俺と障害者と過去の一部
無事に森は出れたのだが、もう方角も何もわからないので、アリシアの四次元ポケット?に遭難用に入っていたコンパスで俺たちはオリビアを目指していた。
「そもそも、そのオリビア?というところに行ってなにをするつもりだったのだ?」
「いやこの人殺しが働けとかいうから」
「なるほど、それはわかったが君達、いや私も含めさせてもらっているのだが、どこで暮らすつもりなのだ?」
「はっこのシルヴィア大先生がそんなことも考えていないと考えているのか?言ってやれシルヴィア」
「いきなり人殺しから大先生と呼ぶのは都合が良すぎるけど......まぁ考えてなかったわ」
「いや口調に似合わず意外と向こう見ずなタイプだった!」
「まぁとりあえず街に着いたら宿的なところを探すか」
「いや金はどうするのだ?」
「いやそこはアリシア大先生がサクッと一狩り行ってどうにかしてくれればと.......」
「他力本願にもほどがある!」
「じゃあ横で応援でもしてるから」
「いや正直肉体はリセットされているのでスキルとかは1からなのだ、だから、今の装備はパラメータ的にほとんど装備できない」
「そうかあ仕方ない、ここはみんなで協力するかあ」
「わたし魔力がなぜかほとんどないのだけれど」
「それ俺殺しかけたせいだからな!」
「じゃあ仕方ないわたしの持ち物を多少売ろう」
「なんか売れるもんでも持ってんのか?」
「ああ少し思い入れがあるペンダントなのだがもういいだろう」
「すまねーな、あ、そうこうしてる間に、着いたぞ」
10時も近い頃だったが幸いにも案外簡単に宿は見つかった。
「んじゃ後は頼んだわ」
「いやなんで自分で行かないんだ」
「いや俺コミュ力が欠落してる障害者だからぁ」
「「どうでもいいからさっさといけ!」」
「わーったわーった行けばいいんだろう?」
「もともとそのくらい人に押し付けるでない!」
と半ば強制的にコミュ力チャレンジが始まってしまった。
「はいどーぞぉ」
中に入ると同い年か俺より少し下の娘が迎え入れてくれた」
「えっと...部屋ってまだ空いてるかな?」
「はい、お二人様の部屋なら一部屋空いてますよぉ」
「う〜ん、まぁそれでいいやじゃあ一部屋取らせてもらっていいかな」
「料金は前払いでよろしいですかぁ?」
「いや、後払いでもいいか?」
「はぁ、まぁ大丈夫ですよぅ」
「あぁお願いするよ」
はい、1人野宿確定のお知らせです。
それを彼女達に、伝えたところ....
「じゃあ部屋をキャンセルしてきてくれないか」
「へ、なんで?」
「いや一人だけ野宿はあり得ないだろう」
「いやいや何言ってんの?普通俺が我慢するとこだろ?」
「変なとこは親切だな.....」
「親切?何言ってんだ?そんな女子を野宿させて宿でゆっくりできると思うか?」
「だからそれを親切と言うのだ」
「いやこれは自己満足だ、そこだけは譲れない!」
「はいはい、わかったからもう行きましょアリシア」
「あっ、手を引っ張るなシルヴィア、じゃあまた後でライ」
「お〜じゃあな」
とアリシアは若干強引にシルヴィアに引っ張られて宿の中に入っていった。
「シルヴィア引っ張るのはもうよせ、ライのことを置いていったのには何か理由があるのだろう?早く話せ」
「そうね、そしてその理由を説明するには彼のことを少し語らなければならないわね」
「ライがどうかしたのか?」
「彼という人間はとても一言では語りつくすことはできないのだけど、今回のことは彼がとても残念な人間だということを説明しなければならないわね」
「残念な人間?」
「そうね、まず説明しなければならないのは彼と彼のことね」
「彼と彼?全くわからんぞ」
「まぁ焦らないで聞いてちょうだい、彼は昔、精神的に大きなストレスがあってその時に孤立というものを経験したの」
