腕の者を百人ともに連れて向かうぞ」

「俺はこれで失礼するぞ」

 俺はすぐにソロモンの元に向かった。

 ソロモン国

「来たか」

 クライツは執務室の部屋の扉を開けて入ってきた。

「アズラエル様、リチャードとファフニールがこの国に攻め込んでくようです」

(やはり、そうきたか。空席になった玉座のくにほどおとしやすいものはないからな。これで生首の囮は成功後は迎え撃つだけだ)

「よくやってくれた。この戦いが終われば契約(ギアス」)を破棄しよう」

「ありがとうございます」

(さてと、この先は敵軍の進行を待ち中間地点に敵軍が到着次第空間を移動して上空から奇襲をかけ殲滅し、その足でラウ・クリムゾンを始末するか)


   三

  リチャードとファフニールは甲冑を装備しリチャードは斧を携え、ファフニール派遣を持っていた。

「今回ソロモン国を滅ぼし新しい国を作って傀儡となる王を用意することで新しくできる国を裏から操り国民から税を大量に搾り取るこれが上手くいけば陛下の機嫌を取れるというものよ」

「その通りだ。そしてゆくゆくは我々がテンペストを裏から操り私腹を肥やす」

 二人はにやにやと笑いながらソロモンに向かっていた。すると上空で粒子状の青い光が鏤められていたことに気が付く。

「な、なんだこれは?」

 兵士たちを含めリチャードとファフニールは周囲を見渡した。すると兵士を含めた彼ら二人の周囲に宇宙空間が作り出され粒子状青い光が鋭く伸びて兵士をすべて貫き焼き払った。

「こ、これは」

「これは俺の魔法だ、ファフニール」

「き、貴様、なぜ生きている?」

 二人は青ざめ俺の方を見て言った。

「あれは貴様らを誘き出すための囮だよ。これであんたらは最期(おわり)だ」

俺は宵の明星で二人を殺し、ラウのいる大聖堂へ向かった。

ラウは大聖堂会議室で俺を待っているようだった。

「やはり来ましたね、アズラエル・ソロモン。あの二人がけしかけた暗殺者を難なく従わせ私のところまで来るとはさすがはフォルス・ロギアを倒しただけのことはありますね」

「何故クロコとのことを知っている?」

「私にはこのテンペストの隅々まで覗く瞳、魔眼【百万邪眼(ミリオネアオープス)】と獣、魔獣を従わせる【従属(テイマー)】という能力(スキル)がある。これにより私はすべてを知っている。それに加え精霊の加護で炎魔法を自由自在に操ることができる」

「ほう」

(精霊か、この世界にそう言ったものがいるのは知らなかったな。精霊は種族という認識なのかそれよりも上位の扱いなのか事が終わり次第調べてみる必要があるかもしれないな。例えばこの国以外に島国があるのかどうかとかな)

「あまり驚かないのだな、まあよいさあ戦おうか?」

「そうだな、じゃあ開戦だっ!」

「【炎魔法・不死鳥(フェニックス)】」

ラウは巨大な鳥を模した紅蓮の炎を放ってきた。だが俺は難なく躱した。しかし「『ホーミング』」彼の発した言葉により不死鳥(フェニックス)がUターンして再度俺に突撃してきた。

漆黒色之業炎(ダエーワ)

 漆黒色之業炎(ダエーワ)を使い不死鳥(フェニックス)を退けた。しかしラウは続けて「【炎魔法・(ファイアー)(シュヴァル)】」炎を纏った馬を放ってきた。俺は二丁の自動拳銃を腰の後ろに装着したホルスターから取り出した。

「失せろっ!能力(スキル)【魔弾之射手】」

 数日前

 俺はある日人間を襲っている魔族の討伐に向かった。その時遠距離での戦闘について考えていたことを試そうとしていた。【万物創生】でブラックニッケルとシルバーブロンドの色でできた二丁の自動拳銃を生成し、瑠璃色(ルシ)の(ファ)業炎()を混合させた銀の銃弾を生成した。敵の数は千五百体。銃弾を無限に生成できる故その心配は全くなく試し打ちし放題なこの機会を利用して現段階の欠点を模索することにした。

 数時間後

 すべての敵を拳銃で倒した俺に新しい独特(ユニーク)能力(スキル)が使えるようになった。【魔弾】と【爆炎】だった。

【魔弾】

 貫通能力を銃弾に与える。

 【爆炎】

 触れたものを発火からの爆発を起させる。

 俺はこの二つの独特(ユニーク)能力(スキル)を混合させた。そうすることでできたのが【魔弾之射手】だった。

【魔弾之射手】

 魔法や能力(スキル)を込めた銃弾を対象に着弾させることで、それが点火の合図となり内部からの爆発を起こす。

 万物貫通付与。

 魔法以外の全てを貫通する。

 永久追尾(エターナルホーミング)

 照準に合わせた対象の魔力と生命力を探知し着弾するまで追尾する。

 

