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召し上がれ
血を吸う蚊は全て雌と
テレビで聞いたことがあった
ぱちんと手を叩くと
黒い塊になった蚊の母親
血をたらふく飲んだ胃が
ぺしゃんこに潰れている
好きな相手を見つけて
生まれてくる子どものために
危険を省みず私の元にやってきた
小さな母親
それが今 私の手の中で倒れている
他の命なんてどうでもいいんだ
そんな浅はかな考えのせいで母親は死んだ
蝶よ花よと手塩にかけて育てた
この母親の母親
今どんな思いでいるのだろう
私達は 生き物を殺すという
大罪を犯している
食物連鎖の頂点に人間がいる
動植物を犠牲にして
得たものは何だろう
かつて生きていた物達が
生活していた時間を喰らってまで
欲しかったものは何だろう
数年間生きてきた中で
得たものはまだ見つかっていない
そればかりか
意味のない殺生をしたのではと
思ってしまった
挙げ句の果てには
仕方ないと思ってしまうようになった
強いものが生き残るんだ
弱い者は強いものの犠牲になるんだ
そんなことばかり続けて今日の今日まで
生きてしまったから
もし私が死んだら
川魚にでも食べさせればいいよ
サバンナでもいいよ
綺麗な花のある植物園でもいいね
個人的に海が好きだから海でもいいよ
なんてね
命がなくなったら
その後の体は脱皮した皮のようなものだから
せめてもの償いをさせてほしい
どうぞ召し上がれ




