障害者とバグの代償
「あの、いやもうまじで勘弁してください」
「そうね、あとたった五時間程度で許してあげるわ」
「まじで言ってんのか!?もう二時間もたってんだぞ!」
そう俺はあのあとスライムだった女には殴られ、シルヴィアからは、口答えしたら燃やされる、説教タイムに入っていた。
「マイナス1」
ドゴォと俺よりも3倍くらいの大きさがある木に直撃し風穴が空いた
「いやいやお前の使ってんの煙滅の炎だろ!普通に人殺す威力はあるからな!ていうかなんで昨日モンスターと戦うのに使わなかったんだよ!」
「いやだってこれはあなたを然るべきときに殺すために昨日覚えたのだものそれ以外の使い道があるなんて気付かなかったわあ、それとマイナス1」
「いや少しは俺の命慮ってぇぇぇ〜!」
まぁこの後シルヴィアの魔力が尽きたのか死は免れた。その後シルヴィアの了承を得てシルヴィアの予備の服を着ている女へと話しかけた。
「それで?まぁなんとなくは知ってるけどもあんたはなんでスライムだったんだ?」
「黙秘権を行使させてもらおう」
「まったく、まずは謝罪でしょ?」
「う〜んまぁ言われてみればそうか、すみませんでした」
「君の誠意はわかった、よし話をしてやろう君のような人間とは近くで話したくないので半径10キロには近づかないでくれないか?」
「それ間接的に話したくないってことですよね」
「否定はしない」
「いやそこは否定してくれ!いちおう俺あなたのこと助けたんですからね!」
「ん、そういえばそうだったかもしれんな」
「いや少なくとも人生最大のピンチではあったでしょそんくらい覚えててくれやぁぁ!」
「いや正確には二番目だな」
「そこ論点じゃねぇぇぇ!こいつうぜぇぇぇ!」
「まぁ私から君のことを評価したら裸を見たでマイナス1000点で助けられたでプラス100点だな、よってう〜ん情状酌量の余地ありで死刑はどうだろう」
「賛成」
「いや反対だわ!逆に情状酌量なかったらその上の刑があったことに驚きだわ!」
「まぁ土下座するというなら許してやってもいいぞ」
「よしオッケー土下座するわ」
そして俺は人生で何十回としてきた土下座を華麗に繰り出した!
「いや簡単に土下座しすぎだろう!」
「そうか?これ俺の特技の一つなんだが、よし、もっとすごいのも見してやるぜ!」
「いやいやプライドというものは存在しないのか!?」
「そんなん小2で捨てたね」
「8歳て何という決断をしているんだ!?はぁ、まぁわかった許してやる」
「いやなんでそんなずっと上から目線なんだ!?」
「む、これは癖でな不快になったのなら申し訳ない」
思ったより良識があるような人物のようだ。
「ところでだがまだ名前を聞いてなかったな」
「あ、あぁ俺はライって言うんだ」
「私はシルヴィアよ」
「おまえは?」
「私の名前はサチコだ」
「いや、んなわけねーだろ!まずおまえゴリゴリの金髪じゃねーか!そして、チョイスが古風すぎるんじゃ!その名前の人、公民館の会合とかで集まったばぁちゃん達についてるような名前だぞ!」」
「全く冗談が通じないとはな、はぁ〜」
「うざすぎる!」
「本当の名前はアリシアだ」
「それは冗談じゃないな?」
「人の名前にケチをつけたな!マイナス100点」
「何このトラップ!助けた加点すら消えた!」
「まぁ冗談はさておき、助けてもらった私が言うのもなんだがどうしてこんなところにいるんだ?」
「ふっ俺の七つの暗技の一つロストロードに従ったまでよ」
「この中2で頭が沸きすぎて若干スクランブルエッグ気味の脳みそを持っているこいつの言葉を直訳すると、迷子ってことね」
「おい中2は余計だ」
「脳みそスクランブルエッグは否定しなくていいのか!?」
「うん、それは知ってる」
「自虐にも程があるぞ!まぁつまり道に迷っているということだな」
「だから俺の暗技の....」
「そういうことね」
「そういうことなら、スライムとして暮らすうちに道くらいは覚えたからな、道案内しよう」
「あ、あぁ頼んだ」
「そういえば元はどこに住んでたんだ?」
「よくわからないな」
「わからないねぇ....」
「1回目の転生までは言葉も理解していなかったからなぁ」
「はぁ?1回目?おいシルヴィア転生しなおしたらその前の世界の記憶は消えるんじゃなかったのか?」
「え、えぇそのはずなのだけど」
「そういう法則があったのか、なら、なぜ私は記憶を失わなかったのだ?」
「う〜ん、ひとつ考えられるのはこの世界の2人目の主人公のことね」
「誰だそれは?」
「えっと、まぁ本当はライの世界のはずだったのだけれど、ちょっと色々バグってしまって2人目が召喚されたのよ」
「なるほど、じゃあそれと私の記憶になんの関係が?」
「この世界は主人公が来た時に初めて世界として成り立つという構造でできているの」
「よくわからんが、なるほど」
「だから本来はいないはずの2人目を召喚するときにこの世界に元の世界とを繋ぐ穴を作って少し調整してもともとこの人はこの世界に存在していた、という事実を作らなければならないのよ」
「つまりこの世界と帳尻を合わせるという解釈で合っているか?」
「まぁ、そういうことなのだけれどその時生じた穴にあなたが転生するとき干渉して記憶が残ってしまったという可能性があるわ」
「うん、さっぱりわからんわ」
「うん、脳みそスクランブルエッグのあなたに説明していないしわかるわけもないわ」
「まぁ理屈はわかったぞ、ということは....おっやっぱり使えた」
と、おもむろに彼女は手で空を切った。
「やはりスキルも使えるようだな」
と突然空中から現れた剣を掲げて言った
「これはどういう能力なんだ?」
「空間を圧縮して物を、なんでも収納出来るという能力だ」
「こっちの世界にはない概念だな」
「まぁこれが使えるのだったらいかようにも生きていけよう、おっ、そろそろ出口だぞ」
「あぁ助かった、ところでアリシアはこの世界のことをどれくらい知ってるんだ?」
「.....この森くらいかな」
「だったら一緒に来ないか?」
「ああ、それは嬉しい申し出なのだが....う〜ん、では一つ聞いていいか?」
「ああ、いいぞ」
「君たちは....私が何か間違ったことをした時ちゃんと止めてくれるか?」
「?質問の意味がよくわからないが、できる範囲でやらせてもらうよ、おまえはどうだ?」
「私も同意するわ」
「なら、これからもよろしく頼む」
これが元スライム女アリシアとの出会いだった。