「....ふむ」
「その時、彼は人が信じられなくなってしまったのよ」
「なんだと?じゃあ君も私も信頼されていないというのか?」
「そういうことね、そしてその時から孤立しないように、人に嫌われないように、今の性格を作って基本的に自分の領域にあまり立ち入らせないで、もし嫌われてもショックなんて受けないように全ての人を嫌ったのよ」
「そんなことがあったのか.....」
「だから元の性格はとても繊細な人なのよ、あなたと会った時は、あなたが自分のことを嫌っていないかビクビクしていたし、あなたを誘った時もとても緊張していたし、さっき宿の予約を取る時も万が一にも私達に迷惑がかからないように自分で行きたがらなかったのよ」
「でもそれは人のことを思いやれる優しい人だからだろうそれのどこが残念な人なんだ?」
「だからそれよ」
「?どういうことだ」
「彼は全ての人を嫌っているから自分が優しいことをしていると認識できないのよ、それが彼の欠点であり残念なとこだわ」
「......彼はとても優しくて面倒臭いんだな」
「そうね」
「あのぅ」
「あぁすいません少し話し込んでいて、代金はいくらでしょう?」
「いや、予約に来た男の人が後払いでお願いすると言ってましたが」
「......わかりました、アリシア荷物を置いたら早く外に出るわよ」
「なんでだ?」
「まぁ来れば分かるわ」
そして彼女達は時間で言ったら10時頃外へ飛び出していったのだった。
二時間後
「さ〜てあいつらも寝ただろうし俺の様子を見に来たりはしねぇだろうそろそろテントから出るか」
俺は、アリシアの四次元ポケット?に入っていたテントで寝ていたのだが、12時頃テントから出ると、そこには.....彼女達が立っていた。
「へ?なんでここにいんだ?女は夜更かしすると肌に悪いんじゃねぇのか?」
「じゃあ逆に聞くけどあなたは何をしようとしていたのかしら?」
「いや......ちょっとトイレでも行こうかと」
「それは嘘よね」
「いやいや、ほ、本当に決まってるだろ」
「......じゃあもういいわはいこれ」
といってシルヴィアが何かが入った袋を投げてきた。
「これは.....金じゃねぇか、どうしたんだ?」
「あなたはアリシアのペンダントを売らせないために私達が完全に寝静まってあなたと会う可能性がなくなったらどうにかしてお金を手に入れてくるつもりだったたりするかもしれないとか思っちゃって」
「......そうだと言ったら?」
「そうだったのなら私達が今少し街の外に出てモンスターを倒して稼いで来たから行かなくていいってことを言いにきただけよ」
「.....ほ〜ん、よくわからんが俺は寝るぞ」
「えぇそうするわ、おやすみなさい」
「......おやすみ」
「ね、言った通りだったでしょ?」
「彼がそんなことまで考えているとは.....見た目の割に侮れんな」
「彼は基本的に今の時代では珍しい善人なのよ」
「.......そのようだな」
「実は彼がストレスを追った理由もそのせいなのよ」
「なるほど......なんとなくわかった、優しすぎたが故に疎まれたんだろう?」
「あまり言いたくないけどそうね」
「だが彼は間違ってないだろう?間違っているのは世界だ」
「そうね、元の世界は人の機嫌を伺う為に生きてるようなものよ」
「彼のような人間はさぞかしストレスが溜まっただろうな」
「彼は死んで悲しいのか救われたのかそれは謎のままね」
「彼が人を嫌った理由はそれも含めてなのかもしれないな」
「ちなみに彼は多分いま泣いてるわ」
「?なぜだ」
「あなたの役に立てなかった不甲斐なさでよ」
「....やはり優しいのか面倒臭いのかよくわからんな」
「まぁ彼は優しさをこじらせにこじらせてるから」
そんなことを話しながら2人は深い闇の中部屋へと戻っていった。