マリあんこはねっとり
マリは一年に一度だけおしゃれをして外出をする。おしゃれといっても、見た目は変わらない。ただ、服が臭わないといった程度。
兄が新学期前に日本の学校に登校するため帰ってくるのである。平日なので、両親は迎えにいけない。そこで、マリが一人で空港まで行く。他の生徒は授業中だから見つかる心配はない。
マリは出口にいる兄に向かって無言で大きく手を振った。
「やあ、1年ぶりだな。また背が伸びたんじゃないか?」
頭の上にのせられた兄の手を右手で払いのける。
「元気なようだな。とりあえず、食事でもしようか。」
「いよいよ日本もキャッシュレスが増えたな。昔は現金しかつかえなくてよく払ってもらったもんだ。なんでもおごるぞ。」
マリたちは今川焼きの屋台の前にいた。
「おいおい、今川焼きか。おまえも相変わらずだな。彼氏との初デート場所、一番のお気いにいりだったな。」
マリは首を横に激しく振った。
「まだ、つきあってないのかい?あ、でもエレンから聞いたよ。なんだか最近いい雰囲気らしいじゃないか。」
マリは今川焼きを食べながら下を向いたままだ。
「一回限りのデート。あいつが、家族にはぐれて泣いていたお前をここに連れてきたんだよな。屋台のおっちゃんが公園の事務所に連絡してくれた。おまえはあいつの正体を知っている。でも、あいつはおまえに気付いてない。まるでドラマだね。」
「思い出してくれなくていい。やつは普通に学校生活を満喫している。今のあいつにはきっと僕が重荷になる。」
マリがあんこのついた口を開いた。
「ま、なるようになるさ。しかし、ここの今川焼きの餡は濃厚で最高だね。」
「うちの餡は北海道の小豆をとろっとろになるまでじっくり煮詰めてるからな。」
彼女の兄の言葉に店主がうれしそうに言葉を返した。
「代金はカードで。」
「あんちゃん、毎年言ってるけど、うちは現金だけです。」




