プロローグ
死にたい。
毎日、365日、毎時間、24時間、毎分、60分、毎秒、60秒。この3ヶ月間、それしか考えていないと思う。
いや、他のことを全く考えていないわけではないのだが、しかし、その思いは絶えない。常に。頭の中に、常にその考えが、思いが、想いが、あるのだ。
重い。常に、のしかかって来る。呪いの様に。纏わり付いて来る。気持ち悪い。
底なしの沼に嵌ってしまったように、逃げ場がない。
自分で自分を、追い詰めている。引き摺り込んでいる。閉じ込めている。
そんな自分が、気持ち悪い。不愉快だ。
死にたい。
そんな生産性の無いことを考えながら、廃工場の屋上へ、階段を上がっていた。
そう言えば、明日だっけ、《カウンセリング》は。
『彼女』を診てもらおうかな。
僕に出来ることがあればいいのだが。『彼女』に、何かしてあげたい。余りにも、可哀想だ。
『彼女』はそんなことは思ってないし、思われたくも無いだろう。
だが、僕は思いたい。
「余りにも、可哀想だ」なんて思いは、『彼女』にとって、重いのだろう。
階段を上がる。
きっと『彼女』にも、トラウマがあるのだろう。
僕にだってある。
それが死にたいと思う原因だ。
当たり前だ。あんな事があったら、誰でも死にたいと思う。
僕が思っているのだから。
いや、これは余りにも自己中心的過ぎたか。
私がAだからあの人もA、と言う考え方は、余りにも自己中心的だ。自己中心的で、傲慢だ。
しかしあれは、本当に苦しい。
罪悪感だけで、死ねるほど。
まあ兎に角、トラウマがあるのだ。僕にも、『彼女』にも。
階段を上がる。
僕は今現在、まだ生きている。
しかし、トラウマを克服して、生きているんじゃない。
そして、絶望を乗り越えて、ここまで生きてきたわけではない。
ただ、死んでいないだけなのだ。
死ぬ事が出来ていないだけなのだ。
もう、死にたい。
階段を上がる。
まったく、自分の事しか考えていないな。最悪だ。
こんな奴は、死んでしまった方がいい。
そう思う。
そう思っている。少なくとも、僕は。
階段を上がる。
上がり切る。
本当に、死んでしまった方がいい。
廃工場の屋上に、到着する。下を覗き込む。
吸い込まれて行きそうな高さ。
ここから落ちたら、普通の人間は確実に死ぬ。四散する、いや、死散する。
ああ、死にたい。
そう思って、走り始める。
そうして、空へ身体を放り込む。飛ぶ。
もちろん、鳥になどなれる筈も無く、落ちていく。
空から降ってくるのは、少女じゃない。
自殺願望のある、少年だ。
つまり、僕だ。