 現在

 銃口から放たれた銃弾は炎馬(フレイムシュヴァル)を着弾する瞬間漆黒の炎を纏って炎馬(フレイムシュヴァル)を貫通し燃やした。それによって銃弾は炎で溶かされることなくラウの心臓に着弾した。

「ぐはっ」

 着弾した弾丸から漆黒色之業炎(ダエーワ)が放たれラウの体を包み、体が膨れ上がり下半身から順に頭部が爆発した。

「帰るか」

俺は岐路の途中漆黒色之業炎(ダエーワ)で奪った能力(スキル)従属(テイマー)】を確認してみた。効果はラウが言っていたように獣や魔獣を操る程度のものだった。そこで変質できるかを試したができなかった。今まで変質するときは管理者(アドミニスト)権限(レータ)を開きそこから【yES】or【NO】と表示されていたが今回は【条件を満たしていない】と表示されていた。条件の内容を見てみると【神格化】と表示されていた。

「神格化か……」

(神になるなんてそんなことが可能なのか?魔王から力を奪ったように神から力を奪うなどして手に入れればいいのか?今考えても仕方がないか。とりあえず城に戻るとしよう)

 

   三

  ラウ・クリムゾンを倒してから一週間が経った。ラウがこの世を去ったことで事実上テンペスト帝国は壊滅し各国は独立国家へと戻り、魔王の名は各国全土に知れ渡った。

 執務室

「これでようやく計画の第二段階へ移行できる」

 俺の言う計画とは第一に俺が魔王であることを広めすべての他者から認められるもしくは認識させること、第二にハーレムを作る(複数の種族)、第三にこの国に王制を敷く。そして後にそれを『ソロモン王朝』と命名することだ。

(さて問題はハーレムだ。まずは正妻になりそうな女を見つけ、そこからどんどん増やしていく。そこで正妻にしたいのが冒険者組合の受付嬢フランソワ・フランシス。彼女はかなりの美人の推定Gカップの持ち主だ。彼女を妻にできればいいと考えている。だがどうしたものか……)

 

  第六章 日常2


  俺は大図書館に向かい精霊について調べていた。ニ時間ほどかけて分かったことは、精霊には様々な毒性を持ったものが多くいて古の時代に人間と共存し助け合っていたようだ。しかし現代にかけてはお伽話といった扱で今では伝説上の種族と認識されているようだった。夕刻前、大図書館を出て冒険者組合に向かいフランソワ・フランシスに精霊について訊いてみたところ。

「精霊についてですか?そうですね私もあまり知らないのですが、冒険者たちの話から精霊らしきものの目撃情報はあるのです。ですがだいたいのものが『動く光をみた』とか『複数の光り輝く靄が連なって森の奥の方に消えていった』という話もありました」

「そうか、ありがとう。それともう一つ」

「?」

「今夜俺の城で食事をしないか?」

「えっ!は、ハイぜひ」

 フランソワは頬を紅潮させ頷いた。

「そうだ、精霊についてなのですが、このムーンライトという国には幾つかの組織があって、その一つに精霊を崇める宗教があってその名前が【スピリットレリギオーン】という組織なのですが一言で言うなら狂信者の集まりみたいです。たびたび冒険者や市民に『精霊を敬っているか、精霊を信じているか?』と聞いて信じていないと答えたり、すぐに答えなければ襲ってくるそうです」

「そんな宗教があるのか。わかったありがとう。それと今夜を楽しみにしているよ。後ほど迎えに行くよ」

「ハイ、私も楽しみにしています」

 俺は一度城に戻ることにした。


  第七章 狂信者、魔王の怒りを買う

 

アズラエル・ソロモンが冒険者組合を出て数分後の出来事。

 私の名前はフランソワ・フランシス、この冒険者組合の受付嬢をやっている。

「やったー、アズラエルさんに食事に誘われちゃったよー」

「あらよかったわね」

「カフカさん」

 彼女はカフカ・ラルクこの冒険者組合の組合長だ。

「それにしてもあなたは変わっているわね、魔王に食事に誘われるなんてしかもそれで喜んでいるなんて。私だったら丁重にお断りするわ」

「でも、かなり格好いいじゃないですか。それに優しいですし。前に私が転びそうになったのを受け止めてくれたことがあったんですよ。あれは大量の魔族を討伐するクエストを受注しに来た日でした」

「そんなことがあったの。私は二階の執務室にいたからそんなことがあったのは知らなかったわ」

 私がカフカさんと話をしていると。

「すいませーん」

「はーい」

 呼ばれて返事をすると、入口に黒フードを被った剣や杖を持った十人が立っていた。

「あなたたちは精霊を敬っていますか?信じていますか?」

「まずいフランソワ逃げなさい【(ライトニング)(スピア)】」

カフカさんは光属性の魔法で先手を取り攻撃したが、相手の光魔法【(ライトニング)(ウォール)】で防がれ炎魔法【火炎玉(ファイアボール)】で攻撃された。【火炎玉(ファイアーボール)】に生じたより爆煙で視界を閉ざされた。すると背中に痛みが生じて体が痺れ地面に転がった。

