あしたか
幼稚園に行くようになると、友達から名前をいじられる。園児たちは、木曜の給食後に
「先生、金曜のお昼は?」
と聞いてくる。
「明日はカレーですよ。」
というと
「あしたカレー、あしたカレー。」
と叫ぶ。
園長が海上自衛隊出身で金曜はカレーの日と決まっていた。
小学校にいくと、苗字の順でアスカの前にアシタカがいたのでなんとなく陰に隠れた。
「芦高エレン、明日香令・・・」
金髪ハーフの見た目のファーストインパクトに加え、あしたかえれんという名前のセカンドインパクト。その強烈な印象に、すぐには明日カレーに頭が切りかわらない。それに令和元年生まれは令の名前がやたら多い。もっとも大半は女だったが。
「君もうっかりネーム?」
僕はエレンに聞いた。
「失礼ね。由緒正しいエレナおばあさんの名前よ。一緒にしないで。」
そうだよな。うっかりネームなんてそうそういるもんじゃない。生まれ故郷のアメリかハワイではエレン・アシタカと呼ばれるので何の違和感もなかったらしい。
小さな田舎の学校なので、一学年一クラスしかない。当然、6年間というものやつは僕の前にいる。先生も面倒なので名前順のまま席替えをしない。
中学になると、僕たちは学校内の面白い名前のやつを探した。
「ケラケラネーム倶楽部」
僕は笑える名前と思って付けたが、ハワイ語でケラというのは優れたという意味らしい。