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石川マリ

 僕は近所の家の玄関前にいた。石川マリ。幼馴染の家だ。中一ですでに10万ユーザーを抱えている根っからのネットオタクだ。中学に入ってからは学校にもほとんど来ていない。両親も仕事に明け暮れて、一日の大半を家の中で一人で過ごす。彼女のIDはメアリ。MARIにEをくわえただけなので、すぐにわかった。

「ゼロの頼みだからな。」

 彼女もゼロというIDで僕だとわかったようだ。僕にとってエレンは目障りな姉貴のようなものだったが、マリはでしゃばることのない妹のような存在だった。おそらく初恋というやつ。あっちはどう思っているかわからないが、僕としては見ているだけで心が落ち着いた。


「お前もよくお嬢様の相手してられるな。僕だったらとっくに逃げ出してるよ。」

 マリは自分のことを僕という。女性として見られるのがいやらしい。未成年なのでネット上には顔出しはできないので、いつも灰色のパーカー姿で性別も不詳ということになっている。マリは自分の部屋には両親さえも入れないが、なぜか僕だけは通してくれた。

「お前にはいつも世話になってるしな。」

 彼女はうつむいたままそう答えた。IT化の進んでない地域では、いまだに小学校の配布物や欠席届など届け物は近所の上級生や同級生が分担していた。


「どこかの馬鹿のせいで、名簿は用が済んだら即廃棄すること、なんて法律化するから面倒なことになるんだ。」

 マリはぶつぶつ言いながらネットから資料をあさる。僕にとっては名簿がないおかげで本名を呼ばれず、うれしいこともあるんだが。

「まず敵のことを知らないとな。日本の公立中学校の情報はすべてAIゼウスが管理している。それを導入したのが談合坂議員。システム導入に当たって、真っ黒ソフトと不実の共同となっているが談合坂のごり押しという噂だ。学校にはゼウスの配下のアポロンが導入されている。そんなわけだから開票に不正があってもおかしくない。連中に勝つには圧倒的大差でないといけないぞ。」

 厳しい戦いとは思っていたが、最初から勝ち目の無い戦だったとは。

「そう嘆くな。悪いニュースばかりじゃない。一つの不正があるということは、ほかにもたくさんの不正があるということさ。それよりも、やっかいなのはお前の立候補を邪魔するように他に二人出てきたってほうだ。」

 マリの情報によると、そいつらはすでに水面下で動いているそうだ。一人は、2年のサッカー部エース、カズツバサ。もうひとりは1年の将棋部ハブソウタ。どちらも女性とを中心に人気がある。

「僕はどっちも好みじゃないけどな。」

 マリがぼそっとつぶやいた。

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