「あ、ああ」

 私は呂律が回らなくなった。煙が晴れていくとカフカが膝を着き血が流れている腹部を抑えていた。

「貴様らスピリットレリギオーンだな、どうしてこの街に」

「すべては精霊のお導きにより」

「くっ、フランソワしっかりして」

(どうすれば、私の魔法じゃこいつらには勝てないどうしたら)

「敬わないのならば死になさい」

 入口を塞いでいる十人の黒フードは杖を振り上げ攻撃魔法を放ってきた。だが私達には当たることはなかった。私の目の前には漆黒のコートが揺らめき私たちを守るよう見目の前に立つシルバーブロンドの魔王が立っていた。

「危ないところだったな、まさか迎えに来てみてこんな場面に遭遇するとはな。さっさと片づけて食事に行くぞ。フランソワ」

 そう言うと彼は私に魔法をかけた。私の体は紅い炎に包まれた。その炎は私の負った傷を燃やしながら治癒を施していた。傷はみるみるうちに治り体のしびれも取れてきた。

「さてと、貴様らには俺の予定を台無しにした責任を死を持って償ってもらおう【瑠璃色之業炎(ルシファー)】!」

 アズラエルさんは蒼い炎を手から放ち一瞬にして十人すべてを無に帰しました。その後私とカフカさんは傷を治してもらい彼らが何者なのかを話しました。すると「そうか、奴らが」と言ってなにやらかんがえるそぶりをみせてから。

「少し遅くなってしまったが食事に行こう」

 そう言って私に手を差し伸べてきてくれました。

「ハイ」

 私は元気よく返事をしてその後、アズラエルさんの空間を移動する魔法で大きなお城の前に着いたのです。

「アズラエルさんここは?」

「私の城だ」

 なんと自宅にお呼ばれされたのです。そのまま城の中に入ると地下に案内されました。するとそこにはバーカウンターがあり、室内には双子のメイドさんとバーテンダーさんがいました。

「「ようこそお越しくださいました。フランソワ・フランシス様」」

「私、アズラエル様に使えるメイド長のフィファニーです。今宵はバーテンダーの格好をしていますが」

「私も同じくアズラエル様に使える副メイド長のエリザベスです」

「二人とも食前酒と今宵のコース料理を頼む」

「「はい、畏まりました」」

 メイドの二人は横90㎝縦160㎝のテーブルに白ワインと料理が乗った皿を並べていった。私とアズラエルさんは互いに向き合うように席に着き食事をすることになった。

 私は少し緊張しながらテーブルに並べられた料理を口に運んだ。テーブルにはサラダ、コーンスープ、カルパッチョ、魚の煮つけ、牛肉のステーキ、チャーハンというアズラエルさんの郷土料理。そして最後に獣王国ブルートベスティアの郷土料理【獅子(ライガー)(ドラゴン)中間(ミディ)(アム)香味(コウミ)調味(ソー)()添え】が振舞われた。

「これは【獅子(ライガー)(ドラゴン)中間(ミディ)(アム)香味(コウミ)調味(ソー)()添え】じゃないですかっ!どうして私の生まれの郷土料理を知っているのですか?」

「情報は宝であり、戦略にも利用でき、後世に残る遺産にもなる。つまり情報は掌握術(ちから)だ。その掌握術(ちから)は使い方によっては……」

 言葉を切るとアズラエルさんは席を立ち私の傍に近寄って右手で顎に触れてきた。そして「好意を持った相手を口説き落とすことにも使える」そう言うと私に唇を重ねてきた。

「フランソワ、今夜君の時間を俺が貰うぜ」

 私は頷き、食事を済ませた後にシャワーを浴び、湯を張った浴槽に浸かり、メイドのティファニーさんに部屋に案内された。

「ここはアズラエル様の寝室です。どうぞごゆっくりなさってください」

 私が寝室に入ると室内にはシルバーブロンドを翡翠色の蔓の模様が彫られたヘアカフスで束ねているアズラエルさんが赤ワインを片手にベッドに腰を下ろしていた。

「こっちにおいで」

私はベッドに誘われるままにベッドを掌で軽く二度叩くアズラエルさんの隣に腰を下ろした。因みに私と彼はバスローブ一枚だけを身に纏っている姿だ。

「さてと、いいかな?」

「ハ、ハイ!よろしくお願いします」

 私は體を震わせアズラエルさんの出方を待っていることしかできなかった。

 情事を終えて私はアズラエルさんの寝顔を眺めた。その寝顔はまるで小さな子供のようであった。


 一人の男神が水面に映る男の桁外れな力に驚いていた。

「これは、まさに魔王、いや魔神に匹敵する力だ。危険だな……この世界の調和のために歴史から消滅させねばなるまいか。アレス、ヘパイストス」

「はっ、ここに」

「お呼びでしょうか」

「二人とも第五世界ラウルに向かいアズラエル・ソロモンという男を消せ。このままでは第五世界のパワーバランスが崩れて龍神が呼応し目覚めてしまうやもしれん」

「「ただちに」」

                                  第一部 完


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