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白い貝殻
耳に当てた白い貝殻から
小波の音が聞こえてきた
ひんやり開けた空洞
その空気に溶かされて
目を瞑ると
心まで澄んでいく
十七年間生きてきて
初めて感じる美しさ
砂浜に貝の破片が
散りばめた宝石のように輝っている
体育座りした足を崩して
新たな貝殻に耳を当てると
さっきのとは違う音がする
ひんやりとした水の中に
細い足を入れ 一際大きな波の音を聴き
じっと佇んでいる
ピンクの貝殻 赤い貝殻 割れたホラ貝
みんな違う音がして
みんな違うイメージがある
そして私ははっとする
最初に当てた貝殻が
特別なものではないことに
金銀に耀く海を眺め
空の群青 そらの蒼とを見据え
新しい貝殻を探してみる
そして小波の音がする
白い貝殻を見つけた




