アンケート
翌日、選挙管理委員会からのメールが全生徒に配信された。
タイトルはズバリ、
『今年の生徒会に望むことは?』
である。
学校行事の充実
部費増額
うまい給食
生徒会費の透明化
イジメ対策
選択内容は多岐に渡っていた。僕はまよわずうまい給食を選んだ。
数日後、マリの元に集計結果が送られてきた。当日まで開封できないよう鍵がかかっている。
「これじゃ、見れないじゃないか。」
がっかりする僕をしり目に、
「タブレットじゃ限界がある。」
と、マリはパソコンに向かった。30分ほど待っていると、
「ポーン」
と音が流れた。
「終わったよ。」
彼女の前のモニタにはアンケート結果の数字が映し出されていた。
部費増額と給食が30%ずつ際立っている。
「これをみろ。」
マリは、生徒会費の透明化の10%を指さした。
「たった10%じゃないか。」
僕は、彼女が何を言いたいかのかわからなった。
「いいか、こうやって関連したものをまとめる。」
すると、お金に関する不満がトータルで50%を指した。
なるほど、みんな部費や生徒会費といったものの分配に不満があるわけだ。
「そして、これをくっつける。これなら圧勝だろ。」
こうして、僕らの公約が決まった。
歳費の平等な配分。
具体的には、公正な部費と食の充実の実現。
普通なら生徒の大半は教師や学校に対する不満を抱えているものである。そこをつくのがセオリーだろう。しかし、今回のアンケートは学校ではなく生徒会への不満ということで、そこを避けていた。そこではアンケート結果に差が生じないからだ。それに、今の中学生は教師に何も望んでいない。勉強は塾メインだし、いやなら自宅学習すればいい。内申書の評定を気にする生徒だけが生徒指導に従う。教師も押し付けることができないので、従わなければ評定が下がるだけだった。
そして、ついに告示日を迎えた。立候補は調査通り4人。肝心の公約は、談合坂が、強化指定部見直しと対象部費増額。サッカー部は給食の充実。将棋部はイジメ対策。細分化されたアンケートが功を奏したのか、みな狭い公約にとどまった。
まず選管、ヤマト委員長からのアンケート結果の発表があった。その後立候補者の演説が流れる。新参者の僕は最後。演説テープはマリが作ってくれた。僕自身まだ聞いたことがない。
「当日のお楽しみ。」
やつはそういうって聞かしてくれない。
配信途中にもかかわらず、さっそく人気投票が始まった。いきなり談合坂の優位のなか、サッカー部と将棋部だけが得票していた。ここは固定層だ。