001 恋和泉家にて
まあ何て言うか。この状況を一言で言うと、僕は誘拐された。
何て事だ。
て言うか何があった。
怖い怖い。
いや怖い怖いで済ませられる自分が怖い。
まあ今の状況の整理が先か。
流石僕、落ち着いてんなぁ。死んでもいいって思ってるからかな。
うん、死んでもいい。僕は、死んでもいい。
ま、そんなことはどうでもいい。そんなこと考えてる場合じゃない。
状況整理、状況整理。
まず、椅子に座っている。木製の椅子。
そして、体は……麻縄?で縛られている。ぐるぐる巻きである。
腕は、100円ショップの手錠、普通鍵が無くても外せる所が圧し折られて使えなくなっている、が、壁に付いている鉄の柱にしっかりと付いている。外せない。
脚は、自由。何もなっていない。
これによって何かが出来るのかと問われたら……何も出来ないな。駄目だこりゃ。
第2に、そしてここは何処だ?って事だ。
全く見覚えが無い。こんな場所知らない。
見覚えがある所に誘拐される方がおかしいか。見覚えがある所に誘拐って、絶対知り合いに誘拐されてるよな、そいつ。どんな奴だ。
とりあえず、今いる所は、分からないって事で。
じゃあ、次は、いつ、どうやって、何処から、どうして、僕を誘拐なんかしたかって事だ。
いつ誘拐された?
……くそ、思い出せない。
最後の記憶は……確かあの廃工場からの帰り道に……!
後ろから殴られて!そうだ、後ろから殴られたんだ!何て酷いことを!
なんたる不覚、僕としたことが後ろから殴られるなんて(どんなキャラだ)。
確か……あの影は、ハンマーか何か、そう言うもんだ。
普通、ハンマーで人を殴るか?ヤバい奴だろ。怖っわ。
狂乱状態か、そいつ。
まあ、その傷は、もう治っているだろうけど。
3つ同時に分かったな。凄え。
じゃあ、どうして僕を誘拐なんかしたって事……。
僕何か誰かにしたか?
べつに恨みを買われるタイプじゃ無いと思うけど。何だろう。
クラスの中では僕は空気……と言うよりその空気の中に含まれてるメタンとかクリプトンとかの、あっても無くても、居ても居なくても分からないし変わらない物だと思うが。
本当何なんだ……。
「あら、起きてたの。おはよう」
!
突然、後ろから女性の声がした。
「誰だ!」
反射的に、僕は言った。
「分からない?恋和泉よ、紫々原君」
「……!」
そこに居たのは果たして、同じクラスの、しかも隣の席の、恋和泉いろりだった。