最終決戦
「継承によって、君は何を目指すのですか?」
議員が息子に尋ねる。
「先人たちの築いた自治の精神を受け継ぎ、時代に応じて進化させつつ、次世代に引き継ぐ。勉学の強化と部活の強化。そのために教師とともにできることをします。」
聞こえはいいが、具体性が感じられない。
「不登校についてどう考えますか?」
知事の質問は僕へのものと同じだった。おそらく、彼女は3人共に同じ質問をなげかけているのだろう。
「学生として、論外です。共同生活することで協調性や付き合い方を学ぶのです。さきほどの会についても多くの生徒が顔を合わせて話し合うことの一環と考えています。」
次に僕の番が来た。
「校則廃止をした際の結果の責任をとれるのかね。」
ん?議員が質問を微妙に変えてきた。紙には、実現性を問う内容が書かれていた。もっとも、何も浮かばす白紙だったのだが。
「その質問は・・・」
といいかけたヤマトを僕は制した。
「では、お尋ねしますが、校則を作った結果の責任を取った生徒会がありましたか?責任は校則にあるのではありません。生徒自身が負うものです。学校とは何か。それは社会に出るためのシミュレーションの場。人は失敗して成長するものです。失敗の原因を理解し、繰り返さないように学習する。校則はその失敗の機会を奪っている。ですから、校則を無くし、失敗したら原因を皆で協議する。内容によっては懲罰を受けることもあるでしょう。しかし、それは学生だから一時のことで許されるとは思いませんか?生徒一人ひとりが自身の信念と良心に添って行動する。これだけで十分であると私は考えます。」
知事が立ち上がった。すかさず僕は、何も書き込んでない質問書を後ろに放り上げ
「事前に回答は考えていませんので、別の質問でもかまいません。」
と、勝負に出た。
「では、お言葉に甘えて。校則の廃止で、不登校の生徒が救えますか?」
知事としては不登校問題によほど関心があるのだろう。僕はマリのことを思い浮かべた。
「僕の友人にも、不登校の人がいます。ですが、その生徒は学校にいかなくても世界中とネットを通じてつながっています。学校の委員会活動も、自宅に居ながらですが参加しています。僕には、その人が不自由には見えません。なにかで押さえつけること、枠の中に入れようとすることで学校に居場所を見出せない。その枠が校則なのです。ですから、校則を無くし、個性を認めることで、彼らは学校に来易くなると信じています。」
「ありがとう。」
小さかったが、知事の声が確かに聞こえた。
「AIでどのような自治ができると考えますか?」
議員からハブへの質問だ。
「その質問に答える前に、一言いいたい。この討論会で僕の考えが変わった。できるなら、公約を変えたい。」
「かまわないが。」
選挙管理委員会は彼の申し出を認めた。
「ありがとう。」
彼の棋士道精神がいわせた言葉だ。
「将来はともかく、現在のAIによる統括では生徒の自主性は育たない。僕は生徒会の健全化を目指したいと思う。まずは、財政。不正経理は無くす。次に、無駄な校則を減らす。校則全廃は現段階では性急だと思う。生徒たちは校内だけで生活しているわけではないからだ。学校外では校則による規制は必要だ。だから、校内における自由化を目指す。急な公約変更で、僕を支持できない人もいるだろう。その場合は、各自で判断してくれ。」




