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7.聖子 変態の居ぬ間に洗濯

 非番の日。

 私は自宅の掃除に精を出していた。まず、溜まっていた洗濯物を片付け、それから水回りを磨き上げた。部屋全体に掃除機をかけ終わると久しぶりにすっきりとした気分になる。やっぱり私はこうやってお掃除しているときが1番気持ちが安らげる。

 私は自分の住むアパートが大好きだった。築年数も割と新しいし、ここに居るときが1番落ち着く。

 私の絶対領域。

 異物を混入させたくない聖域。

 いつもあの変態と行動しているけど、やはり洗濯は鬼が居ぬ間に……。いや、変態が居ぬ間にするに限る。

 実際は非番の日でも鑑識の勇作さんから連絡が入ったり、あの変態から連絡が来たりする訳だけど……。

 そうしているとやっぱり職場から連絡が入った。勇作さんだ。

『おーす! せーこたん! 非番の日に悪いねー』

「お疲れ様ですー! 今ちょうど部屋の掃除も終わって暇してたんで大丈夫ですよー」

『おお、きれい好きだなー。なぁせーこたんさー、実は前の土左衛門のことで分かったことあったから連絡したんだー。やっぱり事故じゃねーみてーだぞ?』

 勇作さんは簡単に検死結果を話してくれた。

 被害者から微量ながら毒物が検出されたようだ。被害者の身元が分かってから彼が生前掛かっていた病院に問い合わせたところ、心臓に疾患があったらしい。

「心疾患だったんですね……」

『そうだ! 普通ならこの量で死ぬような毒物じゃねーけど、心疾患があったなら話は別だ。おそらく誰かが被害者の病気を知っていて毒を盛ったんだろうよ』

「そうですかぁ。連絡ありがとうございました」

『おぉ! じゃあまた明日詳しく教えっからなー!』

 私は勇作さんにもう一度よく礼を言うと電話を切った。

 電話を切った直後、伊瀬さんに連絡をしようと彼の携番を履歴から開いた……。が、よく考えてみたら伊瀬さんも今日は非番のはずだと気づいた。

 だから電話はしないことにした。おそらく、あの変態は今日家族サービスしているはずだ。

今日は平日だし、きっと買い物でも行っているだろう。

 私は伊瀬さんに連絡するのを諦めて録りためてあるテレビドラマを見始めた――。

 自分の職業柄もあるのだろうけど、私は刑事ドラマを見るのが好きだった。ジャニーズのタレントが主演してる刑事ドラマを見るのは私の数少ない趣味の1つで、だいたい非番の日は1日中これを見て終わってしまう。

 まだ刑事になる前、私は猛烈なジャニオタだった。ネット上で知り合ったジャニオタ仲間と連んだり、コンサートに行ったりするのに必死だった。まぁ実際はファンクラブに入っていてもなかなかチケットが手に入れることが出来ずに泣き寝入りすることが多かったけど……。

 ドラマを一通り見終わる既に外は暗くなっていた。今日も無事、1日を無駄遣いすることが出来たようだ。

 有り難いことに。

 夕飯を作るのが面倒だった私は近所にあるコンビニに行って、クリームパスタとホットスナックを買ってきて簡単な夕食を済ませた。

 以前はきちんと自炊していた時期もあったけど、今は外食かコンビニ飯で済ませている。(そもそも自炊していたのは前付き合っていたヒモに食わせるためだったし、自身のためじゃなかった)

 今更思う。

 私はつくづく男運がないのだ。好きになる相手は例に漏れることがなく全員がクズだった。ヒモ男なんて何人も居たし、ほぼすべての男が異常性癖を持った奴だった。

 中には既婚者も何人か居た。世間一般で言うところの不倫というモノを何回もやってきた。(損害賠償請求されたことがないのが不幸中の幸いだけど)

 これは自慢ではないのだけれど、落とそうと思った男で落ちなかった男は1人も居なかった。このことを友人に話すと「聖子は魔性の女」呼ばわりされる。

 でも……。

 私だって幸せになりたいのだ。

 お金持ちのイケメンで、私を甘やかしてくれて家事もしないで良いって言ってくれる素敵なダーリンが欲しい。

 ごめんなさい。我儘言いすぎました。

 そんな下らないことを考えながらその日は終わっていった。

 明日はあの変態とルナちゃんの父親について話さなければいけないだろう――。

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