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ペルセポネーと柘榴の果実
外の世界に
心躍りて
駆け回る
あどけなき処女
ペルセポネーは花を摘む
名も無き花の名を
母に尋ね
書を引くや
小ささやかに
花瓶に生けた
野の一輪
デーメーテールは
ペルセポネーを
膝に乗せて
可愛がる
地の果てみれば
冥界あり
血走った眼を向け
美しき処女を
虎視眈々と見つめるもの
冥界神よ
忌々しき詛いにて
か弱き乙女を連れ去ったもの
熟れた柘榴
紫紅色に裂け
ペルセポネーを
暗き冥界へと連れていく
寝て醒めては夜が来て
朝日のなき世界を
彷徨い続ける
かつての美しさも歪み
母は豊穣なき冬を生む
世を逆しまに感じては
冥土に取り残された
孤独と苦痛
誰にも理解されぬものであり
誰も分かってはくれぬ
ペルセポネーの心
狂人にて
ついに私が悪いと悟りしや
冥界に成った神の望む
愚かしき実




