2話
2話も見てみようとここまで来てくれた方、ありがとうございます。これからもよければ読んでいって貰えると幸いです。
声が響いてきた方を見る。
すると全身を白い鎧を纏い、背中に大剣を携えている大男が立っていた。
大男と言っても人間ではなく亜人、それも熊の亜人だろうか。
顔に斜めの傷が入っており、いかにも歴戦の戦士といった出で立ちをしていた。
「お前はまた騒ぎを起こして・・・今日という今日はここを立ち退いてもらうぞ!!!」
そう言うと熊男は背中の大剣を抜刀し、彼女に剣を向ける。
ええっ?!待て待てどういうことだ?この状況に完全に置いてけぼりなんですけど?!
突然の事にあたふたしている内に熊男はこちらに向かってきている。
「あ、あの!ちょっと待ってください!」
俺は勇気を振り絞り熊男に静止するように促した。
その言葉に反応し、熊男は足を止める。
「君は誰だ?いや、失礼。人の名前を聞く前にまずはこちらから名乗るのが礼儀だな。」
そう言うと一呼吸置いて咳払いをした。
「私の名前はグライド、グライド=ノーチェス。この魔法都市エデンフォードの自警団『エンデュミオン』の副団長をしている。」
そう言うと彼は俺に握手を求める。
俺はその手を握り握手に答える。
「僕の名前は上野空・・・ソラでいいです。こちらこそよろしくお願いします。」
「うむ、ソラだな。なにか困ったことがあれば是非私達を頼ってくれ。」
・・・なんか、すごい礼儀正しいな。
顔の傷や体格のせいで怖い印象だったのだが、本当はとても優しい人なのだろう。
現に今握手した瞬間にこの世界に来てずっと抱えていた不安感が薄れている。
誰かに頼れるという事がこんなにも心強いとは思わなかった。
この人に頼れば元の世界に帰る手掛かりが見つかるかもしれない。
正直今泣きそうだ。
しかし今はこの状況の把握が最優先だ。
俺は必死に涙をこらえグライドさんに説明を求める。
「あの、グライドさんはどうしてここへ・・・?」
「ああ、そうだったな。私はまたクロエがトラブルを起こしたとの通報を受けたのでここへ来たのだが・・・」
そう言うと街の住人の男がグライドに話しかける。
「そうだよグライドさん、クロエがこの子に怪我をさせたんだ。」
そう言って男が俺に指を指した。
「なに?君が被害者なのか?」
ここでやっと俺は気づいた。
さっきのやり取りの一部始終を見ていたこの人がグライドさんを呼んだことに。
しかし別に俺はカオスなんたらの右目を投げつけられたことは気にしていない。
むしろ今俺は彼女を泣かせてしまっている立場ゆえ、事を荒立てたくはない。
ここは穏便に済まして帰ってもらおう。
「あのー、確かにちょっとゴタゴタがありましたけど、別に僕は気にしていないので大丈夫ですよ。」
そう言って帰ってもらおうとすると、
「あんた、何勝手に話進ませようとしてんのよ。」
「うへぇ?!」
急に後ろから話しかけられ、また情けない声を出してしまう。
後ろを向くとさっきまで泣いていた彼女、クロエがいた。
「あれ?さっきまで泣いて・・・」
「泣いてない!!!」
「はい!!泣いてませんでした!!!」
彼女の声にビビって肯定してしまう。
なんかこの世界に来てから情けない所しかないな俺。
「とにかく、なに私抜きで話進ませようとしてんのよ。私、こいつに話があるんだけど。」
「話?話とはなんだ?」
グライドさんが聞き返す。
するとクロエはニヤリと笑った。
「そろそろ私もこの都市の住民として認めてもらいたいなーって」
「それは出来ない。お前がそんな態度を取るまでわな。」
「そ〜んなこといってもいいのかな〜。私、遂に作っちゃったんだよねぇ。」
その言葉を聞いた途端、グライドさんは身構えた。
「お前、それは本当か?!それが本当なら上に報告せざるを得ないが。」
「本当よ。あんたら魔法使いが長年研究しても遂に作れなかった、人間、いや全種族の夢。私はそれを実現させた。私の呪法でね。」
・・・また話が見えない。今何の話をしてるんだ?作った?何を?
「あのー、話の腰を折るようで申し訳ないんですが、一体何を作ったんですか?」
分からないことは聞く。社会人の常識だ、俺はまだ社会人じゃないけど。
俺がクロエに疑問を投げかけると彼女は得意げにこう言った。
「不老不死の薬よ。」
ここまで見てくださってありがとうございます。タイトルに弟子、始めましたって書いてあるのにまだならないのかと思っている方、本当に申し訳ありません。まだ弟子になるのはもう少し先です。タイトル詐欺にはなってしまうのですが、それでもいいよという方、ありがとうございます。次も出来るだけ早めに投稿しますのでよければ読んでいって下さい。長文失礼しました。