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SECRET LOVE  作者: 雨音れいん
SECRET LOVE
24/32

#23.Pure love

大変お待たせしました。更新のろのろですがこの物語ももう少しで完結しますので、どうか最後までお付き合い宜しくお願いします。

 ジョゼ、君はこんなことをするオレのことを軽蔑するか?

 ずっとこうしたくて、こうなることばかり望んでいて

 君と愛し合いたくて、今まで何度も君のことで卑猥な妄想を描いてきたと知ったら君は……


 オレを軽蔑するだろうか。



 彼の反応を確かめるように、オレはゆっくりと唇を離していった。密着していた粘膜が剥がれていく艶めかしい感触が唇に伝わる。瞼を開けると瞠目した彼が茫然とこちらを見詰めていた。


 愛してる。

 そう伝えたくて、オレはただ彼を見詰め返した。





 最初に彼とキスしたい衝動に駆られたのは、初めて彼の家に行った日の夜だった。ソファーに座ってワインを飲みながら、二人で古い歌ばかりを集めたCDを聴いていた。するといつのまにか彼が眠ってしまったので、ソファーに横にして寝かせてやった。その上からそっと毛布をかけ……

 その瞬間、手が止まった。自分の胸腔の中で脈打つものがやけに強く騒がしくなったのを覚えている。薄く開いた彼の唇に意識を捕われ、視線が釘付けになっていた。一瞬、その唇にキスする妄想が脳裏に浮かび……が、すぐにそれは理性で打ち消される。彼は男で――自分とは友達で――その意識が行為を思い止まらせた。それからオレは思考をリセットして、毛布から手を離した。まっすぐに立ってもっと高い位置から彼を見下ろす。

 もう少しでキスしてしまうところだった。そう思うとまた胸の内が騒がしくなっていった。


 オレはジョゼが

 ――“男”が好きなのか?


 違うよな?

 オレは

 オレは“ゲイ”じゃない――――!


 なら何故彼とキスしている妄想が浮かんでくる?

 何故それを求めている?

 いったいオレはどうしてしまったんだ。

 病んでいるのか…… 



 こんな病気は聞いたことがない。



 頭の中が整理できず、考えれば考えるほど混乱していく。自分で自分が分からなくなっていった。





 それが、その妄想が現実となってしまった。オレは今、“ジョゼ”に口づけした。女とするように――

 一人の男と唇を重ね。



 やはりオレは“ゲイ”なのか……



 いや、違う!

 これは特殊なんだ。

 彼でなければこの感情は生まれなかった。

 オレは正常に女が好きだ。

 では彼が男なのが間違っているのか?

 オレが女なら正しいのか?

 オレは間違ってない。

 これは“特殊”なんだ――!


 それより今は

 全てを彼に解き放つだけ……


 ずっと、ずっと好きだった。

 学生の頃からずっと。

 思いを伝えたら

 友情が壊れて

 君が離れていってしまうのが怖くて

 ずっと言えなかった。

 その気持ちをやっと解き放てる。



 オレはもう一度ジョゼを抱き寄せて口づけすると、滑らかな動きで彼の口の中に自分の舌を潜り込ませた。生暖かい空洞の中を生き物のように探索する。そしてすぐに探し当てた柔らかいもの――彼の舌に自分の舌をからめた。退くような動きをする彼の舌を舌で追いかける。この熱で君をチョコレートのように溶かしてしまいたい。キスだけで君を……

 オレは顔の向きを変え、さらに濃厚なキスをした。眼鏡同士がひっかかり、オレがかけている華奢なフレームの眼鏡が外れそうになる。

「っ……」

 ジョゼがどこか躊躇い勝ちに、オレの胸を押した。顔が離れて見つめ合う。

「……」

「……」

 互いに見つめ合うだけで、言葉は何も出てこなかった。

 ジョゼの手が抗うようにオレの肩に伸びる。オレはその手首を掴もうとし、抗うジョゼの手に自分の指を絡ませた。その手を下ろしていき、彼の手をオレの腰に回させる。そして次のキスをした。柔らかく彼の唇を吸う。

 こんなに長く抱擁とキスをし続けたのは初めてだった。オレは高級なデザートを味わうように唇と舌を使ってじっくりと“彼”を味わう。たまらない……彼の唇が、舌が、肌に感じる温もりが、全てが愛しくてたまらない。オレはジョゼの首筋に唇を這わせ、キスで辿っていく。彼の背中に回していた手の片方をずらして彼の頭に持っていき、ボディパーマのかかったココア色の髪に指を差し入れた。

 こうして君に触れられるのはこの上ない悦びだ。想像の中で君を抱いて愛撫するのとはまるで違う。比べものにならないほど至福で満たされていく。手に、肌に君を感じる。体温も、柔らかい髪の感触も、ほのかに香るシャンプーの匂いも。なんて素晴らしいんだ! ずっとずっと君に触れていたい。もう離したくない。眺めているだけでは――


 もう満たされない!


