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ハブの奇襲

 膠着状態にしびれをきらして、まず動いたのがハブだった。

「このまま、やつらを野放しにはできない。」


 やつは自陣が固まったとみるや、棋士らしく周囲への攻撃を始めた。

「やつらの動画をつくったのは動画職人メアリだ。やつは不登校。いわゆる問題児だ。そしてこの学校にいる可能性が高い。」

 メアリを誹謗中傷する書き込みが始まった。もっとも、不登校生徒は1割いる。だれかを特定するのは無理だった。

「ひきこもりの夢見がちなガキが、安全な自宅で不満をぶちまけるだけ。」

 この書き込みに、彼女は

「ひきこもりの夢見がちなガキ。」

 というタイトルをつけた動画を作成。

「世間知らずのおこちゃまは、経済をしらない。」

 と、書き込まれれば、すかさず

「経済を知らないおこちゃま。」

 というタイトルを配信。


「おい、ひきこもりは精神攻撃に弱いんじゃないのか?」

 ハブは周囲にあたった。

「どこかに弱点があるはずだ。」

「やつは、未成年であるため年齢、性別不詳。それが特定できれば糸口になるかと。」

「ばかもの、そんな書き込みをすればこっちが先に摘発される。」

「では、どうすれば。」

 長考の末、ハブはにやりと笑った。

「そうだな、ひきこもりになった理由を暴露してやるってのはどうだ。」


 支持者たちに手分けをしてメアリがひきこもった原因を調べさせた。過去の動画や書き込みを分析したが具体的な話はでてなかった。しかし、メアリが最初のころ特に扱っていた内容は、いじめや恋愛といった学校での日常的な内容だった。そして、彼が導き出した答えは、いじめ。それも好きな相手にいじめられた。

「いじめに失恋の話。まちがいない。」

 ハブは自信たっぷりに、そして面白おかしく脚色も交えて公表した。メアリの動画更新が止まった。

「ほら見ろ。図星だ。」


 2日後、とつぜん真実を知るものからという書き込みがあった。

「お間抜けな、つくり話だ。やつが自宅にいるのは失恋などではない。守りたいやつがいたかったからだ。自分を好きなんじゃないかという相手のうわさが立ちはじめた。で、自分から消えたのさ。そいつはよっぽどきらわれてたんだっていうことになり、あっという間に話題から消えた。やつは弱いから隠れているのではない。やさしくて強い。だから、人の悪意で他者が傷つくのが許せないんだ。」


 一方マリが動画を停止していたのはまったく別の理由からだった。


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