立候補
令和14年ともなると、徹底した個人情報管理の下、学校から一切の名簿が消えた。生徒一人ひとりにタブレットが支給され、みなIDで呼び合う。住所や氏名を知っているのは教師と生徒会役員だけだった。
「ケラケラネームを探すために生徒会長に立候補する。」
エレンのやつのいきなりの宣言。さすがに6年も近くで見ていると解るが、こいつは言い出したら聞かない。
「一年が立候補して簡単に受かるわけないだろ。」
僕はとにかく阻止しようとしたが
「なる。令が会長になったら私は副会長な。」
「え?僕がなるの?無理無理。何で自分ででないの?」
「え~、落選したら恥ずかしいじゃない。」
ちなみに、エレンのIDがヘレナ、僕のIDはゼロ。IDをつけるに当たっては本名から連想しやすいものという制約がある。エレンは前後にHとaを付け、僕は令→零→ゼロというわけだ。ただし、会長選はその人物がわからないと判断しようが無いので、IDは使わず実名で行なわれる。
ここで、問題は現会長のダンゴウザカ兄弟の存在だ。
前会長、3年のソウイチロウ
現会長、2年のハイジ
新入生、1年のサイゾウ
こいつら、ここらでは有名な兄弟だ。なにせ親が与党の大物衆議院議員。普通ならありえない1年生での会長という快挙をソウイチロウが成し遂げた。次の年は対抗馬なしの無風選挙。今度もサイゾウで決まりと言われていた。
やつらが会長にこだわるのは名簿だ。親の名簿を入手すれば選挙に有利になるからだ。
「とにかく公約が大事だ。生徒受けするキャッチコピー。」
そういう僕にエレンは
「ダメ。媚びるようなまねは性に合わないわ。ここはひとつ華麗にいきましょう。この学校を花で一杯にするの。」
と、あくまで強気だ。
「それこそダメ。票が取れない。ここは地道に、ひとりひとり直接訴えかけて覚えてもらうのが一番。」
「そういう地味なのは嫌。一発でっかい花火を打ち上げて注目を浴びる。相手に圧勝してこその選挙。」
はあ、いつものお嬢様気質が出た。ここは一つネットオタクに頼むか。