 ジョゼ、オレは君が男でも構わない。そんなことはもはやどうでもよくなった。

 君が欲しい。


 君を



 抱きたい……



 オレは手を伸ばし、ジョゼが着ているシャツのボタンに手をかけた。

「……っ!」

 ジョゼはびくっとして、驚いたような少し脅えたような瞳でオレを見詰めた。その時――

 突如オレの携帯電話が鳴り出した。着信音と連動してバイブが唸る。オレはそれを自分の鞄の中から取り出した。なんでこんな時に! と悪態をつくかわりに舌打ちする。ディスプレイを見てがっくりと肩を落とした。そこに表示されていたのは自宅の番号だった。なんで今なんだ? このタイミングでかけてくるなよと文句を言いたい気持ちをどうにか抑え、ボタンを長押しして留守電に切り替える。

「奥さんからじゃないのか?」

 懐疑するようなジョゼの声が飛んできた。

「そうなんだろ? だったら出ろよ! 奥さんを心配させ……」

 その唇をオレがキスで塞いだ。顔を離し、威圧的にジョゼを見据える。

「なんでオレがこうしているのか分かるか?」

「分からないよ。何故なんだ?」

 ジョゼは不可解そうに眉を寄せた。ここまでして伝わらないなんてことがあるか? 有り得ないだろ。オレは呆れて嘆息し、低く呻くような声を吐き出した。

「言えっていうのか……?」

 口にすれば一気にしらけてしまうだろう。不器用な男が言う棒読みの“愛してる”など、滑稽なだけだ。言わないほうがいい。

 憤慨したオレは、強引にキスを迫った。

「分からないよ!」

 顔を背けてジョゼが叫ぶ。

「なんでこんなことするのか教えろよ!」

「教えろだと? ああ、分かった。そこまで言うなら教えてやる」

 オレは憎しみを込めた目でジョゼを見据えた。

「お前が分かるというまで、それを示してやる」

 そう言うと強引にジョゼを床に押し倒し、その上に馬乗りになる。オレはとうとう禁断の領域に手を伸ばした。彼の穿いているズボンのベルトに手をかける。

「ダリル、分からないよ!」

 その言葉に興奮する。ジョゼは必死でベルトのバックルを手で押さえた。それにはかまわず、オレはジョゼを挟むようにして床に手を突いた。獲物を捕らえた獣のようにして上から彼を見下ろすと、今度は彼のシャツを捲り上げた。そして顕わになった素肌の胸に顔を近付け、舌でくすぐるように乳首を舐める。

「ダリル!……」

 ジョゼがバックルから手を離して身をよじる。オレはまた彼のベルトに手をかけ、ジョゼはその手を無理矢理どける。それを何度か繰り返し完全に防御の体勢を取ると、ジョゼは鋭い目で下からオレを見据えた。次の瞬間、息を切らしながらオレに掴みかかる。そして彼は渾身の力を込めて、オレの体を押し退けた。今度はオレが床に倒された。二人とも床に手を突いて荒い呼吸をしながら睨み合う。痩せていてもやはり彼は男だった。それなりに力はあるようだ。簡単にはいかないか……

 だが、これで諦めたわけじゃない。呼吸を整えるとオレは立ち上がり、ジョゼに接近した。ジョゼも立ち上がり、身構えながら後退していく。


 そんなに警戒して……

 ジョゼ、君はオレが気でも違ってしまったと思っているのか?

 だとしたら、これほど哀しいことはない。

 オレはおかしくなんかなっちゃいない。 オレはただ

 純粋に君が好きなだけだ。

 君と


  愛し合いたいだけなんだ。



 アルコールが抜け切らないのか、ジョゼの足元はふらついていた。オレの姿を目で捕らえながら、背後も見ずに後退していく。途中壁に背中をぶつけて初めて背後を気にした。慌ててそこから移動するが、オレが部屋の隅に寄せたガラスのテーブルに足を取られ体が後ろに傾く。

「!?」

 倒れる寸前にオレが腕を掴んで抱き留めた。

「危なかった……」

 オレは彼を抱き締めながら、彼に怪我がなかったことに深い安堵の息を漏らした。

 よかった。

 彼の頭に自分の頭を寄せる。頬に触れた彼の髪と自分の髪が擦れ合う感触、彼のぬくもりを肌に感じた。ゆっくりと流れていく時に身を任せ、ゆっくりと呼吸しながらその時の中に溶けていく。二人の呼吸が重なり合い、胸の起伏が遠くで響く波のさざめきのように衣擦れを生じさせる。オレの手がわななくように小さく震え、彼の背中に回した手に力がこもる。

 駄目だ……

 長くそうしていると再び体が熱くなってきた。オレは彼を抱きしめたままゆっくりと前に進み、ソファーに誘導して座らせた。

 気持ちが加速する。



  君が欲しい――――……



 感情を抑えることなどできなかった。心が、体が、彼を求めてしまう。オレは自分の胸に埋もれていた彼の頭にキスを落とした。そして手を彼の胸元へ伸ばし、まさぐるような手つきでシャツのボタンを外していく。キスをしながら徐々に彼の体を倒していった。





 ジョゼ、オレにすべてを見せてくれ……



――to be contined――

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