直接対決
選挙は投票日の前日、談合坂とハブが圧倒的人気を得ていた。学校に滅多に来ない生徒もいる。そのため、討論会では、候補者の直接バトルの様子がタブレットに流れる。
候補者と応援の生徒たちが講堂にあつまった。少し遅れて、来賓が校長と共に入ってきた。かっぷくのいい議員と、対照的に華奢な女性知事。今年は、かなり豪華だ。
「まずは、自由議論をしてもらい、最後に来賓の団子坂議員と水田知事からの質問をお受けします。」
校長が司会を務める。当初はそれぞれの公約についてほぼ前回と同じ内容を繰り返した。談合坂は継承、ハブはAI判断による統括、僕は校則廃止。討論は互いに穏やかに進んでいた。終盤になりこのままでは勝てないと、僕らはハブに対して攻撃をしかけた。
「この映像は、将棋部のオンラインでの対局ですね。」
「そうだが、何か?」
僕らが録画した対局映像を見て、彼は瞬時に答えた。
「これは、とある日の放課後です。あなたは何処にいましたか。」
「聞くまでも無い。学校での対局中なら、ずっと部室で打っていたってことだろう。」
ハブは顔色一つ変えずに即答する。
「これが4:20から約1時間の対局です。で、そのとき僕らは教室にいましたが5:00に選挙管理委員会に呼ばれました。」
「それは、僕が証明しよう。」
ヤマトが証言した。
「僕たちの後に、談合坂君が呼ばれている。」
「間違いない。」
談合坂もそのことは認めた。ぼくは、ゆっくりと息をすった。緊張で手から汗が出てくる。
「さて、僕達の前に呼ばれた人物が一人いる。」
「持って回ったいいたをしなくていい。それは僕だ。」
ハブはあっさり自分から認めた。
「それは何時でしたか?」
「さて?時間は覚えて無いな。」
やつの目が泳いだ。あきらかに動揺している。
「4:50分前後だろう。」
ヤマトが代わりに答えた。
「さて、この対局。学生の限られた時間なので持ち時間10分の早差しです。4:50からの録画を5:00まで進めてみます。すでに5分の持ち時間を使っているハブ君。どんなにいそいでも5分では戻ってこれない。しかし、5分の長考の末に、この勝負、彼が勝っています。判定ソフトにかけたところここまでは勝負が拮抗してましたが、この後一気に優勢のまま押し切っています。一体誰が、これほどの手を指し続けたのか?」
僕は少々大げさに問いかけた。
「ああ、確かに僕は中座した。僕が時間内に戻れないことを想定して、代理を立てた。これは学校対決。交代は許されている。」
「確かに、部員であれば交代自由。しかし、これほどの差し手が、将棋部に他にいるでしょうか?」
ハブの口元が一瞬ニヤリとした。
「わが部の正式名称を知ってるかね。SYOUGIAI部だ。将棋愛に溢れたというほかに、将棋AI、つまりAIを使った将棋を研究するという意味もある。」
「対戦相手は承知しているのですか?」
「公式戦じゃあない。AIからの助言を利用しても問題ないだろう。」
僕は、言葉に詰まった。
「おい、言いがかりじゃないのか?」
「不正だと言うなら、明確な証拠をだせ。」
「そもそも、生徒会長選挙に何の関係がある。」
会場からは非難の声が上がり始めた。




