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9.聖子 二魚を追う者、一魚を得ず

 京極大輔の水死体が上がってから2週間が過ぎた。事件性があると勇作さんから聞きながらも私たちは捜査に行き詰まっている。今日も伊瀬さんはやる気がなさそうに欠伸しながら運転していた。

「被害者の葬式行ったんだって?」

「はい、行ってきましたよー。ルナちゃんも元気そうだったし行けて良かったー」

「泉さんさぁ、仕事で知り合った相手と仲良くなるのはどうかと思うよ? 特に被害者の肉親だとしたらこれから面倒ごとに巻き込まれっぞ?」

 伊瀬さんは怠そうにそう言うと、車のウィンドを開けてタバコに火をつけた。

「わかってますよ……。でもやっぱ早く真相を知らせてあげないとねー。あの子しっかりしてるようだけど、強がってる感はあったし……」

 私のその言葉が聞こえたのか聞こえないのか、伊瀬さんは黙ってタバコを吹かすだけだった。

 私たちはその日も聞き込みを行っていた。被害者の写真を片手に目撃情報を探す。

 被害者の銚子付近での目撃情報はほとんど得られなかった。彼がどこに住んでいたのかさえ私たちは見つけることが出来なかった。

「……。ちょっと範囲を広げるか」

「ですねー。でも、ここまで足取りが掴めないなんて珍しくないですか?」

「おそらく、借金取りから逃げ回るような生活送ってたんだろうなー。被害者を匿う人間がいたんだとは思うけど……。にしても見つからん」

 伊瀬さんは深くため息を吐くとそのまま車を走らせた――。


 それから彼の手がかりを探して1週間歩き回った。最初は一緒に行動していた伊瀬さんとも手分けして探す羽目になってしまった。さすがに嫌気が差し始めた頃、ようやく有力情報を掴むことが出来た。

「あ、伊瀬さん? お疲れ様です泉です! 被害者の目撃情報やっと出ました!」

『お疲れ! どこで見つかった?』

「旭です!」

『チッ! 市外かよ』

 旭市は銚子に隣接する町だ。私と伊瀬刑事は最初の頃、銚子市内だけの捜索をしていた訳だけど、どうやら京極大輔は旭に住んでいたらしい。

 それから私は目撃情報を元に彼の身辺を洗った。よく利用しているコンビニ、飲食店、ホームセンター等で聞き込みを行う。案の定、彼の目撃情報はたくさん貰えた。

 名前は知らなくても顔見知りは意外と多いものだ。そんな情報の中に確信に迫るほど有力なものを見つけることができた。

「泉ですー。お疲れ様ですー。伊瀬さんようやく有力情報でました!」

『お疲れ! どんな感じ?』

「どうやら被害者は女性と同棲していたようです。コンビニの監視カメラに何回も一緒に買い物している姿が写ってました。おそらくその女性はそのコンビニの近辺に住んでるんだと思われます!」

『ふんふん……。したらそこら辺調べようか? 泉さん1回引き上げてきなー。書類溜まってるし、ここからは俺と加瀬君とで調べるよー』

 ああ、目眩く事務作業か……。私は棒のようになった脚で署に戻ることにした……。


 翌日、事務作業に追われる私の元に伊瀬さんから連絡が入った。どうやら、被害者の同棲相手の女性の現住所が特定できたらしい。

『家まで行ってみたんだけどどうも留守らしいんだ……。また出直すよ。泉さん忙しいところ悪いんだけど、その女の身辺洗っといてね!』

 伊瀬さんは一方的にそう言うと電話を切った。ああ、死ねいいのに。

 私は最高に面倒くさく思ったけど、結局彼女の身辺を調べる始めた……。

 葛原みのり。

 年齢は36歳、高校卒業後はコンビニでアルバイトをしながら生計を立てていた。数年アルバイト後、雇われていたコンビニでマネージャーになったようだ。被害者もコンビニ店長をしていたようだし、おそらくその関係で知り合ったのだろう。

 彼女の以前の職場に連絡したところ、3年前に急に何の連絡もなく来なくなってしまったらしい。彼女の以前の上司の話だとあまり真面目な性格でなく、男遊びも相当していたとか……。

 彼女は一人っ子で、両親は幼い頃交通事故で亡くなっていた。両親が亡くなった後は、親戚の家に引き取られ高校卒業までは一緒に生活していたらしい。その親類の話だと、高校卒業後、連絡は一切無かったようだ。

 3年前にコンビニをばっくれた後のことに関しては情報がなかなか掴めなかった。彼女は一体どうやって生計を立てていたのだろう?

 そこまで調べると私は一息をつこうと喫煙所に向かった……。

 そこからはどう足掻いても彼女の情報を掴むことが出来なかった。まぁ現場に行って聞き込みさえすれば見つけられる気もするけど……。仕方が無いので私は信頼できる情報屋に聞いてみることにした。彼からならきっと良い話が聞けるはずだ。

 銚子の知る人ぞ知る情報屋……。咲冬桜樹の元へ……。

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